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[高校野球・センバツ]どんな選考でも不満はありましょうが、招待試合ですから……

楊順行スポーツライター
10年前、2013年のセンバツ優勝投手、わかります? 答えは本文末尾(写真:アフロ)

 27日の選考委員会で、第95回記念選抜高校野球大会の出場校が決まる。記念大会とあって、出場は例年より4校多い36校。昨年は、秋の成績からは選ばれて当然のチームが落選して物議をかもしたが、さて今年の出場校は?

 昨年の選考を振り返ると、2枠が与えられた東海地区の2校目に、地区大会準優勝の聖隷クリストファー(静岡)ではなく、同4強の大垣日大(岐阜)が選出。これに対して、日本高野連には「なぜ?」という声が多数寄せられたという。なにしろ、東海大会の優勝校、準優勝校が選出されなかったのは、1978年の第50大会以来44年ぶりで、あまりにも不可解……というわけだ。

 主催者のひとつ・毎日新聞社は、2月4日の紙面でこんな説明をしている(一部を抜粋)。

『大会要項の「出場校選考基準」は

(1)校風、品位、技能とも高校野球にふさわしいもので、各都道府県高野連から推薦された候補校の中から地域的な面も加味して選出する

(2)技能については新チーム結成後よりアウトオブシーズンに入るまでの試合成績、実力などを勘案するが、勝敗のみにこだわらず試合内容などを参考とする

(3)秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない

 ――などと定めています』

 つまり、大垣日大が選ばれたのは、どうとでも解釈できる(1)はともかく、(2)(3)が根拠だと考えていいだろう。

 かなりの物議をかもした昨年の選考だが、過去にもサプライズはあった。たとえば2000年のセンバツでは、智弁和歌山が準優勝したのだが、前年秋の近畿大会では、東洋大姫路(兵庫)に初戦負けしている。にもかかわらず、1回戦を勝利して近畿8強だった高田商(奈良)ではなく、智弁和歌山の高い潜在能力が選考委員会で評価されて出場したのだ。実際このときの智弁は、センバツの準優勝ばかりか、夏の甲子園では頂点に立ったから、選考委員は鼻高々だっただろう。

 あるいは03年の北信越なら、2校目に選ばれたのが福井。藤井宏海という、のちにプロ入りする好投手はいたが、秋の北信越ではベスト8に過ぎない。それが、ベスト4の長野工、氷見(富山)だけならまだしも、準優勝の福井商をさしおいて出場するのだから、昨年の東海地区以上の"2階級特進"だった。これらは事実上はともかく、前年秋の大会の成績があくまで「参考」だからこその選考だといえる。

「インビテーションですから」

「選ばれなかったとしても、インビテーションですからね」

 かつて、選考委員会前に取材に行ったあるチームの監督はそういった。そう。ウィキペディアによると、センバツの英文表記はNational High School Baseball Invitational Tournamentで、つまり招待試合なのだ。すべては主催者の一存である以上、当落線上にあるチームや関係者が「招かれなかった」ことに文句をいうのはお門違いである。

 たとえば、招待試合なら主観の入り込む余地が大ありで、戦後の1951年まで、北海道や東北から「招かれた」のは、38年の北海中ただ1校。当時の練習環境では、寒冷地では春先まで練習がままならず、ほかの地区との格差が大きかった、という理由だと思われる。

 ともあれ日本高野連は昨年、聖隷クリストファー騒動を受けてセンバツ改革検討委員会を設置し、選抜大会の理念を明示した「大会綱領」と、出場校の選考過程を初めて明文化した「選考ガイドライン」を発表している。まあこれも、前述の(1)〜(3)をより詳しくしただけで、客観性を担保するものではないのだけど……最後に、選考される36校の内訳を記しておくと、

【一般選考枠】

北 海 道……1

東   北……3

関東・東京……7

東   海……3

北 信 越……2

近   畿……7(神宮大会枠1を含む)

中国・四国……6

九   州……4

21世紀枠……3

 さて、今年の選考はどうなりますか。昨年の騒動があっただけに、サプライズのない穏当な顔ぶれだと思いますけどね。

(写真は、当時浦和学院の小島和哉[現ロッテ])

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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