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[秋の高校野球]北信越の決勝は福井の師弟対決。しかも、どちらもオリックスに縁がある?

楊順行スポーツライター
センバツ出場が有力な北陸のユニフォーム。阪急ブレーブスに似ている(写真/筆者)

 各地で来春のセンバツ出場を目ざす秋季地区大会がたけなわ。北信越では、敦賀気比と北陸が決勝に進出。悪天候が予想された決勝は順延となったが、福井からのアベック出場が見えてきた。

「甲子園経験者が、まったく機能しない。自分の結果しか求めていないのか……」

 前週にベスト4進出を決めたものの、敦賀気比・東哲平監督はご機嫌ナナメだった。というのも濱野孝教、友田泰成、高見澤郁魅と、春夏の甲子園を経験した主軸が不振。松本国際(長野)との初戦は3人でわずか1安打、中越(新潟)との準々決勝などは4点を先行され、最大5点を終盤、敵失などに乗じてようやくひっくり返すヒヤヒヤの試合展開だったのだ。

「死に物狂いでやれ、とえらく怒られました」

 とは、主将も務める濱野だ。

「県大会ではいい調子で、なんとかなるだろうと考えていたら甘かった。こんなはずじゃない、打てるはず……初球から行くのが自分の持ち味なのに、知らず知らず消極的になって見逃し三振とか。それが打線全体に悪影響を与えてしまいました」

 だが中越戦では、濱野1安打、友田2安打、高見澤3安打と復調の兆しもあったようだ。

「簡単に打ち上げるのではなく、つなぐ意識で強いゴロを打つことができていた。それが、相手の焦り、エラーも誘ったと思います」(濱野)

 松商学園(長野)との準決勝では、福井県大会16回で1失点だったエース辻晶太が8安打を浴びながら完封。「味方のミスもありましたが、しっかり抑えてくれました」と、東監督のいらだちも少しはおさまったようだ。いま、日本シリーズを戦っているオリックスの主砲・吉田正尚、大型右腕・山崎颯一郎は同校のOB。そして……決勝で対戦する北陸の指揮官も、気比OBの一人である。

4連敗中の母校との決勝に挑む北陸・林監督

「母校との対戦はいつも、むちゃくちゃ楽しみなんです」

 林孝臣監督。今季限りで引退した西武・内海哲也と同期で、主将を務めた。1999年の秋は北信越を制し、翌春センバツの出場も決めたが、不祥事により辞退するという悔しい思いもしている。

 立正大を経て民間企業で働いているとき、2学年上の東哲平監督に「どうや、一緒に母校でやらんか」と声をかけられ、2019年まで10年間コーチを務めた。そしてその年夏の甲子園後、誘いのあった北陸の監督に。ライバル校であるが、東監督は温かく送り出してくれた。そもそも東監督自身、01年から北陸の監督を務めた経歴があるのだ。

 その母校、そして高校球界に誘ってくれた師との決勝対決だから、「むちゃくちゃ楽しみ」なのもわかる。過去、北陸の監督になってすぐの19年秋を皮切りに、この夏の決勝まで4回対戦し、4連敗。

「とくにこの夏は、甲子園まであと一歩というところで負けて、私自身折れそうでした」

 とは林監督だが、福井商との準決勝は、夏の決勝でも先発した友廣陸が3失点の粘投。この秋、県の準決勝で大敗した借りを返している。これで北陸は、89年以来のセンバツ出場が有力となり、

「いまの2年生は、私が監督になって入学してきた初めての年代。"親代わりだと思ってくれ"と接してきましたが、ここまできてくれたことは一番の親孝行です」

 就任して、ユニフォームを新しくした。

「学校が、なにをしてもいいといってくれたので(笑)。県内には、赤(を基調としたユニフォーム)のチームがなかったし、強かった時代の阪急ブレーブスにあやかりたい、と。去年、阪急の流れを汲むオリックスが先に優勝しましたが……」

 確かに、オールドファンなら阪急を思い起こすユニフォーム。それをいうなら、胸の「Hokuriku」の書体はかつての南海ホークスみたいだけどね。

 さてさて。師弟対決、そしてオリックスと縁のある両チームの決勝はどうなりますか。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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