どうなる築地移転、待機児童、都議選…「小池都政」の向こう1年をシミュレーション

「先出しジャンケン」で風を起こした小池氏。「最後のお願い」には5000人が集った(写真:アフロ)

首都東京の新しいトップを決める今回の東京都知事選は「先出しジャンケン」で動いた小池百合子氏が「保守分裂」の末に「初の女性知事」の座を射止めるという異例ずくめの結果となった。まもなく始まる「小池都政」は2代連続で蹴躓いた都知事の後で、4年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックやその後の東京のあり方を作っていく重要な役回りを担うことになる。

築地市場の豊洲への移転や待機児童問題への対応、そして4年後のオリンピック・パラリンピックの準備…都政は今後数年に渡り課題山積といった状況だが、今後の「小池都政」はどのように進んでいくのだろうか。本稿では、カギとなる来年夏の東京都議会議員選挙までの政治スケジュールからその流れをシミュレーションしてみたい。

11月の築地市場豊洲移転は「立ち止ま」れるか?

あと1年を切った都議選本選までの主な政治スケジュール
あと1年を切った都議選本選までの主な政治スケジュール

上図は、来年6月に予定される都議選本選までのスケジュールと関連する主な政治的トピックを示したものだ。

まず小池新知事が最初にぶつかる課題は、この秋に迫る築地市場移転の延期判断だ。小池氏は今回の選挙戦のなかで、主要3候補では初めて築地を訪問し「豊洲への移転は『一旦立ち止まる』ことも必要ではないか」と述べて、移転延期もあり得るとの見解を示した。

築地市場の機能が移る豊洲新市場は、現時点では11月7日を開業日として予定している。これが実際に延期されるとすれば、その判断は就任後なるべく早くに行われる必要があり、実際に延期があるのか否か、また、延期される場合にどの程度の期間を要するのかが注目点だ。

もし実際に延期となった場合、その影響は市場としての機能のみには留まらない。空いた築地市場の広大な跡地の一部は、都心部と晴海の選手村、そして豊洲の新市場を結ぶ環状2号線の未通区間の整備に使われる。残った広大な土地も、東京五輪に向けた仮設のバスターミナルとして利用される計画が明らかになっている。更には「五輪後」を見据えてサッカースタジアムなど大規模施設の整備案を温める民間事業者もあると報道されているが、こうした跡地に関する整備計画の検討・進行スケジュールに相当程度影響することは避けられないだろう。

環状2号線の未通区間は築地市場跡地(中央左上)を通る(出典:都第一建設事務所)
環状2号線の未通区間は築地市場跡地(中央左上)を通る(出典:都第一建設事務所)

この築地市場移転問題の行く末は、都政運営そのものにも影響を与え得る。

元々、築地市場の移転は石原都政下の2011年度予算に整備費が盛り込まれたことで正式に決まった。この時は、都議会で与野党の議席数が拮抗するなか、自民党東京都連の内田茂幹事長のもとで都議が死去するなどの顛末から議会運営に混乱をきたし、最終的には翌年(2011年)3月に民主党都議1人が自民党側に「一本釣り」される形で、薄氷を踏むように決まった経緯がある。

※なお、この都議は翌月、世田谷区長選に民主党ではなく自民党東京都連の推薦で出馬した。自民党世田谷区支部との「保守分裂」選挙となった結果、保坂区長に敗北した経緯は今回の都知事選を彷彿とさせるものがある。

小池新知事は「利権追及チーム」の設置や、ホイッスルブロワー(内部告発者)からの情報提供を募る「目安箱」を通じた情報収集・公開などを掲げている(後述)が、築地市場の移転問題は上記のように過去政局となった案件でもあり、小池氏の動き次第では火種になる可能性もある。

小池氏後継 衆院東京10区補選は「都議選」前哨戦に?

国政選挙だが、小池都政のモメンタムを占ううえで注目されそうなのが、10月23日に投開票が見込まれる衆議院東京10区(豊島区と練馬区の一部)の補欠選挙だ。

この東京10区は、言わずと知れた小池氏の衆議院議員時代の選出選挙区であり、今回小池氏が都知事に転出したことで補選が行われる。民進党はこの選挙区で元NHK記者の鈴木庸介氏の公認を内定しているが、自民党からはまだ具体的な候補者名が出てきていない。

そこに、小池氏は今回同氏を最初から最後まで応援した若狭勝衆議院議員を擁立するとの見方がある。若狭氏は自民党都連所属の現職衆議院議員ながら比例単独の選出であり、地元の選挙区を持たない。自民党都連に所属する「政府高官」こと萩生田官房副長官が若狭氏の離党か除名の可能性を指摘した発言も報道されており、若狭氏が自民党を離れる事態になった場合、保守分裂選挙が再現する可能性もある。

