Yahoo!ニュース

侍ジャパンは準決勝で“大恩人”メキシコと対戦【第5回ワールド・ベースボール・クラシック】

横尾弘一野球ジャーナリスト
WBC準決勝で、日本の対戦相手に決まったメキシコ代表はかつての大恩人だ。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝のメキシコ×プエルトリコは、2大会連続準優勝のプエルトリコが1回表にハビアー・バエズとエディ・ロザリオの連続アーチなどで4点を奪い、先発のマーカス・ストローマンも5回途中まで2失点と勝負強さを発揮する。しかし、7回裏に無死満塁のチャンスを築いたメキシコは、二死を取られたものの、イサク・パレデスとルイス・ウリアスの連続タイムリーで一気に5対4と逆転。終盤の反撃を凌いで準決勝に勝ち上がり、日本時間3月21日の8:00プレイボールで日本と対戦する。メキシコのベスト4入りは大会初である。

 日本とメキシコの過去の対戦を見てみると、2006年の第1回大会の第2ラウンドで激突。6対1で日本が快勝した。この大会で日本は初代王者になったのだが、第2ラウンドを突破して準決勝に進出できたのはメキシコのおかげだった。

 日本は第1ラウンドA組に入り、3戦全勝で1位の韓国に次いで、2勝1敗の2位で通過。渡米してアナハイムで行なわれる第2ラウンドに臨む。ここには、第1ラウンドA組から2チームが入ることになっていたが、メキシコ、アメリカ、カナダが2勝1敗で並び、失点率で1位がメキシコ、2位がアメリカとなっていた。

 そうして始まった第2ラウンドで、日本はまずアメリカと対戦。イチローの先頭打者本塁打で日本は勢いに乗り、序盤は3対1とリードしていたが、6回裏に同点とされ、8回表に「あの事件」が起きる。一死満塁から岩村明憲の左飛で、三塁走者の西岡 剛はタッチアップ。勝ち越しのホームを踏むのだが、アメリカ側から「西岡の離塁が早かった」とアピールされると、球審のボブ・デービッドソンがこれを認めて得点が取り消された。

 果たして、3対3のまま進んだ試合は、9回裏二死からアレックス・ロドリゲスのサヨナラ安打でアメリカが4対3でものにする。このあと、気を取り直した日本は6対1でメキシコに勝ち、初戦でメキシコに2対1と競り勝った韓国は、アメリカも7対3で退ける。2試合を終えた時点で、韓国が2勝、日本とアメリカが1勝1敗、メキシコが2敗。メキシコの4強入りはほぼ絶望的だったため、アメリカは2勝1敗になるはず。日本の準決勝進出は韓国からの勝利が絶対条件と言えた。

勝利が絶対の勝負に敗れたものの

 だが、日本は1対2で韓国に敗れる。プロ選手によるガチンコの世界一決定戦と謳われた大会で、日本は第2ラウンド敗退が濃厚となる。そして、3戦全勝の韓国とともに4強入りするであろうアメリカとメキシコの試合が翌日に行なわれる。ただ、この試合でメキシコは意地を見せ、投手戦を展開して2対1でアメリカに競り勝つのだ。アメリカ、日本、メキシコが1勝2敗で並び、当該対戦間の失点率の争いとなる。日本とアメリカは5失点なので、日本戦で6失点したメキシコは脱落。日本はアメリカ戦で9回二死からサヨナラ負けしたため、17回2/3を守っており、失点率は0.28に。17回で5失点のアメリカは失点率0.29であり、僅か0.01差で日本が2位となる。

 実は、国際大会において3チーム以上が同勝率で並んだ場合の順位決定方法は、それまで当該対戦間の失点数だった。WBCでもそれは変わらないはずだったのだが、第1ラウンドA組で日本が18対2で中国に8回コールド勝ちしたのを知った運営側が、アメリカがメキシコ、カナダと順位を争う際に、コールドゲームで攻守の回数に違いが出るのは不公平になるのではないかと考え、失点数ではなく、総失点を守ったイニング数で割る失点率に変更した。

 果たして、日本がアメリカ戦で9回に2アウトまで取り、メキシコがアメリカから2点を奪って勝ったことが、この0.01の差を生み出した。それまで通りの失点数なら、日本とアメリカは5で並び、当該対戦の勝敗でアメリカが準決勝に駒を進めていたところだ。大会途中での規約変更が、日本にとっては有利に働いたことになる。そうして、日本は準決勝で韓国にリベンジし、決勝ではキューバを破って初代王者となる。そんな奇跡ともいえるビクトリー・ロードで、キング・メーカーとなったのがメキシコなのだ。

 メキシコは、2013年の第3回大会でもアメリカに土をつけるなど、常にダークホース的な役割を演じているもののベスト4は初。日本は、かつての“大恩人”をリスペクトしつつも、1次リーグから醸成してきた一体感で頂上決戦への切符を手にしたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事