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梨泰院事故 生存者が「脚全体に巨大なアザ」 深刻画像が伝える「圧迫の過酷さ」

(写真:ロイター/アフロ)

29日の発生から1週間が経った梨泰院圧死事故。

韓国では、その生存者の生々しい画像が報じられている。

「圧迫から抜け出した後、太ももから体全体にかけて大きなアザができた男性」

じつのところ事件発生2日後、11月1日くらいから患部の写真とともにこれが報じられてきた。しかしYouTubeの韓国メディア公式アカウント上のニュース映像は「一部の視聴者にとって攻撃的または不適切な内容含む」とのアラートがなされているほどの画像が含まれていた。

3日にMBNが患部に画像処理を施した映像をもとにしたニュースを報道。こちらに紹介する。

韓国でこのニュースが報じられた発端は、事故の生存者Aさん本人によるオンラインコミュニティ(掲示板)への投稿からだった。

「挟まっていた時の圧迫感がどれほど強かったのか。これを知らせるために、自分の足の写真だけをアップします」

として写真3枚をアップした。

これを「ソウル新聞」が報道。

「成人男性と見られるA氏は、両足の太ももから足首にかけ、全体に青あざが出ている状態」と伝えた。

いっぽう、掲示板上の投稿を見たユーザーからは心配するコメントが相次いだ。

「早く病院に行って」

「壊死する可能性もあるんじゃない?」

Aさんはその後病院に行き、こう書き込んだ。

「緊急検査を受けてきました。病院に行く考えを持てていなかったのですが、多くの方が心配してくださり、それに後押しされて行くことが出来ました。現在は大きな問題はなく、外来診療を受けていくことになりました」

事故現場の狭い路地
事故現場の狭い路地写真:Lee Jae-Won/アフロ

一連のやりとりを見て、大手経済紙「毎日経済」系のMBNが本人に取材を行った(上記動画)。ここでは、より詳しい症状を口にしている。

「事故後、ストレッチしているんですが、最初はとても痛かった。しかし後に感覚が無くなってきたんですよ。救助された時も足が動きませんでした。次の日から痛みがあったんですが、助かったという安堵感と罪悪感のために病院に行けませんでした」

実のところ本人があざに気づいたのは、事故直後ではない。数日後だった。

「このあざを知ったのは、(事件2日後に日常復帰後)家に帰った後です。最初はアザが出来ただけ、だと病院に行く考えは持ちませんでした。でもネット掲示板でのやり取りの後、専門家の話を調べると『負傷者は長い時間強い圧迫を受けたため、病院で治療を受けないといけない』と言うんです。筋肉の壊死が起きて、深刻な場合は腎臓に影響が及んで急性の代謝性疾患につながる可能性があるというので」(同)

参考:朝鮮日報系「HEALTH朝鮮」に掲載された患部画像。画像処理あり

「MBN」は高麗大学緊急医学科のイ・ソンウ教授にも話を聞き、こういったコメントを紹介している。

「アザが出来ずとも、長い時間強い圧迫を受けた際には診療が必要。医学的用語でいう『横紋筋融解症』という症状が生まれ、尿がコーラのような色になります。そうなったら腎臓に損傷が起きる可能性があります」

参考:横紋筋融解症(日本緊急医学会 医学用語 解説集)

国内の別メディアもこの件を報じている。「東亜日報」は「事故の生存者の方々はあざが出たら必ず診療を受けてほしい」とし、「中央日報」は「あざで済んだ、とは思わないで」と。

体の傷は事件後に発症するほどになかなか癒えない。

いっぽう本人は自らが事故に遭ったことについて、心の内をこうも記している。

「ハロウィンの(その日)に梨泰院に行けば、混雑による困難はあるだろうとは考えていた。(事故に遭ったのは)すべて自分の責任。誰も恨まない。ただその日、一緒に救助されなかった被害者の方々に申し訳ない気持ちしかない。自分はこの先、救助されたことに感謝をし、ひたすら誠実に生きていきたい」

(了)

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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