秋季北信越大会では、敦賀気比(福井)と星稜(石川)の両雄が秋は初めて決勝で対戦し、敦賀気比が優勝した。

 夏の甲子園に出場した気比はベスト8まで進み、敗退した準々決勝は8月26日だったから、当然新チームのスタートは遅くなる。秋季福井大会の初戦は、9月16日。コロナ禍で、「練習試合もほとんどできず、公式戦までたった1試合でした」(東哲平監督)。つまり、公式戦で実戦経験を積みながらのチームづくりだったわけだ。

 たとえばこの夏の福井大会の出場は30、秋は27チームと福井の加盟校は少なく、全国でも下から数えたほうが早い。それでも、知る人ぞ知るかなりの激戦区だ。

 過去10年の春夏の甲子園出場校だけを見ても、気比のほか古豪・福井商、福井工大福井、坂井(旧春江工含む)、北陸、啓新……。さかのぼれば敦賀、武生、若狭といった公立校にも甲子園経験があり、組み合わせ次第では初戦から強豪が対戦することも十分ありうる。他県出身で、福井で指導するある監督などは、

「うちの県だったら失礼ながら、初戦の相手とは力の差がある。だけど福井は、校数は少なくてもどこも力があるから、最初から気を抜けないんですよ。ときには初戦から、他県でいえばベスト8決めくらいのレベルです」

 そういう県だから、戦いながらのチームづくりだった気比にとって、秋の大会は甘くはなかった。事実準決勝で啓新に敗れ、2019年の夏から続いていた県内の連勝記録は29でストップ。3位決定戦でなんとか丹生に勝利し、辛うじて手に入れた北信越切符だった。明治神宮大会では、初戦で大阪桐蔭と激突する。

大阪桐蔭OB監督、秋の福井を制す

 優勝したのは、福井工大福井。県大会5試合で58得点に対し、守ってはなんと無失点という圧倒的な強さだった。率いるのは、20年9月に就任した白水健太監督。12年、藤浪晋太郎(阪神)、1学年下の森友哉(西武)らとともに甲子園で春夏連覇した大阪桐蔭の、主力メンバーだった。のち同志社大、独立リーグでプレーしたあと、18年から同校のコーチに。やはり大阪桐蔭で長くコーチを務めた、前任の田中公隆氏に誘われたのだ。そのあとを受けての、青年監督の誕生だ。

「もう一度、春夏連覇のような瞬間を味わいたい。大学時代から指導者を夢見ていたので、次は子どもたちと一緒に」

 という白水監督、就任から1年で福井を制したことになる。優勝候補とも呼ばれた北信越では、残念ながら1回戦で敗れたが、「毎日毎日が勝負。選手と一緒に成長したい」と、甲子園で勝てるチームを目ざすことには変わりない。

 県内屈指の強豪校の福井工大福井。センバツは17年、夏の甲子園は12年の出場が最後だ。復活を託されたプレッシャーにも、「高校のときも勝って当たり前というプレッシャーを力にしてきましたから」と白水監督は語っている。

 学校の歴史自体が比較的新しいからか、高校野球指導に携わる大阪桐蔭OBはさほど多くないようだ。だが近年、プロ野球はもちろん大学野球でもOBの活躍が目立つから、数年後には白水監督に続く指導者が増えてくるのではないか。

 福井ではほかにも、栗原陵矢(ソフトバンク)のいた春江工で13年センバツに出場した川村忠義監督がいまは母校・福井商を率い、19年秋に北陸の監督に就任したのは、気比OBで母校のコーチも務めた林孝臣氏と、実績のある指導者が多士済々。群雄割拠の来年の夏を勝ち抜くのはどこ? というのは、ちょっと気が早いか。