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これが台北ドームだ!! 日本のドーム球場を凌ぐビッグスケール

横尾弘一野球ジャーナリスト
11年がかりで建設された台北ドームは、多くの観客を集めている。

 台湾の野球ファンが待ちに待った台北ドームが完成し、12月3日に幕を開けた第30回BFAアジア野球選手権大会の主会場となっている。北部は亜熱帯、南部は熱帯に属する台湾の雨季は夏なのだが、11月から12月にかけてもしとしととした雨天の日が少なくなく、この時期にもシーズン中のアマチュア野球界は日程の調整に悩まされてきた。そんな中、1988年に日本で東京ドームが誕生すると、台湾でもドーム球場建設を望む声が次第に高まり、多くの議論を経て2012年に着工した。

 ところが、建築書類の不備などから建設作業は一時ストップ。2020年になってようやく再開され、約11年をかけて2023年10月に完成した。11月からお披露目された球場は、日本のどのドーム球場をも凌ぐスケールの大きさだ。

天井の高さは、東京ドームの56.2mに対して台北ドームは74.5mだ。
天井の高さは、東京ドームの56.2mに対して台北ドームは74.5mだ。

 一番のアピールポイントは、天井の高さだろう。日本の主なドーム球場は東京ドームが56.2m、京セラドーム大阪が60m、バンテリンドーム(名古屋)が64.3m、ベルーナドーム(埼玉)が64.5m、福岡PayPayドームが68m、最新のエスコンフィールド北海道が70mと公表されているが、台北ドームは74.5m。アジア選手権に臨む社会人日本代表の選手たちは、「ひと目で天井の高さがわかりますね」と見上げていた。

 また、グラウンドは両翼が102m、センターが120mで、人工芝は京セラドーム大阪と同じミズノ製のMSクラフト・ベースボール・ターフという最新型が使用されている。ただ、敷かれたばかりの芝はまだ硬く立っており、守備練習をした選手は「ゴロの勢いが殺されます」という感想。実際、日本が第1戦で対戦したパキスタンの選手は人工芝でプレーする経験が少ないため、ゴロを捕球しようとする動作の中で何度か躓いていた。

人工芝は、ミズノ製のMSクラフト・ベースボール・ターフが使用されている。
人工芝は、ミズノ製のMSクラフト・ベースボール・ターフが使用されている。

 観客席は、野球開催時が4万71人で、アリーナ仕様になると5万8,000人。スイートルームが36室など、観客の様々なニーズにも対応できる施設を備えている。そして、広々としたダグアウト、その裏に並ぶ多目的な部屋をはじめ、チームやプレーヤーが試合前後もリラックスできる環境が整えられており、世界に誇れるドーム球場という印象だ。

選手や関係者の動線も広くて落ち着いたデザインになっている。
選手や関係者の動線も広くて落ち着いたデザインになっている。

 さて、その杮落としとなる第30回BFAアジア野球選手権大会は、試合前後の交通機関の混雑状況などをリサーチするため、1階席のみを開放。開幕戦の約1万7,000席のチケットは、瞬く間に完売したという。大会連覇を果たそうと、チャイニーズ・タイペイ代表はプロ選手を中心として投打に強固な戦力で臨んできた。開幕戦でも韓国代表を4対0で下し、好スタートを切っている。対して社会人日本代表は、12月4日の第1戦でパキスタンに14対0の7回コールドで完勝し、5日はタイ、6日にはフィリピンと対戦する。2大会ぶりの優勝はなるか注目したい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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