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[ドラフト候補カタログ] 155キロの強いストレートが魅力 小孫竜二(鷺宮製作所)

楊順行スポーツライター
(写真:rei125/イメージマート)

 最速は155キロに達した。

 都市対抗東京都2次予選で、敗者復活戦に回った鷺宮製作所。明治安田生命との第4代表決定トーナメント初戦、先発は小孫竜二だった。

 どちらも、負けたら東京ドームへの道が断たれる一戦。2回2死一塁の場面で小孫が福岡高輝に投じた1球は、155キロを計測した。アドレナリンの分泌が高まったか、自己最速をなんと3キロも上回る数字だ。

 だが0行進が続く緊迫のなか、小孫は5回に犠飛で1点を失い、結局これが決勝点。5回を5安打1失点と踏ん張りながら、鷺宮製作所は0対1で敗れ、都市対抗への連続出場は3で途切れることになる。

「ピンチでの投球の精度を高め、余裕を持てるようになりたい」

 小孫は、そううめいた。

 石川・遊学館高時代から評判のピッチャーだった。2015年夏には、石川大会決勝で金沢高を7安打7三振で完封して甲子園に出場。最速は145キロを超え、変化球も多彩だった。甲子園でも、九州学院高(熊本)との初戦に17の内野ゴロを打たせて3失点完投勝利と、卓越した投球術も見せている。ただ、次の東海大相模高(神奈川)戦では146キロをマークしながら4回途中6失点で、

「ボロ負けでした。苦い思い出です」

 と振り返る。

アバウトでもいい、と開き直れば

 大きく成長したのは、創価大時代だ。1年春から先発2番手として3試合に起用されて2勝し、2年春には3勝、防御率1.83。エース・杉山晃基(現ヤクルト)に次ぐ先発に定着した。3年秋には5勝をマークし、投球回数を上回る67三振……と、4年間で通算17勝を記録している。Maxは152キロで、スライダーもキレるとなると当然、社会人でも1年目から期待が大きかった。

 だが、たとえば都市対抗の東京2次予選では計5回6失点。厳しいコースを狙いすぎて四球を出し、苦しいカウントから甘くなれば痛打された。2回戦に進んだ東京ドーム本番では出番がなく、マウンドに立ったのは野口亮太と平川裕太の二枚看板だけ。

 これには、今季から主将になった土谷恵介ならずとも、「持っている力の半分も出していない」ともどかしさがあった。小孫はいう。

「1年目は、年間通して取り組み、考え方の未熟さを痛感しました」

 だから2年目は、意識から変えた。すべてのボールを厳しいコースに投げ込みたいあまり、むしろ「腕が縮こまっていた。ボールから入ってしまうと、"やばい、どうしよう"となるんです。もともとフォアボールは多いほうなので(笑)、多少アバウトでもいいと、開き直れるようにしていきたい」

 走り込みとトレーニングで強化に努めた今季、都市対抗予選では13回弱を投げて8四死球とまだボールは暴れるが、最速を更新したように球の強さに成果が現れている。ドラフトに関しては「待つだけなので」。指名を待つ。

こまご・りゅうじ●遊学館高→創価大→鷺宮製作所●179cm85kg●右投右打●投手

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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