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オリックス・ドラフト5位/髙島泰都[王子]は準硬式出身

楊順行スポーツライター
(写真:イメージマート)

「今季の目玉です」

 2月のキャンプ取材に行ったとき。愛知の享栄高時代、同学年のイチローと並ぶ好打者と評判だった王子・湯浅貴博監督のイチオシが、2年目の髙島泰都だった。

 滝川西高では、2017年夏の甲子園を経験している。だが、二番手。仙台育英高(宮城)との初戦は141キロをマークしたが、1回3分の2を5失点とさんざんだった。明大では準硬式に転じ、2年時の大学選手権でベスト4に進出。2学年上には、花巻東高(岩手)でやはり甲子園を経験した千田京平主将がいて、

「オマエなら社会人でも通用するんじゃないか」

 意識していなかった社会人野球が視野に入ってきたのはそこからだ。準硬式の縁でつながったのは、王子OBの川口盛外・前マネージャー。早大では準硬式でプレーした川口さんは、王子製紙(当時)を経て広島に入団しており、王子の練習に参加させてもらったのは3年時だ。

「入社当時は、なかなか硬式球に慣れませんでした」と高島はいうが、4月の静岡大会、日本製鉄鹿島戦でリリーフし、3回を無失点。「通用するな、という手応えはありました」

 それが通用するどころか、2022年の公式戦では先発、救援でチーム一のイニングを任される。秋の日本選手権予選では、エースとして予選突破に貢献。本戦でも2試合に先発し、1勝を記録した。

空振りを取れるチェンジアップ

 準硬式の実戦は、金属バットを使用する。バットに当てられたら痛打のリスクがあり、つまりエースには、空振りの取れる球種が求められる。高島の場合「緩急と奥行きを使う」ことを追求し、そのための武器がチェンジアップ。この得意球が、社会人でも思いのほか有効だった。

 さらに湯浅監督が「投げたがりのハングリーさがある」というように、長く王子で大黒柱を務める近藤均を「打者との駆け引きは、間の取り方は」と、質問攻めに。投球術にも磨きがかかる。また一般的に硬球では、準硬式よりスピードが2〜3キロアップするといわれており、実際高島も、スピードの伸びを実感しているようだ。

 今季も、湯浅監督の宣言どおり都市対抗東海2次予選などでフル回転。東京ドームでも、北海道ガスとの初戦に先発して7回を無失点にまとめチーム5大会ぶりの白星をもたらした。いつか対戦してみたいのが、「(三菱重工)Westの、竹田祐です」。竹田といえば明大の同期で「硬式」野球部のエース。もし竹田との投げ合いが実現すれば、硬式・準硬式エースの対決として大きな話題になるだろう。

たかしま・たいと○1999年12月3日生まれ○投手○右投右打○北海道出身○滝川二高—明治大○180センチ77キロ

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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