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[2023年の高校野球回顧]山梨学院、史上初の春6勝V。夏107年ぶり制覇の慶応にも史上初が?

楊順行スポーツライター
慶応日吉キャンパス。突き当たりのずっと奥に高校のグラウンドがある(撮影/筆者)

 第95回記念選抜高校野球を制したのは、山梨学院だった。春夏を通じての甲子園で、チームとして初めて2勝を記録したどころか、過去ベスト4が最高だった山梨県勢にとって初の決勝進出から、初めての頂点まで上り詰めた。さらに、例年より4校増の36校が出場したため、開幕試合から登場の山梨学院は、決勝が6試合目。原則として32校出場のセンバツでは、トーナメントを勝ち続ければ5試合で優勝がふつう。ただこれまで、決勝が6試合目だったのは過去に2例あり、1938年の東邦商(現東邦・愛知)が4勝1敗1分けで準優勝、91年に優勝した広陵(広島)は5勝1分け。つまり、6勝してのセンバツ制覇も史上初というわけだ。

 夏。第105回全国高校野球選手権を制した慶応は、なんと107年ぶりという史上最長ブランクの優勝が話題になったが、もうひとつ史上初があった。1916年、全国中等学校優勝野球大会を制したときは慶応普通部で、このときは関東代表として東京からの出場だった。今回は、神奈川代表。学制改革後の49年秋、慶応は東京から現校舎に移転しており、つまり、異なる都県から出場して優勝したわけだ。過去の優勝校にそういった例は皆無で、今後もちょっとなさそうなケースではないか。

 2023年夏は関東のこの両校が春夏連覇したわけだが、東京を含んだ関東の春夏連覇は、過去に6回ある(春、夏の順)。

1971 日大三(東 京)   桐蔭学園(神奈川)

1984 岩 倉(東 京)   取手二(茨城)

2001 常総学院(茨城)   日大三(西東京)

2006 横 浜(神奈川)   早稲田実(西東京)

2011 東海大相模(神奈川) 日大三(西東京)

2013 浦和学院(埼玉)   前橋育英(群馬)

※ほかに1962年には作新学院(栃木)が、1998年には横浜(神奈川)が春夏連覇

 おもしろいのは連覇の前後にも、関東勢が好成績を残していることだ。71年の前年夏を制したのは東海大相模で、72年春は日大桜丘(東京)。つまり70年夏から72年春まで、関東勢が4大会を連続制覇したことになる。73年春の優勝は横浜で、翌74年から76年夏は銚子商(千葉)、習志野(千葉)、桜美林(西東京)で夏を3連覇。70年夏から76年夏の13大会中、実に8大会が関東の優勝だった。もっといえば75年春は東海大相模、76年春は小山(栃木)が準優勝だから、10大会で決勝に進出したわけだ。

横浜の春夏連覇後も強かった関東勢

 98年に横浜が春夏連覇したあとも、関東勢は元気がいい。優勝校を列記すると、

1999夏 桐生第一(群馬)

2000春 東海大相模

2001春 常総学院 夏 日大三

2003夏 常総学院

 01年は前記の春夏連覇で、この間98〜03年夏の12大会で7回優勝だ。99年春は水戸商、03年春は横浜の準優勝もあり、決勝進出確率は12分の9とこれも高率。さらに2年おいた06年には、横浜と早稲田実が春夏を制している。

 11年に連覇した東海大相模と日大三はその前年、日大三はセンバツ、相模は夏にいずれも興南(沖縄)に敗れて悔しい準優勝。両者とも1年後に見事に借りを返し、中1年で13年には浦和学院と前橋育英がそれぞれ初V。するとまたも中1年で15〜17年は東海大相模、作新学院、花咲徳栄(埼玉)が夏を3連覇だ。11〜17年は14大会で7回の優勝。どうです、関東勢が春夏連覇すると、しばらく強さが続くでしょう? 来年のセンバツでは、出場が確実視される作新学院、山梨学院、関東一(東京)あたりに注目だ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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