東京五輪開幕前から、何かとピッチ外が騒がしい韓国選手団。

その先陣を切ったのは、22日男子サッカーのニュージーランド戦だった。

結果は0-1の敗北。

攻撃陣にオーバーエイジのファン・ウィジョ(ボルドー/フランス)、クォン・チャンフン(水原三星)を据え、4-3-3の布陣で試合に臨んだが前半に10本枠内シュートを打った優勢を活かせず、逆に後半(71分)の相手のたった1本の枠内シュートに沈んだ。

試合後、韓国メディアは厳しい論調で結果を報じた。

「衝撃的なノーゴール 韓国、必死に準備したというセットプレーもすべて決まらず」(エクスポーツ)

「カウンターに沈んだ韓国 8強入りは茨の道」(THE FACT)

「衝撃的敗北 キム・ハクボム監督 失望させる試合、申し訳ない…出来の良かった部分はない」(ニュース1)

国内のサッカー専門媒体「インターフットボール」はグループリーグ突破をすでに「赤信号」と報じた。

右ウイングのクォン・チャンフンを「チャンスメイクを繰り返し、イ・ガンイン(バレンシア)がビルドアップのためにポジションを下げた際、そのスペースを埋めた」と絶賛しつつ、そのクォンを後半13分に新星ソン・ミンギュ(浦項スティーラース)に替えたが「まったく機能しなかった」と酷評。

試合前、キム監督は「簡単な相手ではない」と話したが、そのとおりで欧州組・豪州組(!)をズラリと並べるニュージーランドは、決してイージーな相手ではなかった。

写真:ロイター/アフロ

そもそもどんなチームなのか? 

キム・ハクボム監督率いる韓国U-24代表、2019年にU-20W で準優勝した世代も含まれるものの、意外と地味な印象だ。

2019年10月にソウル郊外ファソン市で行われたウズベキスタンとの親善試合2連戦を現地取材したが、観客はいずれも6500人、7300人だった。

試合の開催形式は「10月10日にA代表、11日に五輪代表の試合を連続して同会場で行う」「その後にもう一度、15日に五輪代表の試合を同会場で」という興味深いものだったが、2万3000人台を集めたA代表と比べると、人気と熱気がガクッと下がる印象だった。

2020年1月にタイで行われた東京五輪アジア最終予選兼U-23アジアチャンピオンシップ予選では優勝し、一時は評価を高めた。

しかし、大会直前にトラブルが襲った。オーバーエイジとして大きな期待と注目を集めたソン・フンミンを、監督自らエントリー外に。「今季、出場試合が多すぎた。酷使で比較的早くに引退したパク・チソンの二の舞にはできない」とした。また、守備の要で今大会でのプレーぶりが欧州移籍にも大きな影響を与えると見られたキム・ミンジェ(北京国安)が所属クラブ側の意向により、招集を断念。

また16日に行われた国内での最後のテストマッチ、フランスU-24戦では試合終盤までリードしながら、84分と89分にゴールを許し、逆転負け。しかも相手の決勝ゴールはGKソン・ボムグンが痛恨のトンネルを犯す、という結果だった。

つまり決して流れの良くない中で、日本入りしていたのだ。

試合のライブ中継は100万人以上が視聴

韓国はこの後、予選グループB組の2試合、ルーマニア戦(25日@カシマ)、ホンジュラス戦(28日@横浜)を戦う。

その後にこそ、韓国にとっての大会の関心事が2つある。

準々決勝(決勝トーナメント1回戦)でA組の日本と対戦する可能性がある。双方のそれぞれのグループでの順位が同じになれば対戦しないが、1位と2位というかたちになれば、出会うのだ。

大会前(横断幕問題などが発生する前)から韓国メディアと情報交換してきたが、「東京五輪関連の話題はあまり盛り上がっていないが、サッカーの韓日戦となれば話は別」と言っていた。「吉田麻也が韓国について言及したコメントはないか?」とさえ聞かれた。

もうひとつ、チームには今回も「徴兵免除」というテーマがついて回る。韓国ではオリンピックのメダル以上、アジア大会優勝などの結果を残すと、一般的には約18ヶ月から36ヶ月の徴兵期間が大幅に免除になるのだ。4~5週間の基礎軍事訓練+その後の芸術・体育要員として勤務(実際上、プロスポーツ選手は通常の活動を続けられる)できる恩恵を受けられる。

写真:ロイター/アフロ

これまで、五輪でのサッカー競技での免除対象についての一般認識は「18人のみで、バックアップメンバーおよび試合出場時間がゼロの選手は免除なし」というものだったが、今回は18人発表後にバックアップの4人が正式メンバーに「昇格」した。それゆえ「誰が対象になるか」は、大韓サッカー協会も知らされていないという。韓国兵務庁のみが知るところだ。

徴兵免除ゆえの関心、というのはニュージーランド戦でも感じられた。ニュージーランド戦のウェブ上(NAVER)でのライブ中継の視聴者数が100万人を超えたのだ。自らも徴兵を経験した世の男性たちにとって「若者の運命がどうなる?」という点は強い関心対象なのだ。

サッカー専門誌「ベストイレブン」は3日の記事で選手の徴兵免除に向けたパワーを「免除(ミョンジェ)ロイド」と表現した。少々荒い表現だ。使用禁止薬物(ドーピング)のステロイドと免除を足したもの。それほどに強烈ということ。

監督は「徴兵問題は重要」と認めつつ…

とはいえ、今回のチームはこれを「露骨に狙いに行く」という雰囲気ではない。キム・ハクボム監督は7月3日の最終エントリー発表の会見でこう口にした。

「ロンドン五輪の銅メダル以上の成績を狙う。徴兵免除は重要なことは確かだが、そこにばかりこだわっているとむしろ何も得られないこともありうる。その部分が介入してきすぎると試合で力が発揮できない。成績が良ければ、(徴兵免除は)自然とついてくるだろう」

ニュージーランド戦後、オーバーエイジのファン・ウィジョは「若い選手が自身を失わないようにしたい」と口にした。次戦ではどう立て直してくるだろうか。

韓国男子サッカー代表メンバー

GK

1. ソン・ボムグン(全北現代)

18. アン・ジュンス(釜山アイパーク)

22. アン・チャンギ(水原三星)

DF

2.イ・ユヒョン(全北現代)

3. キム・ジェウ(大邱FC)

4. パク・ジス(金泉尚武FC)*オーバーエイジ

5. チョン・テウク(大邱FC)

12. ソル・ヨンウ(蔚山現代)

13. キム・ジニャ(FCソウル)

MF

6. チョン・スンウォン(大邱FC)

8. イ・ガンイン(バレンシア/スペイン)

10. イ・ドンギョン(蔚山現代)

14. キム・ドンヒョン(江原FC)

15. ウォン・ドゥジェ(蔚山現代)

19. カン・ユンソン(済州ユナイテッド)

20. イ・サンミン(ソウルイーランド)

21. キム・ジンギュ(釜山アイパーク)

FW

7. クォン・チャンフン(水原三星)*オーバーエイジ

9. ソン・ミンギュ(浦項スティーラーズ)

11. イ・ドンジュン(蔚山現代)

16. ファン・ウィジョ(ボルドー/フランス)*オーバーエイジ

17. オム・ウォンサン(光州FC)

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】