この補選は、来年6月の都議選を睨んだ政治スケジュールのうえでも重要な選挙だ。現状、小池新知事にとっては、事実上、旧みんなの党系の会派「かがやけTokyo」だけが与党会派となる。つまり「オール野党」に近い都議会と対峙する環境で、厳しい都政運営を強いられる可能性が高い。都政運営を円滑にするためには、自民・公明両党と「手打ち」をするか、来年の都議選本選までかけて身内の都議を増やす必要がある。

先の記事後段にて指摘した通り、大阪では2010年春の大阪市会福島区補選で地域政党・大阪維新の会が勝利したことで、翌年(2011年)の市会選挙本選を前に自民党などから現職議員が大量に移籍した。この雪崩のような再編現象が、結果として本選で府・市ともに維新が最大会派になるという選挙結果につながり、現在まで5年以上続く大阪での「維新一強」の政治構造を形作っている。

東京でも大阪のように首長発の新党の動きがあるのか。衆院東京10区補選は、自民党都連と小池氏のそれぞれの対応が変数となって、来年の都議選の帰趨を占う注目の選挙になる可能性を秘めている。

秋から年末にかけて「補正予算」で待機児童対策?

待機児童問題への対応も注目されるポイントだ。小池新知事は、待機児童問題への対策として、遊休都有地や「空き家」の保育園などへの転用や広さ規制の緩和などを掲げている。これらに加えて、来年入所の待機児童についての対策も緊急性を要する。これらは政治的にも注目されるトピックであり、都が何らかの予算措置で対処できるものについては、補正予算で対応を図る可能性がある。その場合、12月頃に行われる第4回定例会ないしは9月の都議会第3回定例会に補正予算案を提出することとなる。

なお、市ヶ谷の都立高校跡地を韓国人学校の用地として貸与するという舛添前知事の方針は「白紙撤回」するというのが小池氏の方針だ。都有地の貸与は、知事の決定のみで議会の承認を要さない。このため、そこに仮に保育園を設置するとすれば、用地が所在し且つ保育園の設置主体になり得る新宿区との調整が付けば可能である。

解散、予算…都議会との対立はどうなる?

小池氏は「先出しジャンケン」で立候補を正式表明した際、「都議会の冒頭解散」「利権追及チームの設置」「舛添問題を調査する第三者委員会の設置」の3点を掲げた。このうち、1点目の「議会の冒頭解散」については、先般の記事で詳述したとおり実際に9月定例会の冒頭から都議会による不信任案の可決ないしはリコールの成立無くして出来ず、現時点では実現可能性は相当低い

小池氏自身も、この「冒頭解散」実施には当初から「不信任が出されること」を条件につけており、実際に冒頭解散に至ることは無さそうだ。

一方「利権追及チーム」と「舛添問題の第三者委員会設置」については、条例設置の部局や会議でなく「専門委員」や「参与」など知事の裁量で登用できる方法であれば議会同意は不要だ。改革姿勢を示すには格好のツールであり、都議選までの環境整備も兼ねて、早期に設置・活用される可能性がある。

東京都議会
東京都議会

また、知事の都政運営を支える「副知事」の人事も注目されるが、こちらも議会との対立ですぐに躓くことは考えにくい。副知事にはそれぞれ業務に管掌があり、オリンピック・パラリンピック開催に伴って1人増やされた経緯もあることから、副知事が不足すると知事の都政運営に支障をきたす可能性がある。ただ、現在の4人の副知事はいずれも、今年6月の第2回定例会で、舛添前知事の辞職表明と同時に選任同意されている。任期は4年であり、すぐに後任を任命しなければならない状況ではない。

都政運営においても、小池氏は出馬を正式表明した会見の場で、舛添前知事時代に策定した「東京都長期ビジョン」を基本的に継承するとしている。その通りであれば、現在都が進めている様々な政策の大枠を変更するものではない。

小池氏にとって今後最大の障壁になりそうなのは、来年度の本予算だ。小池新知事が手掛ける初めての本格予算となるが、この予算案が通らなければ都の行政機能がストップしかねないだけに、議会との対立が先鋭化する可能性もある。

持ち前の「発信力」で風を起こし、都知事の座を射止めた小池氏。今後、あと1年を切った都議選に向けて様々な「絵作り」をしてくる可能性が高い。都議会の勢力図や国政のテーマも絡みあい、当面目が離せなくなりそうだ。