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海外でも多い運転中の「ながらスマホ」の悲劇的な事故と動画による啓発活動

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「ながらスマホ」で運転して追突、死亡事故を起こすという惨劇があった。運転手に対して禁錮2年8カ月が言い渡された。以下にニュースを引用しておく(太字は筆者)。

ながらスマホで運転、求刑上回る=禁錮2年8月、名神5人死傷事故-大津地裁判決

滋賀県多賀町の名神高速道路で昨年11月、大型トラックを運転中にスマートフォンを操作し5人が死傷する追突事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)罪に問われた新潟県見附市の元トラック運転手前田博行被告(50)の判決が19日、大津地裁であった。今井輝幸裁判官は「危険性を過小評価している」として、求刑(禁錮2年)を上回る禁錮2年8月を言い渡した。

判決によると、前田被告は昨年11月21日、名神高速を運転中にスマホの入力操作などに気を取られ、安全を確認しないまま時速約80キロで走行。愛知県一宮市の会社員男性=当時(44)=の乗用車に追突して男性を死亡させたほか、他の3台も巻き込んで4人にけがをさせた。スマホのアプリ閲覧などで前方を注視せず、死亡した男性の車の手前約2.6メートルで初めて車に気付いたとした。

また、前田被告がアプリの操作に加え、スマホを床に落とし拾おうとするなどして約10秒間前方注視を怠ったと認定。今井裁判官は「危険性は著しく高い」と非難し、検察側の求刑についても「スマホのながら運転の危険性を過小評価し、軽すぎる」と指摘した。

判決後、死亡した男性の妻(46)は大津市内で記者団に対し「スマホのながら運転をなくしたいという思いをくんでくれて感謝している。全ての運転手はスマホのながら運転をしないよう意識してほしい」と話した。

出典:時事通信2018年3月19日

海外でも多い「ながらスマホ」による事故と啓発動画

 運転中の「ながらスマホ」による悲惨な事故は日本だけではない。世界規模でスマホが普及し、世界中の人々が運転中でもスマホが気になって仕方がない。運転中でもメッセージが来たり、SNSが気になったり、動画やニュースをチェックしてしまっている。最近はだいぶ減少したが2年前の夏にはポケモンGoによる交通事故も多発していた。運転中の「ながらスマホ」の危険さは「歩きスマホ」の比ではない。

「It Can Wait(スマホ操作は待ってくれる)」

 アメリカでも多くの州で運転中のスマホ操作は禁止されているが、それでも運転中の「ながらスマホ」による事故が後を絶たない。自動車を運転できる年齢の人なら「運転中によそ見してスマホ操作をしていたらどうなるか?」は想像できるはずだ。それにもかかわらず、SNSやらメッセンジャーの通知が来ると、スマホが気になってしまう。また道路で目の前に誰もいないし、車もないから大丈夫だろうと思って、ついついスマホをチェックしてしまい、運転中の「ながらスマホ」は減少していない。運転中に「絶対に自分だけは大丈夫」ということはない。

 そのような中で、アメリカの通信事業者AT&Tは他の通信事業者にも呼びかけて、「ながらスマホ」の注意喚起を行うための動画を数年前から製作し、あらゆるところで放映。「運転中のスマホ操作がどれだけ危険か」の啓発活動を行っている。AT&Tでは「It Can Wait(スマホ操作は待ってくれる)」というキャッチフレーズのもと、「ながらスマホ」による交通事故の脅威を訴えている。

AT&Tの「ながらスマホ」啓発動画

 以下にAT&Tが製作した啓発動画を掲載しておく。平和な生活が一変してしまうことがわかる。AT&Tでは毎年のように、多くの啓発動画を製作している。中には「ながらスマホ」による事故の加害者や被害者が登場するドキュメンタリーも多数ある。衝撃的な映像もあるのでご留意ください。

▼運転中でもメッセージが気になってしまう運転手。スマホの視点で表現(AT&T)

▼ちょっとスマホに目をやったその直後に(AT&T)

▼高校生が運転中に(AT&T)

▼AT&TではVRを用いて、運転中の「ながらスマホ」のシミュレーションも行っている(AT&T)

▼ドライビングシミュレーションによる啓発動画(AT&T)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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