【輸出規制でWTO提訴再開】韓国メディアはどう報じたのか。「規制のためにコロナ対策協力も進まず」

昨夏の「ホワイト国除外時」のソウル市内での抗議活動時の様子(写真:ロイター/アフロ)

既報の通り、昨夏からの日韓間でのいわゆる「ホワイト国除外」の問題について、韓国側が「WTOへの提訴」手続きを再開することが発表となった。2日午後の韓国政府の産業通商資源省のナ・スンシク貿易投資室長の会見内容によるものだ。

従来日本は韓国を「安全保障上の問題がない国」として、輸出の手続きを簡略化する「ホワイト国」に定めていた。

しかし昨年8月、「輸出管理の体制が脆弱。兵器活用に関する法規がない」となどし、簡略化の優遇処置を解除。半導体材料3品目に続き、化学・金属、輸送関連、精密機器など規制対象品の輸出に個別許可を課した。

これに対する韓国の反発は大きかった。近年、国家全体の年間輸出額の20%を占めてきた半導体事業を揺るがす事態と見られた。材料のうち90%以上を日本からの輸入に依存するものもあったのだ。韓国側は「徴用工関連判決への報復」とみなし、その後の「ボイコット・ジャパン」運動へと繋がった。

そこから10ヶ月以上かけて「輸入管理の状況を改善した」と日本側に通告。5月31日を期限に「ホワイト国除外」の解除を求めていた。

しかし2日の韓国側の主張では「日本側から期待した回答はなし」。よって昨年9月にいったん着手していたWTOによる調停を求める手続きを再開する、というものだ。

このニュースについての韓国メディアの反応を。

「ゴールデンタイム」のポータルサイトのリアルタイム検索でもトップにはならず

各紙ともに「それほど大きく報じてはいない」というところだ。唯一、革新系の「ハンギョレ新聞」が翌3日の社説にて「日本、輸出規制での無意味な『時間稼ぎ』直ちにやめよ」と論じた。

保守系の大手紙「朝中東(チョジュンドン)」と言われる「朝鮮日報」、「中央日報」、「東亜日報」では3日朝刊の社説では触れず。革新系(こちらのほうが強硬な対日姿勢を取る)の「ハンギョレ」は電子版に「強制動員と経済報復」というコーナーまで設けているにもかかわらず、このニュースに関しては短く冒頭の会見内容を伝えたのみ。

また3日の19時以降、ニュースが見られやすい時間にも国内最大手ポータルサイト「NAVER」の「リアルタイム検索コーナー」でも1位になることがなかった。5月7日に始まった元慰安婦関連の新たな疑惑がトップを占めた。

昨日夕方の結果を反映した20時ごろのランキングでは「日本 輸出規制」は5位だった(「NAVER」よりキャプチャ)
昨日夕方の結果を反映した20時ごろのランキングでは「日本 輸出規制」は5位だった(「NAVER」よりキャプチャ)

輸出規制のせいで両国のコロナ対策協力体制も築けず

そういったなか、前述の通り社説でこの件を言及した革新系「京郷新聞」はこう主張した。

「日本は韓国が改善措置を完了したとしても、正常に動作しているかをより見守る態度であることが分かった。相手国の行政システムと執行を信じず、見下す態度だ。傲慢が感じられる。

しかし、日本は、輸出規制が自業自得の結果のみをもたらすことを直視しなければならない。輸出規制以降、韓国は代替輸入経路の開発、政府の国内素材・部品・機器メーカーサポートにより生産に支障をほとんどきたしていない一方、日本の関連企業は売上高が激減した。それでも輸出規制を維持するということは、合理的な判断ではない。

輸出規制というくさびが打ち込まれたせいで、新型コロナ対応のための両国間の協力も思い通りに進まずにいる。しかも韓国は世界的な防疫模範国として評価されているにもかかわらず、日本は韓国人のノービザ入国制限を再延長するなど、狭い態度を捨てずにいる」

また、「中央日報」はこんな見出しを打った。

日”輸出規制撤回要求を黙殺”…韓 "GSOMIA終了再度 検討"

