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センバツ開幕。過去、松坂以降の優勝投手のうち、プロ野球でもっとも勝っているのはだれ?

楊順行スポーツライター
2016年の村上頌樹は全47イニングを一人で投げ抜いて優勝(写真:岡沢克郎/アフロ)

 小島和哉(ロッテ)と高橋光成(西武)。小島は2013年センバツ、高橋は同年夏の甲子園の優勝投手で、小島は浦和学院(埼玉)の、高橋は前橋育英(群馬)の、それぞれ2年生。この2人は20年7月22日、先発で初対決している。プロ野球で、同年春夏の甲子園優勝投手が投げ合うのはかなりめずらしい。このときは小島が勝利投手になったが、プロの通算成績では、高卒でプロ入りした高橋が65勝で、早稲田大経由の小島の33勝を倍近く離している。

 で、ちょっとセンバツ優勝チームからプロ入りしたエース(もしくは控え)の実績を調べてみた。ただしさかのぼるとキリがないので、1998年、横浜(神奈川)で春夏連覇した松坂大輔(元西武ほか)以降とするが、松坂がプロで残した170勝(NPB114勝メジャー56勝)を超える投手はいると思いますか?

プロでは野手に転向したエースも

 2002年に優勝した報徳学園(兵庫)のエースは大谷智久だった。5試合すべてに完投し、防御率1.40は立派な数字で、早稲田大からトヨタ自動車を経てロッテ入りし、10〜20年で20勝。以下、順に挙げていくと、

2003 広陵(広島) 西村健太朗→巨人(04〜18) 38勝81S 13年に最多セーブ

2004 済美(愛媛) 福井優也→広島(11〜18)楽天(19〜22) 32勝

2005 愛工大名電(愛知) 十亀 剣→西武(12〜22) 53勝3S

※高校時代は二番手。センバツでは1試合、4イニングの登板

2007 常葉菊川(現常葉大菊川・静岡) 田中健二朗→DeNA(08〜22) 14勝1S

2008 沖縄尚学 東浜 巨→ソフトバンク(13〜) 69勝 17年に最多勝

2009 清峰(長崎) 今村 猛→広島(10〜21) 21勝36S

2010 興南(沖縄) 島袋洋奨→ソフトバンク(15〜19) 0勝

2012 大阪桐蔭 藤浪晋太郎→阪神(13〜22)アスレチックス、オリオールズ(23)メッツ(24〜) NPB57勝MLB7勝

2013 浦和学院(埼玉) 小島和哉→ロッテ(19〜) 33勝

2014 龍谷大平安(京都) 高橋奎二→ヤクルト(16〜) 22勝

2015 敦賀気比(福井) 平沼翔太→日本ハム(16〜21)西武(21〜) 

※この年のセンバツでは全試合を完投し、1本塁打も記録するなど、打者としても傑出しておりプロ入り後は野手に転向。ちなみに1学年下の控えが山崎颯一郎(オリックス)だが、優勝したこの大会では一度もマウンドに立っていない。ブルペンでの投球練習で、山崎の投じた変化球が暴投となり、フィールドに入って一時試合が中断したことがある。試合後に「あれから、ブルペンでは変化球投げてないでしょ?」と冷やかすと、人なつこく笑っていた。

2016 智弁学園(奈良) 村上頌樹→阪神(21〜) 10勝 23年に最優秀防御率

2017 大阪桐蔭 徳山壮磨→DeNA(22〜) 0勝 柿木 蓮→日本ハム(19〜) 0勝 根尾 昂→中日(19〜) 0勝 横川 凱→巨人(19〜) 4勝(柿木、根尾、横川は連覇した2018も。当時は三番手だった横川が、NPBでは勝ち星で先行している)

2019 東邦(愛知) 石川昂弥→中日(20〜) ※NPBでは野手

2021 東海大相模(神奈川) 石田隼都→巨人(22〜) 0勝

2022 大阪桐蔭 前田悠伍→ソフトバンク(24〜) 

※この年の前田は2年生。1学年上で前田と並ぶエース格だった川原嗣貴はいま、社会人のHonda鈴鹿所属。高卒2年目とは思えない堂々たる体から、スケールの大きいボールを投げる。ケガがなければ、来年のドラフト上位候補間違いなし。

 NPBでは野手に転向した選手もいるが、単純に数字で比較すれば、69勝の東浜、81セーブの西村が投手としては双璧だろうか。ランキングにするなら、

1東浜 巨 69勝

西村健太朗 38勝81S

3藤浪晋太郎 64勝(NPB+MLB)

4今村 猛 21勝36S

5十亀 剣 53勝

6小島和哉 33勝

7福井優也 32勝

8高橋奎二 22勝

9大谷智久 20勝

10田中健二朗 14勝1S

 むろんこれは現時点のもので、在籍年数が短い村上などは、これからいくらでも勝ち星を伸ばすだろうし、新人の前田も将来が楽しみ。さすがに,松坂の勝ち星を超えるのはなかなか至難だろうけど……よく「高校時代の酷使がたたり、優勝投手はプロでは大成しない」などといわれてきたが、こと春に限っては、それなりの成績を残しているといえそうだ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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