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1試合5三振と苦しむ中野拓夢に落合博満監督なら何を言う?

横尾弘一野球ジャーナリスト
中野拓夢は、侍ジャパンにも選出される実力を備えているが……。(写真:CTK Photo/アフロ)

 2年連続日本一への期待が高まる阪神は、オープン戦で9連敗とファンをやきもきさせた。3月13日の千葉ロッテ戦では伊藤将司から村上頌樹への継投でようやく白星をつかみ、そこからは投打にまずまずの内容という印象だ。そんな中、どうしても波に乗れないのが中野拓夢である。

 ルーキーだった2021年に盗塁王を獲得。2022年はベストナイン遊撃手に選出されるも、岡田彰布監督が就任した昨年はセカンドにコンバートされた。さらに、開幕前には侍ジャパンの一員としてワールド・ベースボール・クラシックにも出場するという難しいシーズンだったにもかかわらず、最多安打のタイトルに輝く打撃と安定した守りで18年ぶりの優勝と38年ぶりの日本一に貢献した。まだ4年目と若手の部類に入るが、実績を考えれば心配無用のレギュラーだ。

 春季キャンプは順調に過ごしたという印象で、オープン戦でも3月2、3日の北海道日本ハム戦ではライトへ二塁打を1本ずつ放った。ところが、8日の東京ヤクルト戦で中前に弾き返したあとはヒットが出ないどころか内容も悪く、休養を経て出場した19日の福岡ソフトバンク戦は、打線が16安打で10得点と爆発する中で5打席連続三振と精彩を欠く。ここまで結果がよくないと打席での表情も不安げに見えてしまうし、何より中野自身が打率.077に「どうしていいかわからない」と手詰まり状態のようだ。

 長く厳しいペナントレースを戦うプロの世界では、一流と言われるベテランでも「その年の1本目が出るまでは不安」と言う。ただ、何かきっかけがあれば本来の実力を発揮できるだけに、中野がこのまま開幕を迎えても、1本のヒットで昨季のような勢いが生まれるのかもしれない。ただ、どんなに高い実績を残していても4年目は成長途上であり、心配がないわけでもない。

 こんな時は、監督やコーチも的確なアドバイスをしたいのだろうが、いかんせんバッティングというのはどこか1か所をいじったり、意識を変えただけで蟻地獄にはまってしまう危険性もある。中野自身の取り組みで復調してほしいという段階なのだろう。

 では、落合博満監督が現在の中野を見たら、何とアドバイスするのか考えてみた。過去に同じようなケースでは、苦しむ選手が内野手なら「多めにノックを受けろ」と言っていた。バッティングの状態がよくない時は、ほかの練習に取り組んでいる時も、もしかしたら日常生活の間もバッティングのことばかり考えてしまう。そして、打席に立っても頭でバッティングしてしまうケースが多いので、ノックを受けることで頭の中をリフレッシュさせるのがひとつの目的だ。

 もちろん、技術面での意義もある。

「内野手がゴロを捕って一塁へ送球するという動きは、バッティングの回転運動とも共通点がある。頭の中がグチャグチャになっていても、体が本来の回転を思い出してくれれば結果は出るはずだ」

 中野は右投げ左打ちだが、大切なのは体が理想的な回転を思い出し、上半身と下半身がしっかり連動することなのだという。これは、落合自身が実践していたスランプ脱出(防止)法でもあるのだが、一流選手はこうした練習法をいくつか身につけている。中野もチームの中心で活躍を続けていくために、この機会にスランプ脱出法をひとつ確立してもらいたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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