10日の細田博之衆議院議長の「毎月たったの100万円しか」発言は、韓国でも少しずつ報じられている。

12日には国内最高権威の経済紙「毎日経済」と公営放送「KBS」がこれを伝えた。

「KBS」の記事には韓国の読者からこういったコメントが寄せられた。

「韓国の国会議員も無報酬の名誉職国会議員にしなければならない。職業政治家が多すぎる」

「韓国の国会議員の月給は1260万(約127万円)ウォンだって。日本より多い。あらら…」

さて、細田氏のいう「毎月100万円」は安いのか、高いのか。

外国の事例との比較を。韓国と比べるとどうなのか。

パーティーでの発言主旨

本題に入る前に論点の再整理を。細田センセイの10日のパーティでのぼやきは3点あったようだ。

・議長になっても給料が少ない。

・上場会社の社長は1億円は必ずもらう。2億も3億も10億ももらっている人がいる。

・国会議員の給料(手取り)も安い。だから議員を増やせ。

3番めについては、こう発言したのだという。

「『歳費を払うのがむだだから定数を減らせ』などと言う人もいる。普通の衆議院議員は、手取りで70万円か60万円ぐらいだ」

韓国の国会議員は「月収88万」議長は「プラス55万」 

さて、その手取りの「100万円」(細田議長)「70万円~60万円」(日本の国会議員)は多いのか少ないのか。

まずは韓国の「普通の」の国会議員の報酬のデータを。

韓国国会の様子
韓国国会の様子写真:ロイター/アフロ

これは「国会議員の手当等に関する法律」で定められており、手当のほか経費(立法活動費、特別活動費、旅費支給、医療費、補助職員=秘書費用などに分かれている。

その合計(つまり経費込み)は2020年基準で

年間「1億5187万9780ウォン(約1526万円※)」

月間だと「1265万6640ウォン(約127万円)」

※2022年5月12日レート基準。以下。

このうち経費を除いた手当(手取り)はこうなる。

月平均「873万6648ウォン」(87万9842円=約88万円

確かに細田先生のいう日本の「普通の国会議員の月収60~70万円」は、韓国の88万円に比べて安い。

さらに韓国の国会議長(一院制)はこれに加えて2つの手当を受け取る。

・議長手当て/月間320万1300ウォン(約32万2400円)

・直給補助費/月額225万ウォン(約22万6600円)

つまり議長の月収(手取り)は約142万円だ。

これもまた、日本細田議長の「100万円」は韓国より安い、ということになる。

中間のまとめはこうだ。

・議員月収は【日本「60~70万円」:韓国88万円】。日本のほうが安い。

・議長月収は【日本「100万円」:韓国142万円】。これもまた日本の方が安い。

・議長と(ヒラ)議員の差は【日本「40万」:韓国「55万円」】。確かに日本の議長は韓国と比べ安い。

韓国では「高すぎ」と批判続出

ただ、韓国の場合は2018年頃から「国会議員の給料が高すぎる」として度々メディアの批判を受けている。

なんでも…

経費を含めた「1億5187万9780ウォン(1562万円)」

・一般勤労者の平均年収の4倍(約364万円)。

・政府の副大臣クラスよりも高い。

・韓国の1800万人勤労者のうち、年収1億ウォン(約1000万円)を超えるのは11%。

・しかし韓国の国会議員は300人全員が「1億ウォン(約1000万円)超え」なのが一般社会の構図と比べても「不平等」。

(2020年東亜日報系「NEWS1」の報道。勤労者月収データは2018年基準)

2019年には「ソウル新聞」が「文在寅大統領さえ決断すれば、国会議員の給料は減らせる」という厳しい論調の論説委員コラムを掲載した。

韓国国会
韓国国会写真:Lee Jae-Won/アフロ

議長「めっちゃもらってます」(「歳費」は経費込でしょう?)

日本の場合、民間給与の平均は年間「433万円」で、月収は「36万円」(令和3年の厚生省のデータ)なのだそう。

令和2年分民間給与実態統計調査結果について(2021年9月

国税庁企画課)

日本での国会議員、議長と民間給与との差はこうなる。

・手取り

議長

100万円:36万円=約2.7倍。

議員

70万円:36万円=約2倍。

ただし、今回の比較ではこの点が重要だ。韓国の基準は「経費込み」なのだ。

・「経費込み」で計算し直すと…

議長

282万※:36万=7.83倍

議員

130万※:36万=3.61倍

※出典:国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律

第一条 各議院の議長は二百十八万二千円を、副議長は百五十九万三千円を、議員は百三十万千円を、それぞれ歳費月額として受ける。

議員の「格差」は韓国より少ない。

しかし議長(細田議長)は「かなりもらっている」。

経費込みだと。細田氏は手取りにご不満のようだが、それ以外のよい待遇があるではないか。

幹事長時代の細田氏
幹事長時代の細田氏写真:ロイター/アフロ

一般市民の給与の4倍(経費込み)でかなり叩かれている韓国と比べるても、逆に「もらいすぎ」と指摘を受けてもいいのでは? 地位が高いし、重要な職務をこなしているのから「もっと高くて当然」という話なのだろうか。

少なくとも国民の側からは「細田議長もらいすぎ」という批判はこれまで出てこなかったのだが…

ちなみに「上場企業は1億円」の話だが、韓国の場合、トップ100企業の幹部クラスの平均年収は「約7600万円」(2020年4月「朝鮮BIZ」)だそうだ。

「細田発言」韓国だったらおそらくは…

仮に韓国だったら「長年政権にいる保守系議員」がこういうことを言ったら「OUT」。党内からも相当厳しい目を向けられることになる。

先日、就任が報道された尹錫悦大統領の「国民の力」のスタンスがそうだ。

長年政権側にいるが、基本的に「確かに能力は高いが偉そう」という点が嫌われている。結果、革新系に98年から2008年、2017年から22年まで政権を取られた。

その影響からか保守の尹錫悦政権は「常識・公正」や「反理性主義」を訴える。最近の記者会見でくり返し言われるのは「我々の政権は、国民の害になることを一切しない」。

その観点から言うと、今回の自民党の重鎮の発言は「長くそこにいらっしゃるから、感覚がお鈍りなのでは」ということになる。

(了)