14日21時から日本テレビ系「金曜ロードショー」で放映されるジブリアニメ「紅の豚」。

同作はジブリ作品への人気が高い韓国でもよく知られ、長く愛される作品だ。2003年12月に国内上映後、長らく正規版の閲覧が難しい時期もあったが、現在は大手ポータルサイトやNetflix韓国版で閲覧可能(2020年2月より)となっている。

韓国でのこの作品を語るにあたり、まず欠かせないのは時代背景だ。92年に日本で上映され、韓国ではその9年後の03年に上映された。そこには韓国との政治との結び付きがある。

98年2月に就任した金大中大統領が、段階的に日本大衆文化を韓国内で解禁していく段階で「紅の豚」が存在したのだ。

  • 第2次日本文化開放時の様子

漫画や映画、日本人アーティストによる2000人以下の公演などが段階的に解禁されるなか、「紅の豚」は00年6月27日の「第3次開放」にマッチする作品となった。

この時「国際映画祭で受賞した日本の劇場用アニメ」が解禁対象に加えられたが、「紅の豚」は93年にフランスの「アヌシー国際アニメーション映画祭」で「長編部門グランプリ」を受賞していたのだ。

当時の様子を「東亜日報」2000年6月28日の記事はこう紹介している。

現在、デウォン動画が著作権を持つ日本のスタジオジブリの10本のアニメのうち、国際映画祭の受賞作は「もののけ姫」、「平成狸合戦ぽんぽこ」、「風の谷のナウシカ」、「紅の豚」、「火垂るの墓」だ。以前は違法に流通していたが、(正式に)劇場で公開されるのなら興行で成功する可能性が高い 

出典:東亜日報「日本の大衆文化第3次開放の影響…大きな衝撃はない模様」

こういった流れがあり、03年12月に「紅の豚」は韓国で上映が始まったのだ。

参考までに、金大中政権の段階的日本文化開放の内容は以下のとおりだ。それまでは日本の音楽、漫画、アニメの流布は韓国で禁じられていた。

第1次開放(1998年10月20日)

日本の漫画

日本の4大国際映画祭受賞映画

第2次開放(1999年9月10日)

日本人アーティストによる2000席以下の歌謡公演(ただしこの模様の放送、レコードや映像作品・ビデオの販売は不可)

日本映画の解禁範囲拡大

日本の宗教団体の活動解禁

第3次開放(2000年6月27日)

国際映画祭で受賞した日本の劇場用アニメ

日本人アーティストによる歌謡公演の席数制限撤廃

日本のコンピュータゲームのうち、テレビゲーム以外のゲームソフト

日本のスポーツ、ドキュメンタリー、報道番組の放送

第4次開放(2004年1月1日)

映画の全面解禁

レコード、CD、テープ等の販売

作品性に目を向けると、まず目を引くのは、韓国語版のタイトルだ。

1910年代から30年代年当時、豚の姿になったイタリアのパイロットの様子を描き、反ファシズムを伝えるメッセージ性もある作品。じつは作品中にハングル文字で「빨간 돼지(パルガン・トゥエジ/赤い豚)」という表記が登場する。

しかしこれは韓国語版のタイトルにならなかった。少しだけニュアンスの違う「붉은 돼지/ プルクン・トゥエジ」が韓国語版タイトルだ。

前者は「鮮やかな赤」を表し、後者は「赤黒い色から赤茶色まで」を表す。日本語の「紅(くれない)」を考えると、こちらの方がニュアンス的に近いか。

興行面ではじつのところ、動員数37,960と「大ヒット」とはいかなかった。しかし韓国で初期に正式上映されたジブリ作品として、思い入れが強いファンがいるようだ。

国内1位、2位のポータルサイト「NAVER」と「Daum」にはそれぞれ過去に韓国で上映された映画作品を有料ダウンロードし、閲覧できるページがある。そこには作品概要が記され、ファンの評価・コメントを掲示板に残すことができる。

NAVER 該当ページ
NAVER 該当ページ

2021年から2022年の現在も、そこには動きがある。今なお作品を見て、コメントを投稿するファンがいるのだ。※以下、多少のネタバレがあり。

「ハヤオ作品のなかで一番好きなアニメーション。30年前のものなんだけど、作品の感性は今見てもまったくダサくない。ポルコの豪胆な性格と笑いがすごく気に入っている。作品のなかでのセリフや表情も洗練されていて」(2021年12月14日/NAVER)

「豚の豪快さと、ストーリーの心地よい波。気軽に観るによい作品」(2021年12月7日/NAVER)

こういった歴史的視点で観る評価もあるが。

「名作として認めるが、時代背景が日本の帝国主義時代である1910-1930年代だという点、アメリカのカーティスが手当たり次第に銃を放ってポルコを殺そうとするのだが、ポルコは戦争が嫌だと銃を使わない姿が、まるで過去の帝国主義日本の足取りを美化するようでちょっと不快な面もある。むしろカーティスがアメリカ人ではなく、ドイツ人やイタリア人なら帝国主義を批判する作品だと観ることも出来たのだろうが…」(2021年12月27日/NAVER)

まあ、こういった見方が韓国から出ないはずがない、ともいえるものだ。それよりもコメント欄に記される言葉の多くは、作品性を讃えるものだった。

「ハヤオ作品のなかで最高のロマンス」(2021年12月27日/NAVER)

「子供の頃に見たときは感じなかったほのかな感じが、大人になって見た時にすごくいい余韻を感じられました」(2021年11月12日/NAVER)

「飛ばねぇ豚はただの豚だ」(Daum, 2021年2月/Daum)

そのほかコメント欄には「作品タイトルからどうしても北朝鮮のことを思い出す」「子供の頃にVHSで見た記憶が蘇る」といったコメントも残されている。韓国でも「よい余韻を残している作品」といえそうだ。

(了)