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プロ経験者がトヨタ自動車をシャットアウト!!【第46回社会人野球日本選手権大会デイリー・リポート9】

横尾弘一野球ジャーナリスト
埼玉西武に4年在籍した南川忠亮は、一昨年に復帰したJR四国でトヨタ自動車を完封。

 第46回社会人野球日本選手権大会9日目は、第1試合で大阪ガスと西部ガスが同業対決。先発マウンドを任された大阪ガスの河野 佳と西部ガスの村田 健が互いに持ち味を発揮したが、大阪ガスの打線が5回裏に村田をとらえる。

 先頭の三井健右がシャープなスイングでセンターへ先制ソロ本塁打を放つと、清水聖也も左中間を破って三塁へ達する。続く古川昂樹が四球の時、暴投で清水が生還。さらに、公家 響が左前安打、鳥飼力斗のバントが敵失を誘って満塁になると、一死後に児玉亮涼も左中間を割る当たりを弾き返し、3者が相次いでホームを駆け抜ける。

 ここで、西部ガスは投手を左腕の田中和正に代えたが、二死後に四番の末包昇大が左前に運び、児玉が還って6点目を挙げる。これだけの援護があれば、河野は余裕を持って投げられる。6回まで3安打で無失点を続けると、宮本大勢、中谷佳太とつないで西部ガスに1点も与えなかった。

 そして、勢いがついた打線は、7回裏に三井の二塁打などで3点を加え、続く8回裏にも一死満塁のチャンスを築く。児玉が左前に打ち返すと10対0となってコールドゲームが成立。大阪ガスは、2年越しの大会連覇に向けて、いよいよエンジン全開となった印象だ。

JR四国の南川忠亮はスクイズの1点を守り抜く

 第2試合は、トヨタ自動車とJR四国が対戦。JR四国が昨年の都市対抗で8強入りした四国銀行に続くためには、ロースコアの展開に持ち込むことが条件だと考えられたが、先発の南川忠亮がまさにそれを現実にした。

 キレ味抜群のボールでJR四国のエースに君臨し、2016年にドラフト5位で埼玉西武へ入団した右腕も、2019年のシーズン後に自由契約に。山田啓司監督に声をかけられて昨春から古巣に復帰したが、なかなか思い通りの投球ができなかった。この日も調子自体はよくなかったというが、「だからこそ丁寧に投げようとしたのがよかった」と南川。トヨタ自動車の渕上佳輝も一回戦に続く好投で、スコアボードにはゼロが並んでいく。

 ようやく6回裏、先頭の髙井智也が内野安打で出ると、笹田 仁が右前に落として無死一、三塁。ここで高木ちからはスクイズのサインにしっかり転がし、ほしかった先取点を奪う。そこからのチャンスは、トヨタ自動車の継投に阻まれたが、南川の投球はリードしても変わることなく、9回表も一死二塁で決定打を許さなかった。JR四国は第1回大会以来の8強進出。トヨタ自動車は、昨年の都市対抗に続いて打線が振るわなかった。

またも四番・向山基生のバットが勝利を引き寄せる

 ベスト8が出揃い、第3試合はNTT東日本と東邦ガスによる準々決勝だ。二回戦で6回まで75球を投げた東邦ガスの辻本宙夢は、「疲れはあったけど、自分が投げるつもりで調整し」、前日に山田勝司監督から先発を打診されると、「投げます」と頷いて決戦を迎える。

 その責任感も力になったのだろう。社会人屈指の破壊力を誇るNTT東日本の打線が、辻本のボールにやや力負けしているように見える。ただ、それを肌で感じていたNTT東日本の先発・熊谷拓也も、先に失点できないという気迫を前面に出して5回までを無失点で凌ぐ。

 NTT東日本は、6回からベテランの大竹飛鳥を投入。果たして、辻本と大竹も緊迫した投手戦を繰り広げ、9回をスコアレスで終えてタイブレークの延長にもつれ込む。

 表のNTT東日本は、桝澤 怜の左犠飛で1点を奪うと、四番の向山基生が左中間を真っ二つに割る二塁打で2点を追加。辻本が「自分では甘く入ったとは思っていない」という外寄りのストレートを「狙っていた」という若き主砲は、二回戦でもタイブレークで満塁弾を放っており、2試合続けてタイブレークで大仕事をやってのけた。

 その裏、東邦ガスも四番の若林俊充が左中間へ2点タイムリーを放ったが、NTT東日本は大竹から堀 誠へのリレーで1点のリードを守り切る。辻本が口にした「本当に悔しい」という思いは、東邦ガスの選手たちが全国の舞台で初めて味わった感情ではないか。強豪、名門と呼ばれるチームは、その感情がチームの成熟を支えている。東邦ガスも、これから日本一を狙える真の力をつけていくだろう。

(写真提供/小学館グランドスラム)

【7月12日の対戦カード】

◆準々決勝

9:00 三菱重工East×東芝

13:00 Honda×セガサミー

17:00 大阪ガス×JR四国

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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