韓国の日韓戦”全日程”が終了 くすぶる批判 「ユニに日本国旗問題」ここだけの解説

3月25日の日韓戦@横浜で競り合う両国選手。韓国選手の右胸には日韓両国国旗が(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

韓国にとっての”韓日戦”が先週末の金曜日、4月2日に”全日程終了”となった。

というのも、3月25日に横浜で日本と戦った韓国代表メンバーのうち、国内組の「隔離期間」が2日に解除されたのだ。試合翌日に帰国。その日からパウロ・ベント監督の下、ソウル郊外の韓国代表トレーニングセンターで合同トレーニングを行う形式で隔離が行われていた。

韓国メディアでは「コホート(英: cohort)隔離」と呼ばれる。「集団観察」あるいは「集団隔離」といったところだ。KFA(大韓サッカー協会)は今回の日本戦に際し、韓国政府側とこの点を協議。特例として実施が認められた。26日に帰国後、1週間(2日の昼12時まで)これが行われてきたのだ。

(隔離中にトレーニングを行う韓国代表メンバー/韓国メディア「ニューシス」より)

韓国メディアからの問い合わせ

この影響もあってか、25日の試合後も韓国メディアでも先日の日本戦の話題が続いた。「まだまだ終わっていないな」という印象が強かった。

筆者自身にも韓国の4媒体から問い合わせがあった。うち3媒体は「日本の記者が試合をどう見たか」について聞いてきた。試合のストレートニュースや、韓国側の情報が一通り落ち着いた後、3月30日前後から幾度か電話が鳴った。

もうひとつは「この試合に向け、JFA側が欧州組の所属クラブを訪ねることまでやり、招集に向けての努力をした」という点の事実確認だった。韓国メディアでそういうことを言われているのだという。試合前の準備から「日本の方がやる気だった」という点を言いたかったのだろう。

これは筆者からJFA側に確認を取った。「欧州在住のJFAスタッフが3人いる」「日ごろからクラブ側とコミュニケーションを取っているのは確か」との返答だった。ちなみにKFAにはそういった存在がいないのだという。

日本戦敗戦後の韓国メディアの報道内容

いっぽうで、日本メディアでも多く報じられている通り、韓国メディアではこういった話題が敗戦後に報じられた。

■敗因について。前半のイ・ガンインの0トップ起用。

■試合感覚の落ちていたCBキム・ヨンクォン(今季ガンバ大阪で出場試合なし)、ホン・チョル(ウルサン)らの起用。

■ユニフォームの”胸に日の丸”。

■日本のコロナ対策について。スタンドでの飲食を許可していた点。

(「スターニュース」のみ)

■同じく、座席の間隔を開けていなかった点。

(「スポーツソウル」のみ)

■日本のネットで富安健洋の前歯負傷について「韓国戦ではヘルメットを使え」という表現が話題になっている点。

■KFA会長による日本戦敗戦への謝罪文掲載。

(無気力な90分、と試合を報じた地上波MBC)

ユニフォームに「日本国旗」問題

どれも掘り下げ甲斐のある上記の話だが、ここでは1点を。「韓国代表ユニフォームに日の丸」騒動についてだ。韓国社会の特性を切り取れるテーマでもあるからだ。

3月25日の試合の際、韓国代表の胸には対戦日と両国国旗が付けられていた。しかし日本側には国旗はなし。この点が物議を醸しているのだ。韓国メディアでも「単にユニフォームサプライヤーの方針の違い」とも紹介されているが… A社提供の日本代表は近年ではW杯本選など大きな国際大会に試合日と対戦国の名前が記されるのみだ。いっぽう韓国のN社は親善試合であっても相手国旗までを記す。

この出来事に対する批判は、国内最大のポータルサイト「NAVER」でもっとも韓国の読者の反応が多かった大手紙「東亜日報」の記事でおよその流れが読み取れる。

「韓日戦 サッカー代表チームのユニフォームに日章旗…”慣例”vs "なぜ韓国だけ付ける?”」

記事への反応は、「いいね! 6」「心温まる 4」「悲しい 3」「怒ってます 259」「続きの記事を望みます 3」となっている。

ポイントは3つ。やっぱり「日本の国旗が嫌」という意見も

まず1つ目のポイントは、記事内容がこの国のエリートたる大手紙記者の主張ではなく、韓国でのネット上での論争を取り上げているという点だ。記事の冒頭はこんな内容から始まる。