 同日に行われた別の会見、外交部(韓国外務省)の定例ブリーフィングでの「今後の動向によってはGSOMIA終了も慎重に検討していく予定」という内容を紹介。しかし最後のくだりでこうトーンダウンした。「終了は韓日間の葛藤から、韓米間の葛藤に拡大させうるため、今現在は実行の可能性は高くはないという見方が強い。アメリカ政府は昨年8月に韓国政府が日本にGSOMIA終了を通告した当時、公開的に強い憂慮の立場を明らかにした事例がある」。

半導体材料は国内調達が進み、規制の影響は少ない

いっぽうで目立ったのは「損をしているのは日本」という点だ。あくまでここでは韓国側の主張を紹介する。

「朝鮮日報」は「1年間の葛藤の末WTOに」という見出しの記事の後半部分でこう論じた。

「昨年7月、日本の半導体コア材料3種の輸出規制は、(韓国)国内半導体業界に大きな衝撃を与えた。当時、サムスン電子、SKハイニックスなどは、この素材のほとんどを日本企業に依存していた。日本が素材3種の輸出規制に乗り出した半導体業界では、『現在の保有在庫がなくなると、ややもすれば半導体生産が停止しうる』という懸念が大きかった」

しかし実態は違ったという。

「日本の輸出規制は、逆説的に素材の供給の多様化が急速に進むきっかけとなった。サムスン電子とSKハイニックスは、これまで日本企業に依存していた素材を広く分析し、代替材を見つけ出した」

「半導体業界では、今回のWTO提訴が業況に大きな影響を与えることはないものとみなす。パク・ジェグン韓国半導体ディスプレイ技術学会会長(漢陽大教授)は、『韓日関係は不確実性が依然として高いが、政治的な理由で規制を始め、自分たちの会社の万被害を受けた日本が再び韓国半導体に対する規制をかけることは容易ではない』と述べた」

韓国最大の通信社「聯合ニュース」系列のニュース番組、「YTN」では日本特派員からのレポートで同様の内容が伝えられた。

輸出規制は日本政府が決定したものですが、その結果は、日本企業の被害につながっています。

最近「日本経済新聞」は、日本フッ化水素メーカーの一つである「ステラケミファ」が昨年4月から今年3月までに前年比純利益が18%減少したと報道しました。

やはりフッ化水素業者の森田化学工業も韓国販売輸出規制前より30%減少したと伝えました。

韓国企業が素材の国産化などを通じて、日本に依存しない産業構造に変えていく状況を懸念する声が日本の内部でも出てきています。

いっぽう、規制措置により、許可を受けるまでに時間がかかるなどの問題がありますが、輸出自体が最初から中断されたのはありません。

日本政府は、1月の輸出規制以後6ヶ月ぶりにフッ化水素輸出を一部許可するなど、水面下では、緩和の動きを見せてきました。

経済的理由だけを見れば、このような規制を固守する理由がないということです。

しかし、まだこれを解かないのは、この措置が「強制動員賠償判決」に対する報復の性格が色濃いためです。

したがって、日本企業の資産の現金化などの懸案の解決の糸口が出るまでは、突破口を見つけることが容易ではないということが、韓日関係の専門家たちの大筋の分析です。

出典:2日の「聯合ニュース」の報道内容

輸入管理体制は見直した。理由がそこなら「解除せよ」という主張。同時に日本「ホワイト国除外(輸出チェック体制強化)」が韓国経済への影響が少ないのにもかかわらず、コロナ禍の今、この問題を提起してきた。

日本側の回答内容については2日の産業通商資源省の会見時に「その内容を知りたい」という質問が飛んだ。しかし明らかにされたのは「満足のいくものではなかった」という内容のみ。さらにここを掘り下げる質問も出たが、登壇者は「この場では(日本の主張を代弁することは)勘弁を」と答えている。韓国大手メディアが報じる限りでは伝わっている「日本側の主張」は、メディア側の追加取材あるいは推測に基づく「より様子を見守る」という点のみだ。

昨夏からの「ボイコット・ジャパン」運動の大きな引き金となった「ホワイト国除外」。当時、現地で抗議デモを取材していると「かつて独立戦争は出来なかったが、今、経済戦争は出来る」といった強いフレーズが聞かれた。当時と比べると規制による経済のダメージが予想より小さい点、また「米中対立」「米国での暴動」「コロナ禍」など他の話題も多いなか、少し落ち着いているという印象だ。