グレタさんによる自分の氏名の商標登録出願について
「グレタさん、自分の名前を商標登録申請 なりすまし対策」というニュースがありました。「スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17)が29日、インスタグラムを更新し、なりすまし対策で自分の名前の商標登録を申請したと明らかにした」ということだそうです。
グローバルな商標検索サイトTMViewで調べてみると、おそらくEUIPO(欧州連合知的財産庁)に出願された018171377号だと思われます(これ以外にも未公開のものがあるのかもしれませんが)。Greta Thunbergの文字商標です。2019年12月13日に出願されていますが、もう審査は終わって異議申立受付期間に入っています。このまま異議申立がなければ2020年4月24日に登録となります。出願人は、Stiftelsen The Greta Thunberg and Beata Ernman Foundationです。上記記事にある「(グレタさんの)書籍の印税や寄付金などを処理する財団」なのでしょう。
一般に、有名人が自分の名前を商標登録出願する場合、問題になるのは指定商品・指定役務です。商標権とは特定の言葉(や図形)の使用そのものを独占できる権利ではなく、特定の言葉(や図形)を特定の商品や役務(サービス)の提供時に出所表示として使用することを独占できる権利だからです。
この商標登録出願について言うと、指定役務は35類(広告、マーケティング関連)、36類(金融サービス、寄付金関連)、41類(教育サービス関連)、42類(科学研究関連)です。上記記事にもあるように、グレタさんと直接関係ない人がグレタ・トゥンベリの名を使って、この種の活動を金儲けのために行なうことを防ぐことが目的であって、ライセンスして利益を上げるための商標登録出願ではないようです。グレタさんの環境活動家としての姿勢や物言いに賛同するかどうかは別として、商標権の使い方としては真っ当なものですし、彼女の普段の行動と矛盾することはありません。
なお、上記の朝日新聞の記事の見出しを見るとネットでのなりすまし(ツイッターの偽アカウント等)を防ぐために商標登録出願をしたかのように思えますが、この目的では商標権はあまり有効ではありません(成り済まし行為はサービス提供者の規約によって防止されることになるでしょう)。
ところで、Greta Thunbergを含む商標としては以下の結合商標(01828876)も見つかりました。2019年9月25日にイタリアの会社によって出願されているようですが、グレタさんとの関係は明らかではありません。指定商品は、3類(香水)、16類(紙類)、21類(台所用品)、28類(おもちゃ類)です。こちらは、グレタさんの了承のもとに出願されたとは思えません。なお、記録を見ると、まだ所定の出願料金が支払われていないようです。イタリアにもそういう人がいるのだなあと思いました。