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[高校野球]さあ、神宮大会。大阪桐蔭、3年連続「秋の日本一」に挑戦

楊順行スポーツライター
撮影/筆者

 11月15日から明治神宮野球大会、いわゆる神宮大会が始まる。大学の部と高校の部があり、高校の部には北海道、東北、関東、東京、東海、北信越、近畿、中国、四国、九州の各秋季地区大会を制した10校が出場。優勝した地区にはいわゆる神宮枠として、来春センバツの出場枠「1」が与えられる。

 センバツが春、選手権が夏の日本一決定戦だとするなら、新チームになっての秋の日本一決定戦だといっていい大会だ。2021、22年に史上初の大会連覇を果たした大阪桐蔭は、今年も近畿を制して出場。3連覇となったら、これはもう大偉業だ。

 そもそもは1970年、明治神宮鎮座50年を記念して行われた奉納野球が始まりで、創設時は大学野球のみだった。もともと24年から43年にかけては、総合競技大会として明治神宮競技大会が14回開催されていた。それには中等学校野球(学制改革前である)も含まれ、6~8校が参加して合計15回(28年の御大典奉祝大会、30年の神宮10周年大会を含む)行われている。さらに51年には、その年の秋季地区大会で優勝したチームを招待し、単発で高等学校野球地区代表大会が開催されている。ちなみに、このときの優勝は東京の日大三(決勝・3対1函館西[北海道])だった。

 また、神宮大会創設2年前の68年には、明治維新100年記念明治神宮野球大会として、大学の部、高校の部、社会人の部が行われている。優勝は、東京の日体荏原(現日体大荏原・決勝は6対5小倉[福岡])。この大会には、三沢(青森)が出場しており、エースは元祖甲子園のアイドル・太田幸司さん。

「1回戦は、翌年のセンバツで優勝する三重を完封。あれが自信になりましたね」

 と聞いたことがあり、それが69年夏、松山商との決勝・伝説的な延長18回引き分け再試合につながっていくわけだ。

 この大会、大学の部では田淵幸一、山本浩二(ともに法政大)、谷沢健一(早稲田大)らの花形選手が出場して大いに盛り上がり、それが大会常設の機運につながった。

かつては交流試合的な色合い

 高校野球が加わったのは、先述のように73年の第4回大会からだ。出場は10チーム。ただし地区によっては、秋季地区大会優勝チームが出てくるとは限らなかった。大会が早く終わった地区からは優勝校が出場していたが、開催時期との兼ね合いにより、地区によっては所属県の持ち回りで県大会の3、4位チームが推薦出場したり。そのため、エキジビション的な色も濃く、位置づけとしてはさほど重要ではなかったといえる。82年からは、出場8校に縮小。北海道・東北、中国・四国からは隔年の出場になり、「あの時期、寒いから行きたくないんよ」と冗談交じりに話す監督もいたくらいだ。

 だが96年には、東北と四国を除く出場8校がすべて地区大会優勝校に。97年は出場8校中地区優勝は7校だったが、この大会で優勝したのが松坂大輔のいた横浜(神奈川)だ。横浜は翌年、春夏連覇を果たすことになるのだが、このときの松坂の存在が、大会の注目度を大きく高めたといってもいいのではないか。

 98年は再度8校すべてが優勝校になると、99年には10校出場(うち9校が地区大会優勝校)が復活。2000年からは、秋季地区大会優勝10チームの出場が明文化された。これで名実ともに、秋の日本一決定戦にふさわしくなり、02年からは神宮枠が設けられている。

 昭和天皇の病状が悪化した88年、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため20年は開催が見送られたが、大会回数にはカウントしており、開催された48大会で最多優勝は東北(宮城)の4回。この大会と翌春のセンバツを連覇したのは83〜84年の岩倉(東京)、97~98年の横浜(神奈川)、01〜02年の報徳学園(兵庫)、21〜22年の大阪桐蔭があり、横浜は甲子園春夏連覇、さらに国体まで同一チームで制した。神宮枠の創設後、地区別の優勝回数は東海が5回でトップ。以下は東北・四国・近畿が各3回、九州・北海道各2、関東・東京各1で、北信越と中国地区のチームは、まだ枠増の恩恵にあずかっていない。

 大阪桐蔭が連覇した21、22年、決勝の相手はともに広陵(広島)。その広陵も今回出場しており、大阪桐蔭とは決勝まで当たらない組み合わせだ。もし3年連続同じ決勝になったりしたら、これはもう劇画の世界だな。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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