自民大阪市議が相次ぎ反旗 「大阪都構想」住民投票で維自公連携は成立するか

(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

大阪市を廃止し、東京23区のような「特別区」を新たに設置する、大阪都構想。大阪市が政令指定都市として担ってきたインフラ整備などの広域行政を大阪府に一元化することで、二重行政の解消や成長戦略の加速を狙ったものだ。大阪維新の会結党以来の看板政策である。

この大阪都構想の住民投票について、公明党大阪府本部が昨日会見し、佐藤茂樹会長(衆議院議員)が住民投票の実施に協力することを明言した。更に、自民党大阪府連の新会長に選出された渡嘉敷奈緒美衆議院議員も、住民投票実施で維新と連携すると明言した。

維新は公明に対し、住民投票実施への協力に加えて都構想自体への賛成をも強く迫り、公明がそれに応じない場合は関西で公明の衆議院議員が選出されている6選挙区に対立候補を立てる構えまで示していた。前回の住民投票も、衆院選を経て公明が協力姿勢に転じたため今回も同様に方針を転換することが予想されていた。だが、公明だけでなく自民党大阪府連までもが大転換を図ったことに、驚きの声が広がった。

「住民投票実施への賛成」と「都構想への賛成」は別

ここで確認しておきたいのは「都構想への賛成」と「住民投票実施への賛成」は明確に異なるということだ。都構想自体は住民投票で賛成多数になった場合のみ実現する。そしてその住民投票も、市長や知事がやりたい時にいつでも自由にできるものではなく、大阪府・市両議会で「特別区設置協定書」が議決されて初めて実現する。

その特別区設置協定書は、府市が設置した「法定協議会」で取りまとめられ、議決されることで成り立つ。現時点で、法定協議会で特別区設置協定書の取りまとめには至っていない。したがって、今後のながれはまずこの協定書の取りまとめ・議決が法定協議会で行われた後、協定書が府市両議会で可決され、住民投票実施ということになる。

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4月の大阪ダブル選と同時に行われた府・市議選の結果、法定協議会では維新が単独で過半数を確保できるだけの議席を得た。このため、法定協議会での協定書議決までは維新のペースで進められる状態になっている。しかし、市会では維新は過半数に2議席届いておらず、住民投票の実現には公明などの他会派もしくは無所属議員の協力が必要不可欠だった。そこに、公明のみならず自民党大阪府連までもが協力の意を示したことで、住民投票実現の可能性が極めて高くなっている。

一方で、都構想への賛否自体は公明・自民ともに明確にしていない。住民投票の実施には賛成するが、都構想への賛否についてはまた別の話という立場だ。

ただ、公明はこれまで都構想の対案としていた「総合区」の設置案(大阪市の24行政区を8区に再編し、区の権限を強化する案)を撤回したという。反対の大義名分となっていた対案を下ろしたことは、賛成への方針転換の布石と見ることもできる。

混乱が予想されるのは自民党大阪府連だ。渡嘉敷新会長の方針に、既に複数の大阪市議が公然と反旗を翻している。同党の川嶋広稔大阪市議はブログで「都構想が実現したら大阪市民が歩む道は『茨の道』」とし「私たちは、市民が『茨の道』に進むことが無いように、9年前に維新の会ができた時から、私たちが「茨の道」を進む覚悟」と、反対の意思を重ねて明確にしている。そのうえで、「『私たちが自民党を出る理由は一切ない』とはっきり申し上げております。当然です。出て行かれるべきは、維新と同化したい方です」とし、維新との連携路線をとる渡嘉敷氏らに離党を促すかのような投稿をしている。

同様に、同党の太田晶也市議も「『府連全体が住民投票に賛成した』または『府連が話し合って上記の結論に至った』わけでは全くないことを、府連の広報委員長として、ここにご報告申し上げます」とFacebookに書き込んだ。こうした状況を見透かしてか、維新代表の松井大阪市長は「渡嘉敷さんでどれだけガバナンスがきくかどうか、態度で示してくださいということ」とコメントし、まずは公明と協議する意向を示している。