「韓日代表チームの親善競技で歴史的完敗を喫したベント・コリアに対する批難が強いなか、韓国代表チームのユニフォームに太極旗とともに日章旗が付けられていた事実が知られるや、ネットユーザーのなかで答えのでない議論が繰り広げられている」

2つ目は、日本国旗を胸に付けてスポーツ競技を行う行為は、日本統治時代を連想させるという点。これを忌み嫌う意見だ。

同記事に対する読者コメントのなかで、もっとも他読者の「いいね!」が多かったものにもこの内容が記されている。

「(KFAはユニフォームに相手国の国旗をつけることを義務ではなく)選択だというのなら、次からは相手国の国旗はつけるな。特に日章旗はより嫌だ」

例えばベルギー戦で相手の国旗をつけたとしても、何も問題にならないだろう。

「低姿勢」への批判

3つ目のポイントは、何に怒っているのかについて。この点だ。

「低姿勢」

韓国語では「チョチャセ」という。

日本側は韓国国旗を付けていないのに、なぜわざわざ自分たちだけ日本国旗を付ける? という話だ。上記の東亜日報の記事に関して言えば、見出しの 「"なぜ韓国だけ付ける?”」というくだりに含まれる。

韓国社会では自分たちが周囲に対して「低姿勢が過ぎる」という場合、それが批判の対象になりやすい。日本だと「丁寧」「穏健」「謙虚」という感覚で捉えられそうなものも批判になる。今回の問題も、日本の感覚なら「相手によりリスペクトを示した」という点で終わりそうではないか? 

「低姿勢」とは外交の世界で多く使われる言葉で、主に対中、対北、対日関係の交渉スタンスにおいてこの「低姿勢」が問題視される。儒教思想の影響が日本より強い韓国では、「共同体意識」がより強く意識される。その代表者があまり下手(したて)に出るということは、皆の利益に反する。行くときは強く行け、という考え方だ。今回は「韓国が一方的な優しさを見せたことで、あの忌まわしき日本国旗を胸にプレーする羽目になってるじゃないか」という怒りが巻き起こっているのだ。

近年の韓国サッカー界で対日「低姿勢」が問題となったのは今回が初めてではない。2012年8月10日に起きた、ロンドン五輪男子サッカー3位決定戦後の「竹島プラカード事件」を巡ってのことがあった。

大韓サッカー協会はかなり難しい状況に陥った。「外国から見れば政治的主張」という点は分かっていた。しかし国内的には「絶対に譲歩する姿勢は見せてはならない」。独島=韓国のもの。これは当たり前の話。だから決して詫びる話ではない。それでいて当事者のパク・ジョンウのメダル剥奪の処罰を避けなければならなかった。五輪でのメダル獲得者に与えられる徴兵免除が消滅するばかりではなく、功労者としての年金受給の権利もなくなるからだ。

そういったなか、かつての名プレーヤーでもあるキム・ジュソンKFA事務総長(当時)の「メール問題」が起きた。8月14日、日本メディアが「KFAからJFAへの謝罪メールが届いた」と報道。メールの送り主だったキム事務局長は「日本側にパク・ジョンウの行動が突発的なものだったと説明しただけ」「謝罪ではなく遺憾を示した」と否定したものの、韓国では日本への「低姿勢」と猛批判が巻き起こった。詫びと誤解されるようなことすらするな、と。

日本の観点からは「そんなことで怒るの?」とも思えることだ。今回の「ユニフォームに日本国旗」の件も然りだ。この「低姿勢」をいうキーワードがあれば、少しは理解ができるか。

そして、日本が関連する問題に違いはないが、日本にはどうすることもできない。この点は近年の「徴用工判決」や「慰安婦判決」、「親日派批判」とも共通する部分がある。程度の違いこそあれ。

今回の日韓戦後の韓国メディアからの問い合わせ内容には、当然この「ユニフォームに日本国旗論争」もあった。こう返しておいた。「日本の国旗は日本の国旗なわけで、他に何の意味がある?」。これを記事に書いていてくれれば嬉しいのだが。

さらに「なんだ? 日本に負けたから、ずっと忙しいんだろう?」といったことをツッコむと、「まあ負けたからこそ問題視されている点もある」との答えだった。勝っていれば問題にすらなっていないと。

筆者はこう思う。1つの試合を巡ってここまでああだこうだ言うのは本当に楽しい。あちらにとって負ければ地獄なのだ。それほどに日本についてあれこれと考えまくる対戦国があるだろうか? さすがかつては「ブラジル戦よりも盛り上がる」と言われた”韓日戦”。10年後くらいに「あんな試合もあった」ときっと振り返るのだ。