日本向けイージスアショア用SPY-7レーダー契約締結
11月20日、日本防衛省はアメリカのロッキード・マーティン社とSPY-7レーダー2セットの契約を結びました。これは今まで通称としてSSR(ソリッド・ステート・レーダー)と呼ばれていた物ですが、11月14日にアメリカ政府から「AN/SPY-7(V)1」という名称を正式に与えられたことが発表されています。
現行イージス用レーダー
- ロッキード・マーティンSPY-1
パッシブ・フェイズドアレイ方式(PESA)。1983年から運用開始。
新型イージス用レーダー
- レイセオンSPY-6
- ロッキード・マーティンSPY-7(旧称SSR)
アクティブ・フェイズドアレイ方式(AESA)。実はどちらも送信機が電子管ではなくソリッドステート化(固体素子)されているので、SPY-7だけでなくSPY-6もソリッド・ステート・レーダーの仲間。
イージス用レーダーの大まかな関係性はこのようになっています。現行型と新型では設計年代に40年近い隔たりがあり、性能は大幅に向上したとされています。新型は現行型の数倍の性能とも言われていますが、正確な性能は公表されていません。SPY-6とSPY-7の新型同士は同年代にほぼ同じ要素技術で作られているので、会社は違いますが性能やコストの差はほとんど無いでしょう。
なおアメリカ海軍の新型イージス艦用に選ばれたのはレイセオンSPY-6であり、ロッキード・マーティンSPY-7は自国の既存のイージス艦改装用や他国の軍艦への採用などを目指しています。日本向けイージスアショアへのSPY-7採用はアメリカ側からの強い働きかけがあったと考えられ、ロッキード・マーティン社だけでなくミサイル防衛局(MDA)の意向があったことを伺わせる内容を2017年8月30日にロイター通信が報じています。
アメリカ海軍は日本にレイセオンSPY-6を与えてもよいとしているのに、ミサイル防衛局が阻止していました。そしてこの記事の4カ月後、ロッキード・マーティンがSSRを日本配備イージスアショア向けに売り込んでいることを公表。そしてその半年後に日本防衛省によってSSRがイージスアショア用レーダーとして選定されます。日本側は当初レイセオンSPY-6を希望していたので、ロッキード・マーティンSSR(現SPY-7)に決まった唐突な流れはアメリカ側からの何らかの動機による強い意向があったのは間違いないでしょう。