松井氏は同じ会見で、1年半後の2020年秋をめどに住民投票を行いたい意向を示した。維新と公明で府・市両議会ともに過半数を大きく上回るため、住民投票自体の実施には自民の賛成は必要条件ではない。このため、松井氏の希望通り、2020年秋以降に住民投票に至る可能性が高いのがきょうの時点での状況だ。

2度目の住民投票は賛成多数になるのか

都構想の住民投票が行われた場合、それに参加するのは大阪市内の有権者だ。4年前の2015年に行われた1度目の住民投票では、賛成49.6%に対して反対が50.4%、票数にして1万票強の僅差で否決された。この1ヶ月前に行われた大阪市議選で、共同通信が行った出口調査では都構想への賛成は53%だったのに対して、反対は42%だった。しかし、住民投票の投票率は市議選(48.64%)よりも17ポイント以上高い66.83%に上り、結果、反対多数となった。市議選に足を運ばなかった反対派の有権者も住民投票には参加したことになる。

では、2度目の住民投票はどうなるのだろうか。

同じ共同通信が行ったこの春の大阪市議選出口調査では、都構想に賛成するとした有権者が57.6%だったのに対して、反対は40.2%だった。4年前と比べて賛成が4ポイント強増えた一方、反対は2ポイントほど減っている。が、今回の大阪ダブル選でも、世論調査や出口調査などから、4年前と同様に選挙には都構想賛成派の方が積極的に参加していることがわかっている。従って、出口調査で賛成が増えているというこの結果をもってしても、2度目の住民投票では賛成多数になると断じるのは難しい。

維新の大阪市議選での得票率は50%を下回っているため、ダブル選のような「維新対反維新」の構図が選挙ではなく住民投票で再現すると、政党支持層ベースでは反対派の数が賛成を上回ることになる。維新が公明に対して、住民投票実施のみならず都構想自体への賛成を求める背景には、住民投票の実現を前提に、賛成多数で決着させるために構図を有利にする狙いがありそうだ。

また、4年前に反対の大きな理由となった、住民サービスへの不安や無駄の削減効果への疑問(初期コストがかかる、財政負担が生じる点)について、維新の説明に対する市民の理解が進むかどうかも焦点だ。今年の大阪ダブル選で、反対派は特別区を4つ設置する現在の維新案について、庁舎の設置などの初期費用と15年間のランニングコストが1500億円に上ることを「無駄」とし、特別区が財政的に不安定になると批判してきた。こうした批判には公明も同調してきただけに、両党が協定書作成の過程でこの点をどう解決し、あるいは説明するのかも注目点だ。

2度目の住民投票に至るそもそもの経緯

大阪以外では「なぜ一度否決されたはずの住民投票が再度行われようとしているのか」という点について疑問の声が聞かれる。維新が2度目の住民投票を目指しているのは、2015年の1度目の住民投票の後、同年秋に行われた府知事・市長ダブル選挙で「都構想への再挑戦」を掲げた吉村洋文市長、松井一郎知事(いずれも当時)が当選したことに起因する。

住民投票での否決後、維新は1度方針を転換し、自民が都構想の対案として提案していた「大阪会議」(大阪戦略調整会議)の設置条例案に賛成した。この大阪会議とは、大阪府に加えて広域行政の権限・財源を有する大阪市、堺市の3者が参加し、行政の連携を図るものだ。しかしこの大阪会議は連携の協議以前にその位置づけをめぐって初回から紛糾し、実質的な議論には入れなかった。このことから、都構想の実現以外に二重行政解消の有効な手立てはないとする維新が、都構想再挑戦を掲げてダブル選に臨むことになった。

その後、維新と公明の決裂により事態は膠着し、再度行われたこの春のダブル選は吉村・松井両氏が立場を入れ替えて立候補する、異例の「クロス選」となった。ここで両氏が圧勝しただけでなく、同時に行われた府・市議選でも維新が圧勝したことから、公明・自民ともに「反対姿勢を続けるかどうか」という基本的な前提から見直さざるを得なくなったわけだ。

都構想をめぐる議論は2010年から本格的に始まり、今年で10年目になる。また、源流である大阪産業都構想(大阪府市を廃止し、大阪産業都と都市区を置く構想)の府議会決議が行われた1953年からは、66年が経過している。半世紀を超えた大阪の二重行政問題が決着を見るかどうか、今後およそ1年半でその答えが出ることになる。