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大注目のクリスチャン・ロドリゲス 亡命は大丈夫か?

横尾弘一野球ジャーナリスト
長い手足を生かしたショートの守備で注目されるクリスチャン・ロドリゲス。

 中日に育成契約で入団したクリスチャン・ロドリゲスの評判がすこぶるいい。キューバ出身で184cm・74kgの遊撃手は、昨年のキューバ国内リーグ46試合で打率.245、1本塁打15打点に加えて15盗塁をマーク。また、U-23ワールドカップのアメリカ大陸予選でキューバ代表に選出され、一番ショートで5試合に出場して打率.368をマークした。

 春季キャンプが始まると、長い手足を生かし、フットワークに優れたゴロ捕球から強いスローイングの内野守備で注目され、打撃面で変化球への対応力を高めれば、支配下どころか若手が競い合う二遊間のレギュラー候補に躍り出ると見られている。

 3月31日で22歳と若く、生活面でも順応できれば大きな戦力になりそうだが、ファンの中には「ロドリゲス」と聞くと、ジャリエル・ロドリゲスを思い出してしまう人もいる。そう、2020年に中日と育成契約すると、その年のうちに支配下登録され、2022年には最優秀中継ぎのタイトルを獲得。複数年契約を更新しながら昨年は来日せず、亡命した末に今年の2月9日にトロント・ブルージェイズと5年契約した快速右腕だ。

 中日では、昨年9月にも内外野をこなせるパワーヒッターのペドロ・レビーラが音信不通となるなど、キューバ人はダヤン・ビシエドやライデル・マルティネスのように日本での生活にも馴染んで長く活躍する選手がいる一方で、いつ亡命してしまうかというリスクも懸念される。

 では、亡命する選手としない選手は何が違うのか。キューバ人や野球界の事情に詳しい柴田 穣氏は「亡命する大きな理由のひとつは、やはり経済的なこと」と語る。確かに、キューバ出身で、メジャー・リーグでプレーしたラファエル・パルメイロや元西武のオレステス・デストラーデは、キューバ革命によって生活が苦しくなった家族ごと亡命し、少年時代からアメリカで生活していた。野球の国際大会がカテゴリー別に盛んになった最近では、U-15やU-18のキューバ代表に選ばれた選手が、家族で亡命するケースが少なくない。遠征先の国でメジャー・リーグの代理人などに声をかけられることもあるのだろうが、亡命する共通点は経済面だ。

 柴田氏によれば、裕福な家庭の選手もいるが、「亡命の心配はないが、性格がおっとりしている子が多い」という。昨年、中日でプレーしたギジェルモ・ガルシアもそんなひとりで、言われてみればキューバ人独特のギラギラした闘争心が見られなかった。

 それでも、中日にはかつて「キューバの至宝」と呼ばれたオマール・リナレスが巡回コーチで在籍しており、クリスチャン・ロドリゲスについても太鼓判を押しているという。豊かな才能にあふれた金の卵が、日本で大きく成長できるか。背番号219のプレーには注目してみたい。

(写真提供/小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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