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韓国でのジャニーズ 一連の報道はどう見られている? 「謝罪が甘い」「韓国大手にも似ている」

(写真:ロイター/アフロ)

「今回の藤島ジュリー景子社長の謝罪文は、韓国から見ると『謝罪ではない』と受け取られるでしょう。疑惑について謝罪するものの、事実かどうか判断するのが難しい(自分は知らなかった)という内容だったからです。もしこれが、問題を引き起こした有名人の謝罪に対して特に厳格な韓国での出来事だったらむしろ反発が高まったでしょう」

韓国大手スポーツ紙「スポーツ京郷」の女性記者イ・ユジン氏は自らの日本留学経験を踏まえ、今回のジャニーズ事務所関連の騒動をこう語った。

韓国では、ジャニーズ事務所タレントの一般的な認知度はそれほど高くはない。日本では若い世代がK-POPについて多く語るが、逆はほとんど聞いたことがない。まれに嵐や、韓国でも近年再放送が人気となった「ロングバケーション」に出演した木村拓哉さんについて「かっこいい」という話を聞く程度だ。現に筆者自身も5月14日に藤島ジュリー景子代表による謝罪映像公開のあった時期にソウルに滞在したが、この件を現地の人たちから一度も聞かなかった。

それでも業界内でK-POPに絶大な影響を与えたことで知られるジャニーズ事務所(詳細は後述)。今年3月からの一連の騒動は当地でどう見られているのか。

  • 「YTN」も「謝罪はするものの容疑は認めず」と報道

大手メディアも「半分の謝罪」をクローズアップ

国内最大のポータルサイト「NAVER」の芸能ニュースコーナーのトピックに集まった関連ニュースはわずか7本。韓国メディアの関心は決して高くはない。それでも確かに冒頭で現地記者が言う「甘い謝罪」を感じさせる内容がある。

7本の記事の見出しには「性搾取」という言葉が多く使われている。いっぽうこのコーナーのタイトルには「韓国の視点」が出ている。7本の記事のうち、大手スポーツ紙「スポーツ朝鮮」の記事を引用しているのだ。

「創業者のスキャンダルに対する半分だけの謝罪、日本のジャニーズ」

NAVER該当ページのキャプチャ。筆者が加えた青枠内が「創業者スキャンダルに半分の謝罪-日本のジャニーズ」。
NAVER該当ページのキャプチャ。筆者が加えた青枠内が「創業者スキャンダルに半分の謝罪-日本のジャニーズ」。

記事では前半に「謝罪の内容紹介」を行い、最後をこう結んだ。

「10代の少年が創業者による性的搾取の問題に巻き込まれた後、藤島ジュリー景子社長は『法と規則を順守し、時代に即した非常に透明性の高い組織構造を構築するために専門家と共に努力している。今年、新しい会社の構造とシステムを発表し、実施する予定である』という主旨の発言を行った。これが問題を回避していると批判を浴びた」

この「スポーツ朝鮮」が指摘する「これからの展望」も、冒頭のイ記者が指摘する「知らなかった」という発言も、韓国の視点で見ると「甘い」ということだ。

前出のイ記者が続ける。

「韓国には『韓国式芸能界謝罪マニュアル』が存在するほどです。絶対に言い訳はしてはならず(本当に知らなかったとしても)、まず謝り、素直に間違いを認めて悔い改めることのみが真摯な謝罪として受け入れられます」

イ記者はまた、ニュースに触れた韓国の周囲の人たちの反応をこう感じている。

「永遠に続くものはないのだな、という驚きが、まず一つ目の反応です。アイドル産業にとって欠かすことのできない会社ですからね。名前を変えるかどうかはさておき、この機会に新たなスタートを切り、かつてアイドル産業を牽引した過去の名声を取り戻してほしい。それが肯定的な意見です」

「否定的な意見もあります。仮に社名を変えただけで何が変わるのか、という。そうなると既存の'ジャニー'が入ったグループ名はどうするのかという疑問も...。犯行を証明する判決文や証人たちは以前から存在したのに、何十年も黙っていて、今になってこうなった。当然のことながら海外のメディア(BBC)が採り上げたからこそ、という意見もあります」

虐待の描写に韓国との比較…他メディアの見出し

この他のメディアの記事見出しは以下の通りだ。

「"ジャニーズの性的虐待?被害認識が先決"...専門家、恥の文化を指摘」(TV REPORT)

「"人形のように体を洗われ"...日本のプロダクション・ジャニーズ、創業者の性的搾取疑惑に対して謝罪」(MKスポーツ)

「"J-POPの大物、性的搾取"の論争が波紋...ジャニーズ『お詫び申し上げます』と公式に謝罪」(ソウル経済)

「"成功するためには我慢"…日本のジャニーズ創設者、少年への性的搾取の波紋」(

YTN)

ちなみに今年3月のBBC報道以前の2月23日には「韓国日報」がこんな記事を配信している。

「抑えが効かず、危機に瀕した"J-POPアイドル王国"ジャニーズ... SMエンターテインメントと似ている」

韓国の大手SMエンターテインメントの身売り話が盛んに報じられていた時期のことだ。「崩壊した"イ・スマン神話"とSMの危機」という連載の第2回として掲載された。

SMもジャニーズも創設者の絶大な力をもって急成長したが、その後両者ともに「閉鎖的な経営により内紛を経験。競争力も低下しつつある」と指定している。

ちなみにSMエンターテインメントの元トップ、イ・スマン氏は度々「ジャニーズ事務所のシステムを採り入れている」という趣旨の発言をしてきた。2006年には所属のスーパージュニアについて「ジャニーズのジャニーズJr.を参考として作った、東洋的な性格の強いグループだと言える」と発言している。

SMエンターテイメントのみならずとも、韓国芸能界では「グループ内のユニット活動」「アイドル歌手が演技やバラエティに出演」「グッズ販売」などジャニーズ事務所のスタイルが自国に影響を与えたとされている。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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