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センバツ組み合わせ決定! 新2年生四天王を見逃すな

楊順行スポーツライター
2018年、根尾昂らを擁して大阪桐蔭が優勝した瞬間(写真:アフロ)

 第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕)の組み合わせが決まった。昨秋の明治神宮大会で優勝し、今大会でも優勝候補の最右翼の大阪桐蔭は、大トリ・第6日第1試合、1回戦最後に登場する。

 優勝争いももちろんだが、なんといっても注目は、大阪桐蔭のエース・前田悠伍を含む1年生(大会時は新2年生)四天王だ。そのうち3人は、いずれも一塁手で左打ちの大型スラッガー。佐々木麟太郎(花巻東・岩手)、真鍋慧(広陵・広島)、佐倉侠史朗(九州国際大付・福岡)がその顔ぶれだ。

 思い起こすと17年のセンバツでは、清宮幸太郎(当時早稲田実・東京、現日本ハム)と安田尚憲(履正社・大阪、現ロッテ)という2人の左打ちの大物が大会にそろって出場していた(現在、その世代の出世頭ともいえる村上宗隆[九州学院・熊本、現ヤクルト]は出ていない)。清宮の早実と安田の履正社は、前年秋の神宮大会決勝で対戦し、その試合では2人ともホームランを打っている。

神宮大会で3人そろい踏みのスター性

 佐々木、真鍋、佐倉の3人も、昨秋の神宮大会に出場した。そして実は、3チームとも出場した準決勝の同じ日に、3人とも強烈なアーチを架けた。しかも当時まだ1年生。なにやら、今後の華やかな競演を予感させてくれたものだ。

 登場順に見ていこう。まず、第1日第3試合では、佐倉の九州国際大付が初出場のクラーク記念国際(北海道)と対戦する。九州国際大付は、昨秋の九州大会4試合で43得点した強力打線が売り。1800グラムの超重量バットを振り込む日常がその土台にあるが、182センチ104キロの佐倉は、上級生が四苦八苦するその重さを軽々と扱う。

 重心を低くしてバットを高く構えるフォームは、西武・森友哉ばりで、神宮大会・大阪桐蔭との準決勝では、四天王の一角・前田から2回に先制のホームランを放っている。これが高校通算8号で、秋の公式戦だけで5本というから、本番に強いのだろう。

 そして第2日第1試合は、広陵と敦賀気比(福井)、いずれもセンバツ優勝経験のある両校の激突だ。広陵の真鍋は、中井哲之監督によると、「見てきたなかで、スイングスピードは歴代ナンバーワン」。ニックネームをつけるのが好きな同監督が入学直後に命名したのが「ボンズ」だ。むろん、メジャー歴代最多762本塁打のバリー・ボンズにあやかったもの。真鍋はいう。

「中学時代から、水の重みを利用したトレーニング器具などでパワーをつけました。スイングスピードは150キロくらいです」

 スイングスピードの高校生平均は120キロ前後というから、これはべらぼうな数字だ。昨夏の広島大会から定位置をつかみ、3試合で打率.273、1本塁打。秋の公式戦では打率.453、1本塁打と成長が著しい。神宮大会・花巻東戦で放ったホームランが10本目と、佐々木とはまだ差があるが、「(一大会6本塁打の記録を達成した広陵OBの)中村奨成(現広島)のように、大舞台に強くなれば」(中井監督)、ハイペースで佐々木を追撃するかもしれない。そして九州国際大付と広陵は、勝ち上がれば2回戦で対戦することになる。佐倉と真鍋のスラッガー対決が見られるかもしれない。

大谷翔平をしのぐホームラン量産

 佐々木の花巻東は、第5日第1試合で市和歌山と対戦。麟太郎は、勝海舟(幼名・麟太郎)が好きな社会科教諭の父・佐々木洋監督の命名である。父の率いる花巻東に進むと、早くも春季大会から出場し、平舘との2回戦で1イニングに2本の3ラン、準々決勝と決勝ではソロと、大会最多の4本塁打をマークした。決勝で敗れた夏の岩手大会でも2本塁打。新チームになると、優勝した秋季東北大会では三番として打率・385、1HR、4打点。秋の日本一決定戦・明治神宮大会でも、国学院久我山(東京)との開幕戦の初回、いきなりの弾丸ライナーを右翼席にぶち込んだ。

 これが、高校通算48号(現在は50号)。先輩・大谷翔平(現エンゼルス)は、高校時代に56本塁打したが、それをはるかにしのぐ超ハイペースだ。ちなみに、夏までの背番号17は、下級生時に大谷がつけていたのと同じなのだとか。これもちなみに、威圧感あふれるスイングは中学時代、大谷の父・徹さんが監督を務める金ヶ崎シニア時代に築いたもの。結局佐々木は、神宮大会3試合で10打数6安打2HR、しかも9打点と大暴れを見せ、公式戦合計14試合で打率.435、6本塁打を記録している。

 昨年12月には、両肩のしびれなどの原因となる胸郭出口症候群の手術を受けた。もしこの故障がなければ、大谷のように二刀流に挑戦のプランもあった。2月下旬には、「なんとか、バットを振り始められるようになってきた。センバツまでに状態を戻したいです。『花巻から日本一』の目標を達成するために、三番打者の仕事をしたい」と意気込む。

 そして、第6日第1試合で鳴門(徳島)と対戦するのが大阪桐蔭だ。実質エースの前田は、入学してすぐに活躍した打者の3人とは異なり、ベンチ入りしたのは昨秋からだ。西谷浩一監督によると、「夏も使えるレベルにはありましたが、秋に備えさせようと、3年生相手のシート打撃などで力をつけさせた」ためだ。まあ、人材の宝庫である同校では、体のできていないうちに無理に投げさせる必要もない。

 手元で伸びるストレートは、最速145キロ。しかも、右打者の内角にきっちり投げ込むから、チェンジアップなど外への変化球がより生きる。

 特筆は、観察眼と修正能力だ。履正社との秋の大阪大会準決勝では、「左打者が多いので、左の内にしっかり投げきれるように」事前に準備し、最大のライバルに3失点完投。近畿大会準決勝の天理(奈良)戦では、「低め(のジャッジ)が少し辛いと感じたので、内と外をしっかり使って攻めるように意識」して7回1失点完投だ。

 秋のシーズンは、11試合57回3分の2を投げて自責5と、防御率は驚異の0.78。四死球も1試合あたり2個強と自ら崩れることがなく、西谷監督曰く「1年生でこれだけ安心して見られることはなかなかない」。神宮大会では佐倉に一発を浴び、広陵の真鍋にもヒットを許したが、今大会で対戦があればむろんやり返すつもりだろう。そしてその前に……花巻東と大阪桐蔭は、勝ち上がれば準々決勝で激突することになる。

 180センチ、77キロと細身の前田以外は、佐々木183センチ117キロ、真鍋189センチ89キロ、佐倉183センチ106キロと、ビッグ3と呼ぶのがふさわしい。センバツでのアーチ競演はあるのか、そして前田との対決は……ちなみに、センバツの一大会最多本塁打は、過去10人が達成している3本である。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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