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[社会人野球日本選手権]Honda熊本に惜敗も、4年ぶり二大大会出場のSUBARUが復活気配

楊順行スポーツライター
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 社会人野球の第47回日本選手権。1回戦最後の第6日第1試合は、昨年の都市対抗準優勝のHonda熊本と、二大大会は2018年の都市対抗以来4年ぶり、現社名になってから初めての日本選手権だったSUBARUとの対戦だ。

 2対2の同点で迎えた9回、Honda熊本は1死一、三塁のチャンスに、ここまで4安打2打点の稲垣翔太が打席に入る。フルカウントからの手塚周の6球目。チェンジアップがショートバウンドし、ワイルドピッチとなる間に三塁から代走の江崎大介がホームイン。今大会初のサヨナラ勝ちとなった。

 敗れたSUBARUだが、「3年続けて両ドームを逃し、まさに背水の陣」(冨村優樹監督)で迎えた今季も、都市対抗には出場できなかった。この大会の切符は、JFE東日本との関東最終予選を制し、なんとかもぎ取ったのだ。その試合で9回1失点と好投したのが左腕の阿部博光だった。

 阿部はこの日も先発して7回途中まで好投し、8回1死三塁のピンチで救援した手塚も、ピンチを無失点で切り抜けるなど、投手陣は合格点だといえる。惜しまれるのは内野守備のちょっとした乱れと、ここぞの場面で出なかった1本だ。打線のてこ入れに、かつての主砲・林稔幸をコーチとしてチームに呼び戻し、日立市長杯では準優勝するなど、ある程度成果は出ている。だが、スタメン中5人を占めた3年目までの若手は、これが初めてのドーム。そういう場数の足りなさも、多少は響いたか。

SUBARUでは記録男・阿部が好投

 その点4年目の阿部、3年目の手塚は、どちらも補強選手として都市対抗の東京ドームを経験している。阿部などは、日立製作所に補強された2021年の都市対抗では、東邦ガスとの2回戦に先発すると、初回の先頭打者から3回、先頭のまで7者連続三振という大会タイ記録を達成している。次打者に初球をセカンドゴロされ、新記録はならなかったが、東洋大の大先輩・松沼博久(元西武)さんに並ぶ記録。

「記録は知っていたので、7個目だけは狙って取りに行きました。初めての東京ドームは緊張もあったんですが、1回戦のブルペンでだいぶ慣れていて、試合前から調子はよかったんです」と語っていたものだ。

 スクリューボールと、コントロールに自信を持つ。大学時代は甲斐野央(現ソフトバンク)ら左右の速球派がゴロゴロいたから、アピールするには制球を磨くのが近道だったのだ。また、補強先の日立のエース・岡直人は、同じ技巧派左腕で、身長も同じ。「左打者のインコースに投げるときのイメージなど、いろんなことを聞きました」。岡の武器はカットボールで、阿部の得意なスクリューとは逆の軌道だから、お互いに教え合ってもいる。まあ、モノにするのはなかなかむずかしかったらしいけど。

 1年目にチームは都市対抗に出場したものの、自身は左ヒジじん帯部分断裂で離脱していたから、この日本選手権が自チームでは初めての二大大会だった。相手のHonda熊本は、昨年の都市対抗2試合で8本塁打した強力打線が売り物だから、7回途中6安打2失点(自責1)は、評価できるのではないか。

 そういえば……今シーズン前の取材。体が硬いのが悩みで、ヨガに取り組みたいが「(チームのある群馬県)太田には、女性専用しかなくて……」と話していたっけ。どこかいいところは見つかっただろうか。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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