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[高校野球]21世紀枠の9校発表。大嶺祐太のいたあのチームは、推薦を辞退しながら一般選考された。

楊順行スポーツライター
(写真:岡沢克郎/アフロ)

 来春に開催される、第94回選抜高校野球大会(3月18日〜)。各地区の21世紀枠候補9校が発表された。1月28日の選考委員会で、このなかから3校が選ばれる。9校すべてが公立で、うち8校が初めての候補となった。

 豪雪地帯にあり、全校生徒が87人の只見(福島)や、群馬県内屈指の進学校・県太田などフレッシュな顔ぶれ。この2校のほか相可(三重)、倉吉総合産(鳥取)は県としての21世紀枠出場がなく、選ばれれば初めてのことになる。

 そもそも21世紀枠とは、2001年に21世紀が始まったのにちなみ、センバツに新設された出場枠だ。大会を主催する毎日新聞によると、

「勝敗にこだわらず多角的に出場校を選ぶセンバツ大会の特性を生かし、技能だけではなく高校野球の模範的な姿を実践している学校を以下の基準に沿って選ぶ。

・少数部員、施設面のハンディ、自然災害など困難な環境の克服

・学業と部活動の両立

・近年の試合成績が良好ながら、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない

・創意工夫した練習で成果を上げている

・校内、地域での活動が他の生徒や他校、地域に好影響を与えている」

 など。つまりは、新チームの大会での成績が重視される一般選考とはまた別、というわけだ。各都道府県を勝ち抜いて代表になるのが夏の選手権なら、ひと味違う独自性を打ち出している。

21世紀枠のあとに自力で出場したのは……

 選考過程はまず、各都道府県の高野連が1校を推薦する。ただし、これを受けるには一定水準の成績が必要だ。参加校数が128校を上回る都道府県では秋季大会ベスト32(12年まではベスト16)、それ以外の県ではベスト16(12年まではベスト8)以上。仮に力量を度外視してチームを選び、もし甲子園で強豪と対戦するとなったら、試合にならないかもしれないからだ。

 そして、その推薦校から絞られたのが今回の9校である。選抜選考委員会では、このうち東日本と西日本1校ずつ、さらに地域を問わずもう1校の3校を選出する(07年までは2校、13年は85回記念大会で4校)。

 かりに21世紀枠で選出されなかった高校でも、一般選考枠で選出対象となる。厳密にはちょっと異なるが、06年、沖縄の推薦校となった八重山商工はこれを辞退しながら、前年秋の九州大会準優勝が評価され、一般枠で出場した。今シーズンまでロッテでプレーした、大嶺祐太が3年生のときだ。

 この21世紀枠、出場校の固定化を避ける意味もあって、「出場から、より遠ざかっている学校」が優先して選出されることもある。いまは全国的に私学が優勢だから、選出されるのは公立高校が圧倒的に多い。私立では、13年の土佐(高知)が初めてだった。

 また、地域による偏りも大きく、北海道や島根からは4回選出されているかと思えば、前述の4県など、未出場の府県も15ある。21年のセンバツ終了時点で、21世紀枠の初戦の成績は14勝41敗(21世紀枠同士の対戦2試合を含む)で、通算では20勝55敗。最高成績は01年宜野座(沖縄)、09年利府(宮城)のベスト4だ。

 付け加えると過去、21世紀枠で出場したあとに、自力で春夏どちらかの甲子園に出場したチームは鵡川、帯広農(北海道)、山形中央、利府、彦根東(滋賀)、土佐(高知)、宜野座の7校。宜野座は01年、初の21世紀枠で出場すると、その夏にも代表となっている唯一のチームで、もともと力があったのだなぁ。来春のセンバツでは、14年に21世紀枠で出場した大島(鹿児島)が、一般枠で選出されることが確実視されている。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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