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BTSのJINきょうから兵役へ 「ファンへの直前挨拶なし」ちょっとマニアックな別の理由

(写真:REX/アフロ)

BTS・JINの軍隊生活が今日から始まる。

京畿道漣川(ヨンチョン)郡の第5師団に入営し、ここで5週間の基礎軍事訓練を受けた後、陸軍に入隊することになっている。

「入隊」と報じるメディアも多いが厳密には「入営」。基礎軍事訓練は軍隊入りする前のレッスンを受ける、という位置づけだ。いずれにせよ「今日から軍生活が始まる」という点に違いはないが。

13日にJINが向かう第5師団には「鍵(ヨルスェ)新兵教育隊」という別名がある。朝鮮戦争時代の歩兵隊が由来だ。

号令時の合言葉は「団結(タンギョル)!」

これをJINも必ず口にすることになる。

【BTS】JINは今日からどんな軍生活を? 当面は「5週間の基礎訓練」 心構えを学び、銃を受け取り…

過去にはヒョンビンなどが「メディア対応」 

その入営に際し、JINからの直前の挨拶は「なし」ということになった。

過去には俳優のヒョンビン、ソン・ジュンギ、イ・ジュンギ、また歌手のRAINなどが軍生活を始める直前に頭を短くした姿を披露しつつ、挨拶をすることがあった。

今回のJINの「挨拶なし」の理由について、少々マニアックな情報を。

本題に入る前に、まず事務所側が発表する公式の理由について。「多くのファンが訪れることは現場に混乱をきたす」だという点は明らかだ。なにせ、世界的スターの入営なのだ。所属事務所からのリリースでもこう記してある。

「新兵教育隊の入所式は、多数の将兵および家族が共にする場です。現場の混雑を避け安全を確保するために、ファンの皆様には現場への訪問をご遠慮くださいますようお願い申し上げます。JINへの温かいお見送りと激励は、お気持ちだけ頂戴いたします」

韓国では軍隊生活が始まる直前は「家族とともに過ごす時間」という考え方も強い。

軍側の規制もある! 

もう一つ重要な点は「軍事的な理由」にある。この点が今回ご紹介したいポイントだ。

JINが入営する場所については、11月24日の韓国メディアの報道でも「某部隊」とぼかして報じるところがある一方で、一部メディアが「京畿道漣川(ヨンチョン)郡の第5師団」という点を明らかにしている。

この第5師団…韓国軍の公式サイトにもこう記されているほどの「行きにくい場所」だ。

「お越しの際は交通事故が大変多い場所ゆえ安全運転をお願い致します(特に冬の自家用車利用時にはスノーチェーンなど冬用のご準備を)」

さらにここには「ファンが集まれない事情」がある。

キーワードは「500メートル」。これは事務所の公式発表にも出てこなかった話だ。なんなのかというと「そもそも施設に近づけない」

韓国の軍事関連法のひとつ「軍事基地ならびに軍事施設保護法」第5条より。

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2.制限保護地域

軍事分系(境界)線の以南25キロメートル範囲以内の地域のうち、民間人統制線の以南地域。ただし重要な軍事基地ならび軍事施設がない、あるいは軍事作戦上障害にならない地域と地域として大統領令の定める基準に該当しない地域は、保護制限地域の指定から除外しなければならない。

上記地域に位置する軍事基地ならびに軍事施設の最外郭(一番外のライン)の警戒線から500メートル以内の地域。ただし集落地域に位置する軍事基地ならびに軍事施設の場合、軍事基地ならびに軍事施設の最外郭線から300メートル以内の地域とする。

(太字強調部分は筆者による)

要は基本的には「施設の500メートル以内には近づけない」。もし周辺に住宅や店舗など一般生活を送るエリアがあるのなら「300メートル」となる。JINが入営する京畿道漣川(ヨンチョン)郡の第5師団は北朝鮮国境近くにあり、軍事分系線の25キロ以内に位置するのだ。

だからといって500mの付近にファンやメディアと挨拶を交わせるようなスペースもない。だから挨拶を諦める、という事情もある。

最近入営の俳優は「挨拶したいけど場所がない」

実際に筆者もこの理由で、「芸能人の入営前の挨拶」取材を諦めざるをえなかったことがある。

ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」でブレイクした俳優のカン・テオ(ヨンウの彼氏)。今年9月に彼が入隊する際、現地に取材に行こうと試みた。場所はJINの師団とは違う、忠清北道の山奥にある師団だった。現地スポーツ紙芸能記者を通じて事務所側と連絡を取り合った。

事務所側は当初、入営時の挨拶は全く考えていなかった。しかし「やらないのか」とメディアからの問い合わせが多かったという。すると事務所側も「やはりファンへの挨拶、メディア向けの写真撮影などができないか」と考えた。本人が一言だけ挨拶して、さっと写真を撮って終わる。それほどに長い時間はかからないものと思われた。

しかし、2~3日ほど待って来た答えは「実施せず」だった。

「部隊の500メートル以内には近づけないことになっている」

「付近の道路もすべて2車線と狭い」

「公園があるにはあるが、あまりにも狭く多くの人が集まると近隣に迷惑」

「本人に近づくことも出来ないと思います」

はっきりと「取材成果はないと思うので、お越しいただかないほうがいいです」とすら言われた。

BTSファンの中には、現地で見送れなかった寂しさもあるかもしれない。そこにはまず、所属事務所側の「他の入所者が家族と過ごす時間を尊重」という気持ちがある。それに加えてそもそも「軍事的な理由で施設の外壁500メートル以内に近づけない」という制約もあるのだ。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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