[甲子園交流試合]白スパイクが新鮮! 熱中症予防に効果もあるが……

写真はイメージです(写真:アフロ)

 いま開催中の2020年甲子園高校野球交流試合。テレビ観戦をしながら、どこかこれまでの景色と違うぞ……と感じていたあなた、鋭い。第1日に登場した明徳義塾(高知)が、白スパイクを着用していたのだ。これを皮切りに、「白」が続々と登場。第3日までの出場14校中、半数の7校が白スパイクだった。これまで、球児のスパイクといえば黒一色。日本高野連は規定で、黒しか認めていなかったためだ。だが今年度から、白色のスパイクも認められた。

 こんなデータがある。甲子園近辺の神戸気象台の過去の統計では、1945〜50年代、8月上旬の一日の平均気温は27.5度だった。これが2012〜17年には、29.4度まで上がった。同様に、一日の最低気温は24度強から27度弱まで、なんと3度近く上昇。「昔とは、暑さが違うよ」という帝京(東京)・前田三夫監督の体感は、数字でも裏付けられているわけだ。

 実際、夏の甲子園ではことに投手が、熱中症から足がつって思うような投球ができなかったり、降板を余儀なくされることが目立つ。18年の100回大会では、星稜(石川)の2年生エース・奥川恭伸(ヤクルト)の足がつって4回で降板し、あとを受けた竹谷理央も投球練習中に足がつり、星稜は結局タイブレークで済美(愛媛)に敗れた。ちなみに熱中症といっても物ごとに熱中するわけではなく、熱に"中る"(あたる)という意味。毒に"中る"中毒と同じ使い方だ。

最低気温が3度上昇

 選手、あるいは観客の熱中症を予防するために、高野連はさまざまな手を打ってきた。18年には給水タイムを設けたほかにも、甲子園のベンチのエアコン強度を従来の1.5倍にし、アルプススタンドにはミスト散水機を3台、球場の内外にも大型扇風機を設置。19年には、熱中症対策を促す文書を日本高野連から各高野連に周知し、対策にかかる費用を全国大会の支出費用から助成している。甲子園では、設備を前年に続いて拡充。運営面でも、3試合日の第1試合を従来より1時間早めて午前8時開始とした。

 白スパイクが許可されたのも、その一環というわけ。スポーツメーカーの調査では、白いスパイクは黒に比べて内部温度が約10度、表面温度が約20度も低かったという。「暑さを感じず、集中してできる」と、選手の反応も上々だ。それでも……熱中症は完全には防げない。これは黒スパイク組だが、第3日には加藤学園(静岡)・勝又友則一塁手の両脚がつり、試合途中で交代している。

 聞いた話では……ヒトの汗腺の数は、人種を問わず同じ。そしてその機能は、確か2歳くらいまでに決定する。つまり熱帯地方で、小さいころから汗をたっぷりかいて育つと、たとえば100の汗腺のうち95が機能するようになる。対して寒帯では、汗をさほどかかないから、100の汗腺のうち有効になるのは30。それが長じての発汗能力の差になるわけだ。

 そういえば……われわれの年代、「水を飲むな」という理不尽にさらされながら、日射病(かつて熱中症をこう呼んでいた)なんてめったになるものじゃなかった。エアコンなど一部の富裕層にしか普及していない時代、汗だくだくの乳児期を過ごすことで、発汗機能が発達したのだろう。甲子園でも1990年代初頭まで、足がつって選手が交代すると、ちょっとしたニュースになったから、「エアコンなし乳児期」育ちがまだ多かったのではないか。だが、21世紀生まれのいまの球児たちは、ほぼ全員がエアコンの恩恵を受け、汗をあまりかかない乳児期を過ごしているはず。つまり、汗をかく能力が低いことになる。それが熱中症を誘発するとしたら……いかに予防策を講じても、根絶はなかなかむずかしいかもしれない。