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投打に抜群の安定感でNTT西日本が都市対抗へ一番乗り!!

横尾弘一野球ジャーナリスト
NTT西日本は、一番乗りで9年連続34回目の都市対抗出場を決めた。

 今年も“大人の甲子園”の季節がやって来る。5月21日に東海地区で幕を開けた第94回都市対抗野球大会の31代表(昨年優勝の横浜市・ENEOSは推薦出場)を決める二次予選は、31日に近畿地区で第一代表決定戦が行なわれ、昨年と同じく大阪市・NTT西日本と八尾市・ミキハウスが激突した。

 都市対抗初出場を果たした2005年限りで活動を休止してしまったミキハウスは、クラブチームを母体として2019年に復活。大阪府八尾市を本拠地として再び歩み始めると、2021年に2回目の都市対抗へ駒を進め、昨年の一回戦では初勝利を挙げた。ルーキーでクリーンアップを任された猪原隆雅は、U-23ワールドカップの日本代表に選出され、シュアな打撃で優勝に貢献。そうして、着実に力をつけたチームは、今年も日本生命、日本製鉄広畑と日本一の経験がある古豪を連破して第一代表決定戦に勝ち上がる。

 そんな勢いのあるミキハウスを迎え撃ったのが、8年連続33回の本大会出場を誇るNTT西日本だ。主砲の平良竜哉が東北楽天へ入団したものの、ルーキーの水島滉陽がその穴を埋めて余りある活躍を見せてリードオフに定着。3年夏の甲子園で優勝した智辯学園和歌山高から入社して2年目の徳丸天晴もサードの定位置をつかむなど、若い力が刺激となってチーム力はさらにアップしたという印象だ。

 河本泰浩監督が若手を積極的に起用した3月の東京スポニチ大会、4月の四国大会はリーグ戦で敗退したが、ゴールデンウィーク前の京都大会ではベスト4に進出。投打に磐石の布陣で近畿二次予選を迎えると、パナソニックを延長10回タイブレークの6対3、京都大会準決勝で敗れた三菱重工Westにも2対1でリベンジし、第一代表決定戦に進出する。

ベテラン右腕がゲームメイクして四番が先制打

 NTT西日本の先発は、33歳の濵﨑浩大。昨年の日本選手権で10回出場の表彰を受けたベテラン右腕は、緩急を駆使した投球で安定した立ち上がりを見せる。すると、1回裏に先頭の水島がショートへの内野安打で出塁し、犠打などで二死二塁。このチャンスに、四番の山田峻士がレフトオーバーの二塁打で幸先よく先制。2回裏には一死一、三塁から串畑勇誠のスクイズで2点目を挙げ、さらに3回裏には一死一、三塁から酒井良樹の右前安打で3点目、なお満塁から徳丸がよく見極めて押し出し四球でリードを4点に広げる。

 これだけの援護があれば、濵﨑の投球はさらに冴える。先頭打者に安打を許しても冷静に後続を打ち取り、7回表に失策絡みで1点を失ったものの、108球の力投でしっかりと試合を作った。8回はルーキー左腕の伊原陵人が3者凡退に仕留め、9回には予選では抑えを担う田村幸之介が登板。キレ味鋭いボールでミキハウスに反撃を許さず、4対1の快勝で9年連続34回目の本大会出場を全国一番乗りで決めた。

 電電近畿時代の1965年に黒獅子旗を手にしたチームも、民営化後はベスト8が最高。日本一を勝ち取る戦力を擁しながら、昨年は一回戦でJR東日本東北に8回コールド負けを喫しただけに、今年こそ熾烈なトーナメントを力強く駆け上がってもらいたい。

(写真提供/小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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