ここ最近の韓国は日本をどう見ているのか。

8月15日は日本にとっての終戦記念日であり、韓国にとっての解放記念日。日韓関係を振り返る日だった。

安倍晋三前首相の事件があった7月8日からきのうまで（8月15日）、あるビッグデータを探った。

インターネット上での「日本」に対する関連語は何だったのか。つまりは「日本」というキーワードと合わせて言及された言葉は何だったのか。

結果は以下の通りだった。

韓国では「統一教会」は15位圏外

「安倍」、「政府」といった事件関連の話題が1位と2位に。さすがの関心度の高さを感じさせる。

いっぽうで日本で連日報じられる「統一教会」とその関連語がない。

15位圏内にもまったく入ってこないのだ。確かに「日韓関係」の一面もあるのだが。

12日に教団の関連団体「天宙平和連合」が開催したフォーラムで安倍氏を追悼する時間が設けられた。日本では大いにワイドショーでも取り上げられたが、韓国でこの点について報じた大手メディアはゼロ。最大手のポータルサイト「NAVER」に記事が掲載されたのは3本ほどで、うち一つは系列の「世界日報」だった。

なぜか。

「そもそも韓国では統一教会の報道自体がタブー視されているという傾向があります。名前を積極的に出したがらない」（韓国一般紙社会部元デスク）

確かに異端の扱いを受けている。宗教団体とのトラブルに対応する弁護士集団「韓国キリスト教異端相談所協会」公式サイトでは統一教会は「4大問題団体」の一角には入っていないものの、「その他の問題団体」の一番上に紹介されている。

いっぽうで統一教会は「似而非（サイビ＝フェイク）」や「異端（イダン）」と呼ばれるいわゆる「カルト系」の"ロールモデル"とされている。2020年に「密室に1000人が密着」という日曜礼拝により新型コロナウィルスの集団感染を起こし物議を醸した「新天地」も「モデルにしている」と言われている。2015年、現地メディア「宗教現代」は「統一教に似てきている」という指摘を行った。

要は「口に出したくもない」という事情だ。

とはいえ、だ。韓国にとって「目の敵」だった安倍氏に関する話だ。憲法改正を打ち出し「軍国主義の復活」を匂わせた。2019年の"韓日貿易戦争"の際には、いわゆる"ホワイト国除外"で「歴史認識論争に貿易問題を持ち込んだ」憎き存在。統一教会との関係性にはメディアも食いつきそうだが。

そこには日韓の宗教事情の違いがある。

「韓国には社会的に大きな影響力を持つ宗教団体が複数存在します。政教分離の考え方には厳格な分、目に見えるところで発言力を発揮する傾向にあります。一線を越えられないからこそ、「政治など社会情勢に影響を与えよう」と主張する、とでもいいましょうか」（同上）

それゆえ「宗教団体が政治に影響力を及ぼそうとしても、スキャンダラスに感じない面がある」という。

確かに日本の感覚で見ていると、韓国の宗教団体は「驚くほどに強い主張」を行うことがある。左派政権下だった2020年、文在寅政権のコロナ対策に猛抗議し、当時、ガイドラインで禁じられた礼拝を強行し、抗議デモを強行したのは「右翼系キリスト教団体」だった。

いっぽう昨年には左派野党「ともに民主党」の国会議員が、寺院の観覧料について「不当」と意見。これに仏教団体が猛抗議をし、政界が一時混乱したこともある。

意外に関心度の高い「放流」とは？　それより高いのは…

8月15日関連のキーワード「光復節（日本からの解放記念日）」は、7月8日から8月15日までの集計のうち、10位に入った。これは実質上15日の一日の集計で1位に入るほどだったゆえ、「かなりの急上昇キーワード」だったと言える。

いっぽうで7位にはこんなキーワードが。

7月22日に日本の原子力規制委員会が「福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水」について臨時会合を開き、東京電力が政府の方針に従って策定した海に流す計画を認可したニュースだ。

日本側では「日韓関係の問題」と広く認識されているであろう「徴用工判決」「慰安婦合意」の問題はランキング圏外で、こちら（上記動画は再生回数250回ほど）が7位に。一般層では双方の問題意識のズレが生じているのではないか。そんな認識が必要か。

何よりここで挙げたいのは3位と5位についてだ。

「ファンミーティング」「ミーティング」。これふたつを足すと10万6000超えで、「安倍」の10万を上回る。

さらに7位以下を見ていくと…

「アルバム」と「ショーケース」もランクイン。

これ、何かというと主に韓国の女性が「日本で自分の推しのK-POPグループや俳優が活動する」ということへの期待感が言及されているのだ。

8月には日本でドラマ「美男堂の事件手帳」などで知られる俳優ソン・イングク、多国籍グループのNCT、「顔が天才」と言われるイケメンのチャ・ウヌ（ASTRO）などのファンミーティングが行われた。またオーディション番組出身の歌手カン・ダニエルが日本で10月にアルバムを発表するニュースなどがあった。

これらについて「仁川空港で出国時に撮られた写真」で沸き、また「一部メンバーがコロナ陽性で不参加」とまた話題に。あるいは「行ってみたい」「行けるかな？」とネット上で情報交換するのだ。

じつのところ、この1年はこの話題がネット上での「韓国にとっての日本」の主役だ。今回の8月15日に向けたおよそ1ヶ月の集計でも7月8日の週には「安倍」、その次の2週間は「放流」が1位となったが、その後は"すぐ"に関連の話題が"返り咲き"。

昨日8月15日は大統領が解放記念日に演説し、「日韓関係は変えられる」と宣言したことも話題になったが、一般層の日本への興味は「推しの日本での活動」が強い。これもまた、ひとつの実態だ。