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第27回 全国高等学校女子硬式野球選手権 準決勝 岐阜第一決勝へ、神戸弘陵と日本一を争う。

中川路里香フリーランスライター
試合に勝利し飛び跳ねて喜ぶ岐阜第一の選手たち

大会8日目の準決勝第2試合の模様。昨年ベスト4の岐阜第一が初の決勝進出を決め、初の日本一を狙う。

■岐阜第一 7-5 福井工大福井

岐阜第一  000 021 000 22 7

福井   101 100 000 20 5

【バッテリー】

岐阜第一 桒澤-今井

工大福井 藤田奈那、奥村-郡山

 3時間2分に及ぶ激闘だった。岐阜第一・桒澤明里さん(2年)、福井・藤田奈那さん(2年)の両エースによる投げ合いは、3点のリード許した岐阜第一は、5回、先頭の5番・白坂光瑠さん(2年)が左安打や敵失で2死一三塁から9番・西明日花さん(2年)、1番・上條優奈さん(3年)の適時打で1点差に詰め寄ると、6回には2死一三塁で指名打者解除し代打で入った桒澤さんが左適時打を放ち同点に追いついた。

一時は3点リードを奪った福井工大福井
一時は3点リードを奪った福井工大福井

 互いに好機を作りながらも得点できず延長戦へ入るも決着がつかず、大会規定により10回から、無死一二塁で継続打順から始まるタイブレークへ。岐阜第一が2点リードの10回、福井は6番・中野亜瑚さん(1年)の三塁打で同点に追き、なおもサヨナラのチャンスを迎える。続く、7番・郡山優羽さん(3年)は外野へ抜けてもおかしくない強い打球を放ったが、岐阜第一遊撃・髙橋愛さん(3年)がライナー捕球し、飛び出していた中野さんを三塁で刺す併殺打に抑えられ、再びタイブレークへ。

福井工大福井・郡山さんが良い当たりをするも岐阜第一・髙橋さんの好守にサヨナラできず
福井工大福井・郡山さんが良い当たりをするも岐阜第一・髙橋さんの好守にサヨナラできず

 決着が着いたのは11回。岐阜第一は、この回からマウンドに上がった福井・2人目の奥村恵さん(2年)の死球と暴投で2点を獲得すると、そのまま相手に得点を許さなかった。桒澤さんは156球を投じ完投し、与四死球6ながらも被安打7、奪三振7、11回には1死二三塁の場面でなおも三振を奪う力投でチームを勝利に導いた。福井は、鍛え抜かれた守備を持ち味にここまで勝ち上がってきたが、失策がらみの失点で同点を許し、最後は突き放された。

前日に続き完投した岐阜第一・桒澤投手。この日は11回、156球を投げる力投
前日に続き完投した岐阜第一・桒澤投手。この日は11回、156球を投げる力投

タイブレークでの併殺は神がかっていた。岐阜第一・小久保志乃監督

「本当に最後まで勝負がわからなかっただけに、勝因は根性、気迫だと思うが、強いて挙げるとすれば、2点とられた後の高橋の併殺プレーでしょう。サヨナラ(負け)でもおかしくなかったわけですから。日頃、ああいうプレーをする選手じゃないのに神がかっていた。選手たちの優勝に対する執念を感じました」

捕手として桒澤さんをリードする今井実主将

「桒澤が頑張ってくれていたので勝ちたかった。本当に嬉しい。彼女は気持ちで投げてくるタイプ。連投で疲れがあった中でも、昨日よりも今日の方が良かった。強い球をどんどん投げ込んできたので受けていて気持ちが良かったです。神戸弘陵は、三冠を狙っていますが、それだけは阻止したい。絶対、私たちが日本一になります」

今日の勝利は通過点。甲子園が楽しみでしょうがない

「今日の勝利は通過点だと思っています」。試合後の勝利チームインタビューで、決勝進出を決めたことについて問われた岐阜第一・小久保志乃監督はそう答えた。「ベスト4に終わった昨年から1年。一日一日、優勝するための練習をしてきた」という。ちょっとしたミスも見逃さない。「そこが勝敗を分けるんだ」と、細かいところを徹底的に追及し、さらには「ただ試合に勝つだけじゃなく優勝するため」の勝ちを選手たちに意識させ、成長を促してきた。

 いよいよ優勝へあと1勝に迫ったが、決して楽ではないことは十分に分かっている。何しろ相手は強豪、神戸弘陵だ。それでも「うちは、めい(桒澤さん)のねばりのピッチングとその粘りに応えるバッティングで勝ってきた。チーム力は高いと思う」と手応えは十分だ。エース桒澤さんの後押しとなる打撃をするには、「1番の上條さんが出るかどうか」だと期待を寄せていた。

今日の勝利は通過点、とインタビューで答えた後、「甲子園が楽しみでしょうがない」と語った小久保監督。決勝でどのような戦いを見せてくれるか、楽しみでしょうがない。

福井工大福井・中村薫監督

「最後は相手が今年の3年生たちは能力が秀でていたという選手が一人もいなくて、さらに一つ上の代が選抜で優勝したこともあって、劣等感とプレッシャーの中でひたすらに努力を重ねてきた子たちばかり。よくここまで勝ち上がってくれた。よくやった。何も言うことはありません」

打席から見たスタンドは胸に迫るものがあった。福井工大福井・平山幸奈主将

「自分たちは1つ上の先輩たちを前に影が薄かった分、新チームになってから暴れてやろうと一生懸命でした。春に優勝を遂げた凄い先輩たちでさえ、昨年の大会では初戦敗退という夏大の怖さを教えてくれました。『来年は頼むぞ』という先輩からの言葉に少しでも応えることができたかな。負けて悔しいけれど、自分たちが3年間積み上げてきたことが出せた試合でした。打席から見た大応援団のいるスタンドは、胸に迫るものがありました。後輩たちには、今度は甲子園でこの景色を見て欲しい」

あれが自分の精一杯、悔いはない。福井工大福井・郡山優羽選手

「10回のタイブレークで、1年生の中野に打席が回ってきた時、『3年生が決めてあげるから、フルスイングしておいで』といって送り出しました。その通り、3塁打を打ってくれ嬉しかったです。次打者として打席に立った時は自分で決めるつもりでライナーとなりましたが、追い込まれてから怖がらずに思い切り振り抜けた結果だったので悔いはありません」

試合後スタッフから貰った「よくがんばりました」の金メダルをかけてもらった郡山優羽選手
試合後スタッフから貰った「よくがんばりました」の金メダルをかけてもらった郡山優羽選手

甘く入ってしまった。福井工大福井・藤田奈那投手

「(連投で)肩は張っていた分、気持ちで投げた。同い年の桒澤さんに対して、ピッチャーとしてよりも打者として意識していました。(代打で対戦、適時打を許した場面では)甘く入ってしまいました。そこだけを気をつけていたのですが…。新チームでは、新しい球種を覚えてピッチングに幅を持たせたいです。岐阜第一や神戸弘陵のような強いチームに勝てるよう頑張っていきたいです」f

(撮影はすべて筆者)

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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