Yahoo!ニュース

今季のパ・リーグは打率.307、26本塁打、87打点がトップ! では、史上最高の2位は誰か

横尾弘一野球ジャーナリスト
中村紀洋は、2005年にはロサンゼルス・ドジャースでプレーした。(写真:ロイター/アフロ)

「本塁打王は、限られた者の争いだからわかりやすい。打点王は、その年に自分の前を打つチームメイトの成績にも左右される部分があるのが厄介だ。そして、首位打者は規定打席に達するすべての選手に権利があるから、ライバルが絞り辛い難しさがある」

 三冠王を3回手にした落合博満に、打撃3部門の狙い方を尋ねた時の答えだ。タイトルとは“その年のトップ”が手にするものだから、自分が残した数字とともに、他の選手の数字も大きく影響する。

 今季のパ・リーグは、頓宮裕真(オリックス)が獲得した首位打者の打率が史上最低の.307であったように、打撃部門の数字が全体的に伸び悩み、本塁打王は26本でグレゴリー・ポランコ(千葉ロッテ)、近藤健介(福岡ソフトバンク)、浅村栄斗(東北楽天)が史上初めて3人で分け合い、打点王も近藤の87だった。

 もちろん、数字の高低でタイトルの価値が変わるものではないが、だからこそ高い数字を残したにもかかわらず、タイトルに届かなかった不運には言葉も見つからない。そして、そんな不運な2位を見ていくと、やはり凄い数字と顔ぶれなのだ。

 まず、打率2位のベスト3は、1986年のウォーレン・クロマティ(巨人)の.363、2015年の秋山翔吾(埼玉西武)の.359、1979年の新井宏昌(南海)の.358が並ぶ。

 1986年のクロマティは、夏場まで史上初の打率4割超えを期待させる好調ぶりだったが、最終的にトップに立ったのは、前年に続いて三冠王を手にしたランディ・バース(阪神)だった。47本塁打109打点とともに、現在でも史上最高の打率.389をマークされ、クロマティは史上最高打率の2位となった。同じように、2015年の秋山は柳田悠岐(福岡ソフトバンク)と争い、柳田が.363でタイトルをゲット。1979年の新井は加藤英司(阪急)とデッドヒートを繰り広げ、加藤が.364でトップに立った。

【打率2位の歴代トップ3】

1 ウォーレン・クロマティ(巨人) 打率.363=1986年

2 秋山翔吾(埼玉西武)      打率.359=2015年

3 新井宏昌(南海)        打率.358=1979年

50本塁打でもタイトルを逃した2003年のアレックス・カブレラ

 次は本塁打。これは何と言っても、50本塁打で2位となった2003年のアレックス・カブレラ(埼玉西武)が史上最多。タイトルは51本塁打のタフィ・ローズ(大阪近鉄)が手にしたが、カブレラは2001年も49本塁打で2位。タイトルは、1964年の王 貞治(巨人)に並ぶ55本塁打を放ったローズだった。そのカブレラは、2002年に55本塁打でタイトルを奪取。その時のローズが46本塁打で2位となり、これが1950年の西沢道夫とともに歴代4位の数字である。当時のローズとカブレラによるホームラン・ダービーは、日本のプロ野球史でも最高のレベルだったと言っていいだろう。

 ちなみに、46本塁打でタイトルを逃したのはもうひとり。2001年の中村紀洋(大阪近鉄)だが、ローズが55本、カブレラが49本だから中村は3位。翌2002年にも42本塁打を放ったが、カブレラが55本、ローズが46本と巡り合わせが悪かった。話が前後したが、歴代3位は2010年のクレイグ・ブラゼル(阪神)で47本。タイトルは、アレックス・ラミレス(巨人)が49本で手にしており、チームメイトの阿部慎之助も44本をマークした。

【本塁打2位の歴代トップ3】

1 アレックス・カブレラ(埼玉西武) 50本塁打=2003年

2 アレックス・カブレラ(埼玉西武) 49本塁打=2001年

3 クレイグ・ブラゼル(阪神)    47本塁打=2010年

 そして、打点は時代を遡る。2リーグに分立した1950年のセ・リーグ初代の打点王は小鶴 誠(松竹)の161打点で、これが現在でもプロ野球最高記録。この時に2位となった藤村富美男(阪神)の146打点が史上最高の2位で、歴代でも4位に入っている。なお、この年のセ・リーグは9人が100打点をクリアしており、135打点の西沢が歴代9位タイ、134打点の青田 昇(巨人)は歴代11位タイである。

 藤村の記録に続くのは、2001年のローズと2013年のウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト)で131打点。2001年の打点王は、132打点で中村だった。ローズとカブレラに本塁打王は奪われたが、僅か1打点差で打点王は死守している。中村は、この打棒を武器に2005年はロサンゼルス・ドジャースでプレーしたが、残念ながら思い描く活躍は見せられなかった。また、2013年の打点王は、トニ・ブランコ(横浜DeNA)が打率.333の首位打者と二冠王に輝いた。

【打点2位の歴代トップ3】

1 藤村富美男(阪神)              146打点=1950年

2 タフィ・ローズ(大阪近鉄)          131打点=2001年

2 ウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト) 131打点=2013年

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事