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パパにとって「おむつ交換」とは何か?

吉田大樹労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表
愛しい我が子から出るうんちはパパに何を教えてくれるのか。(写真:アフロ)

先月、朝日新聞とYahoo!ニュースのコラボ記事で、「男性用トイレにおむつ交換台を」的な内容の記事が出た。

【父親のモヤモヤ】男性用トイレに「#俺のおむつ交換台」、設置要望が問いかけたもの 「母性神話」の壁 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191224-00010000-withnews-soci

そこでオーサーとしてのコメントも書かせていただいたが、おむつ交換台を増やすというハード面の改善はもちろん必要だと思うものの、それがない環境の中でできるようになるスキルも必要なのではないかと思った。

https://news.yahoo.co.jp/profile/author/yoshidahiroki/comments/posts/15773426547121.6a0f.11550/

そこから着眼点をいただき、パパにとってのおむつ交換について書いてみることにした。

子育ては「3歩進めば2歩下がる」

おむつ交換についてではないが、例えば、子どもの寝かしつけでうまくいったと思っても、次の機会に同じ方法でいざ試してみると、まったく寝ようとしないことがある。しかし、その際に簡単にママに投げ出さず、また新たな挑戦だと思って、別な方法を試してみる。それがうまくいくことで、寝かしつけの選択肢が増えたことになる。いや、別の方法でもなかなかうまくいかないことも多々あろう。しかし、数々と思案を形にしながら、そのときの正解を導き出していく、それが子育ての醍醐味なのだ。選択肢が増えたということは、子どもを寝かしつけるスキルがまさに増えたことになる。

もちろん、子どもを強く揺さぶったりするなどして、子どもの生命を脅かすような方法はご法度だが、子育て本の読みすぎもただの頭でっかちを生むことになりかねず、適当に受け入れるくらいでいいのだと思う。信じるか信じないかはあなた次第。本を読んでスキルを得ることもできるだろうが、子育ては1人ひとりカスタマイズしながら実践するもの。安易なマニュアル主義に陥ってはいけない。

子育てスキルには飛び級がない。積み重ねでしかないのだ。そうした「3歩進んで2歩下がる」を繰り返すことによって、子どもが育つと同時に、親自身も育つことになる。

うんちから逃げるな

パパ向けの講演会で、参加したパパたちに「子どものおむつを交換していますか?」と聞くと、8~9割ほどは手を挙げてくれる。場合によっては100%近い。しかし、続いて「うんちも取り換えてますか?」と聞いてみると、その半分近くに減少してしまう。

前者だけ積極的に実践していることをことさらに取り上げて、満足しているパパも多い。

そこで、「うんちを取り換えている」と答えてくれたパパにさらに聞く。「それはどんなうんちでもですか?」と。すると、「いや、硬いうんちのときだけ・・・」と申し訳なさそうな顔をしながら答えてくれる。

都合いいところだけでもうんちを取り換えてくれるのはありがたいと思うママもいるとは思うが、それはあくまでも「ママのため」という基準のもとにおむつ交換をしているからである。その基準をクリアしていればママから何も言われないと思って、ハードルの高いおむつ交換は「自分の仕事」ではないと割り切ってしまっている。そうすると、一向にパパの子育てスキルは向上しない。

では、パパは果たして誰のためにおむつ交換をすべきなのか。それは、当然、目の前のおしりがうんちまみれになっている「子どものため」ではあるが、同時に「パパ自身のため」でもあるのだ。その視点が大事なのだと思う。「ママのため」はその次だ。

立つことができる子どもであれば、おむつをおしり側の背中から覗いた瞬間にどのような状態かを確認できる。コロコロした硬いうんちであればホッとするが、泥の田んぼのような状態のうんちの場合もある。一方で、まだ寝たままの子どもだと、泥うんちの場合、押しつぶされて、量によってはおむつからはみ出てしまい、洋服に漏れ出しているようなこともある。

そうした最悪の事態の場合、家の中であれば、お風呂場へ直行して、シャワーで流してしまうという手法も可能であろう。

しかし、外出先だとどうか。あきらめてママに頼んでしまってはいないだろうか。やはりママが隣にいてしまうとどうしても甘えてしまうパパは依然として多い。

こうした事態をクリアするために、最初はママを手本にしてやり方を覚えることも必要だろうが、育児に関するスキルはときにして、「強引」な手法により習得することも必要なのだと思う。

強引な手法の代表格は、父子だけでのお出かけだ。短時間にしろ、泊まりにしろ、筆者はこれを「父子旅行」として推奨しているが、父子だけであれば、パパはママに頼ることはできなくなる。外出先で見ず知らずのベテランママ(パパでも可だが)に頼むこともできないと思うので、当然、どんなうんちでもパパが自分でおむつを処理しなければならない。

そうした機会を繰り返していけば、自分なりのやり方が次第に見えてくる。冒頭に書いたように、失敗もあるだろうが、失敗から見えてくる傾向と対策をしっかりと押さえていけば、自然とどんなうんちでも恐怖感はなくなってくる。洋服に付いてしまったり、手に付いてしまったりしても、慌てることなく、冷静に対処できるようになるだろう。

ママもそうした事態に遭遇したときは、口出しせずにどうか見守ってほしい。男の子のうんちであればある程度放っておいてもなんとかなる。女の子の場合は拭き方に鉄則があるので、そこは最低限押さえてもらった上で、そっと見守っていただけたらありがたい。

筆者なりにおしりをきれいに拭くスキルは会得しているが、ここで披露するのは逆にパパの子育てをつまらなくしてしまうだろうからあえて言わないことにする。「我が道」のおむつ交換を開発するパパを絶賛応援したい。

パパにとって「おむつ交換」とは

働き方改革は進んでいるが、会社の方針なので仕方なく実践しているパパや、結局持ち帰って仕事をしているパパなど、この改革への理解が十分に浸透していない面もまだまだある。

仕事以外の時間ができたことでまずどこに時間を割けばいいのか。子どもがいるのであれば、子どもと食事をしたり、子どもと一緒にお風呂に入ったり、そして、子どものおむつを取り換えてあげたりすること、だ。

おむつ交換とは果たして何であろうか。これをただの「おむつを交換する」という行為で捉えていないだろうか。

食事をしたら最後はうんちとして排出される。ある意味、生きている証なのだ。子どものうんちを見ていると、何を食べたかが推測できる。母乳やミルク、離乳食であれば、緩いうんちが出やすい。固形の食事になるにしたがって、しっかりとしたうんちが出てくる。コロコロうんちだったものが、長いうんちになったとき、子どもの成長を実感する機会になることだろう。また、便秘気味のときもあり、子どものうんちが出る出ないでヤキモキすることもある。

そんな瞬間に遭遇すればするほど、子育てが実体のない「無形のもの」から実体のある「有形のもの」へと降りてくるのだ。そんな瞬間に立ち会っているパパは、働き方改革とは何であるのかをまさに実感することになるだろう。

ときには、無形のおならもするかもしれないが、そこはご愛敬で。

労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表

1977年7月東京生まれ。2003年3月日本大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。労働専門誌の記者を経て、12年7月から2年間ファザーリング・ジャパン代表。これまで内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚労省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員を歴任。現在、内閣官房「「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会」委員、厚生労働省「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、東京都「子供・子育て会議」委員などを務める。3児のシングルファーザーで、小・中・高のPTA会長を経験し、現在は鴻巣市PTA連合会会長。著書「パパの働き方が社会を変える!」(労働調査会)。

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