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優勝校は21世紀枠が決める!?――データ的選抜高校野球大会の見どころ

横尾弘一野球ジャーナリスト
2009年の第81回大会では、21世紀枠の利府高がベスト4進出の快進撃を見せた。(写真:アフロ)

 日本の野球界に春の訪れを告げる第96回選抜高校野球大会が、3月18日に阪神甲子園球場で幕を開ける。出場32校は、紫紺の優勝旗を目指してどんな戦いを繰り広げるのか。優勝校を占う際には、戦力評価とともに大会独自のデータも参考になりそうだ。その中でも興味深いのは、21世紀枠による出場校の存在である。

 21世紀枠は、文字通り2001年から採用された。選考方法や出場校数には変化がある中で、毎年2~4校が前年の秋季地区大会で顕著な成績を収めた高校とともに晴れの舞台に立っている。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大によって大会が中止された2020年を除き、これまでに61校が出場しているが、うち47校が初戦敗退と勝敗の面ではクローズアップされることが少ない。

 最高成績は、2001年の宜野座高(沖縄県)と2009年の利府高(宮城県)のベスト4。決勝まで駒を進めるのはいつ、どんな高校なのか楽しみだが、この二十余年間でデータ的にはひとつの大きな傾向が示されている。

 それは、21世紀枠と対戦した高校は次戦で敗退する可能性が高いということだ。2001年には、一回戦で21世紀枠の安積高(福島県)に勝った金沢高が二回戦で負け、準決勝で宜野座高を倒した仙台育英高も決勝で涙を呑んだ。そうして、21世紀枠の61校に勝った高校のうち35校が次戦で敗れており、その確率は57.3%となる。しかも、2012年までは21世紀枠と対戦すると優勝できないというジンクスまであった。

2013年から流れは変わったか……

 その嫌なジンクスを破ったのは、2013年の浦和学院高だ。この第85回大会は、史上最多の4校が21世紀枠で出場し、遠軽高(北海道)といわき海星高(福島県=2020年度で廃校)が初めて一回戦で対戦した。そんな中、2年生左腕の小島和哉(現・千葉ロッテ)を擁する浦和学院高は、初戦(二回戦)で21世紀枠の土佐高(高知県)に4対0で完封勝ちすると、三回戦は山形中央高に11対1、準々決勝では北照高に10対0と圧勝。準決勝で敦賀気比高を5対1で振り切ると、決勝でも済美高に17対1と、歴史的な完勝で頂点に立つ。

 これで“21世紀枠の呪い”が解けたのか、翌2014年は一回戦で大島高(鹿児島県)に勝った龍谷大平安高と、同じく一回戦で小山台高(東京都)を倒した履正社高が決勝で激突。6対2で龍谷大平安高に軍配が上がった。その後も、2018年は一回戦で伊万里高(佐賀県)を退けた大阪桐蔭高、2019年は一回戦で富岡西高(徳島県)に競り勝った東邦高が優勝。昨年も二回戦で氷見高(富山県)を破った山梨学院高が春の王座に就いている。

 そう、昨年までの約10年間では、21世紀枠は5回もキングメーカーになっているのだ。ただし、初戦(昨年の山梨学院高は二回戦だが、氷見高にとっては初戦)で対戦するのが条件となっている。

 では、今年の21世紀枠はどうか。春夏通じて初出場の別海高(北海道)と対戦するのは創志学園高だ。東海大相模高を率いて春3回、夏も1回優勝している門馬敬治監督が、ユニフォームを着替えて初めての大舞台でどんな試合運びを見せてくれるか。また、76年ぶり3回目の出場という古豪・田辺高(和歌山県)と顔を合わせる星稜高は、昨年の明治神宮大会を制しており、優勝候補の呼び声も高い。

 さて、創志学園高と星稜高は、一戦必勝の戦いで21世紀枠を倒したものの、ジンクスに呑まれて二回戦で姿を消すか。それとも、近年の流れを引き寄せて、21世紀枠に勝った勢いのまま頂点に立つか。もちろん、別海高と田辺高が2009年の利府高以来となる快進撃を見せてくれることにも期待しつつ、今大会を楽しみたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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