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災害時に広まるSNS発の「デマ」「フェイクニュース」その判別・対策法

米重克洋JX通信社 代表取締役
大都市での地震で「デマ」の拡散も相次いだ(大阪・鶴橋駅前)(写真:アフロ)

災害時のSNSは、重要な情報ライフラインであると同時に「デマ」や「フェイクニュース」の拡散装置にもなっている。日本でも2011年の東日本大震災以来、SNSの普及とデマの拡散は切っても切り離せない課題として注目されている。

筆者が代表を務めるJX通信社では、平時からAIでSNS上の災害・事件・事故などの情報を検知し、主に報道各社に対して速報している。今回の大阪北部地震でも多数の被害情報を配信しているが、こうした業務においては24時間365日が「デマ」「フェイクニュース」との戦いだ。今回の大阪北部地震でもそうした「デマ」の投稿が相次いでいる。そこで、そんな私たちが考える、個人でもできる災害時の「デマ」「フェイクニュース」の判別法について紹介したい。

災害時の「デマ」「フェイクニュース」の2つの種類

これは個人的な分類だが、災害時に出回る「デマ」「フェイクニュース」の類には、大きく分けて2種類ある。

1つ目は「創作系」、つまり全くの作り話だ。今回の大阪北部地震でも「シマウマが脱走した」などというデマが投稿された。また、過去に台湾などで発生した大地震の写真を改めて投稿したり、差別的な主張をするために事実と異なる創作を行った投稿も見られた。

そして、2つ目は「誤解・勘違い系」だ。つまり、投稿した人の勘違いを発端に拡散するタイプのものだ。今回は「京阪電車が脱線した」「京セラドームの屋根に亀裂が入った」などといった投稿があったが、これらは「誤解・勘違い系」のデマにあたる。特に「京セラドームの屋根に亀裂が入った」という情報は、合わせて投稿された写真に写った京セラドーム屋根上の外階段とその汚れが一見亀裂・ヒビによく似たものだっただけに、急速に拡散した。

これら2種類のデマに共通するのは、基本的に「伝聞」を通して拡散するということだ。最初の1つ目の投稿自体が投稿者によって削除された後も、投稿を目撃した別のSNSユーザーによって「○○があったらしい」「○○だそうだ」といった伝聞情報として拡散される。従って、元の投稿が削除された後も、情報自体はSNSを漂い続けてしまい、完全に打ち消すことは難しくなる。これが、デマが広がる構造だ。

伝聞情報は可能な限り確認する

従って、デマを見分ける最もシンプルで効果的な方法は「伝聞」の情報をすぐ鵜呑みにしないということになる。災害時、自分の身を守るために集めた情報は、結果として自分の身の安全に直結する。通信環境などに課題があっても、可能な範囲でなるべく最低限の「確認」をすることはやはり重要だ。

具体的には、Twitter上で行政(国や自治体)、あるいは電力・ガスや鉄道などのインフラを担う企業の「公式アカウント」を確認するほか、報道機関で既に報じられたニュースを探すといったことが挙げられる。また、地域によっては、消防が域内での消防車や救急車の出動情報をWebや自動応答の電話によって公開していることがある。もし知っている場所に関連して未確認の災害情報を目にした際は、こうした出動情報を確認することも可能だ。

更には、地域によっては当地の首長がSNSでの発信に熱心なことがある。今回の地震では、大阪市の吉村洋文市長の情報発信がTwitterでトレンドに入るなど話題になっている。また、熊本地震の時にも熊本市の大西一史市長がTwitterで熱心に情報発信を行ったことが知られている。このように、お住まいの自治体の首長がTwitterを活用している場合には、災害時の重要な公式情報源の1つになる可能性がある。

未確認情報の「確度」を判断する

もし、公式情報で確認できない場合でも「デマ」や「フェイクニュース」から自己防衛する方法はある。

広く拡散されるデマには、写真が付与されているケースが多い。こうした写真を目にした際は、お手元のスマートフォンやPCで「画像検索」をすることで過去の他の災害からの使い回しでないかを確認することができる。画像検索の代表的なサービス「Google画像検索」では、調べたい写真・画像をアップすることで、使い回しの同一写真や、別の災害の類似の画像がないかを検索して確認できる。PCはともかくスマートフォンでは少々手間だが、もし通信環境に余裕があり、且つ最低限身の安全が確保できている状況であれば、試してみても良い方法だ。

PC版のGoogle画像検索では、カメラアイコンをクリックして写真をアップするか、検索ボックスに写真をドラッグ&ドロップすることで「使い回し」画像でないか確認できる
PC版のGoogle画像検索では、カメラアイコンをクリックして写真をアップするか、検索ボックスに写真をドラッグ&ドロップすることで「使い回し」画像でないか確認できる

また、特定の未確認情報について、同時間帯に、同内容の情報を様々な人たちが投稿しているケースがある。それらの投稿の多くが「伝聞情報」でない場合は、冒頭で挙げた「創作系のデマ」ではなさそうだと判断し、参考にすることはできる。但し、伝聞情報なのに「断定調」で情報を投稿するユーザーも多いため、同じような内容のツイートでも「写真がついている」「位置情報(ジオタグ)が付与されている」等、付随する情報の量の多い投稿を参考にしたい。

また「デマ」を見分ける方法とは少々異なるが、これらの手法で確認や確度の判断ができない不確かな情報のRTや拡散は慎重にすることも心がけたいポイントだ。他の人がデマで身を危険に晒すことがないようにするために気をつけたい。

JX通信社 代表取締役

「シン・情報戦略」(KADOKAWA)著者。1988年(昭和63年)山口県生まれ。2008年、報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、テレビ局・新聞社・通信社に対するAIを活用した事件・災害速報の配信、独自世論調査による選挙予測を行うなど、「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。

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