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ドラフトの星・廣畑敦也も今シーズンをスタート!! 第75回東京スポニチ大会が3月8日に開幕

横尾弘一野球ジャーナリスト
今年の社会人を代表する右腕・廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)。

 昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で中止となってしまった第75回東京スポニチ大会が、3月8日に神宮球場をはじめ3会場で幕を開ける。詳しいスケジュールと出場チームは以下の通りだ。

 残念ながら無観客による開催だが、出場する16チームは、今シーズンの社会人野球に活気をもたらし、優勝して日本選手権の出場権を得ようと意気込んでいる。その中でも、最高のパフォーマンスを発揮しようと準備に余念がないのが、ドラフト指名解禁となる大卒2年目の選手たちだろう。

 その筆頭格は、三菱自動車倉敷オーシャンズの廣畑敦也だ。昨年の都市対抗中国二次予選では、第二代表決定戦でJR西日本を相手に延長11回を138球で投げ抜き、16年ぶり本大会出場の原動力となる。さらに、東京ドームでは開幕戦で前年優勝のJFE東日本を相手に、7安打7奪三振1失点の完投で見事に白星を手にする。スピンの効いたストレートは最速154キロを叩き出し、一躍、今年のドラフト上位候補に名乗りを上げた。

 驚いたのは、チームは二回戦で敗れるも、顕著な活躍を見せた新人に贈られる若獅子賞に選出されたことだ。同賞は、ほぼベスト4に進出したチームから選ばれるもので、二回戦敗退のチームから選ばれたのは過去ひとりしかいない。ちなみに、それは2000年の四之宮洋介(日産自動車)で、初打席から6打数連続安打、うち二塁打5本という活躍。廣畑の投球も、その四之宮に勝るとも劣らないインパクトがあったという。実際、選考にあたった高見泰範理事も「満場一致で、いの一番に決まりました」と目を丸くする。

 また、昨年の都市対抗では二回戦からトラックマンを導入したが、日本代表の石井章夫監督によれば、「投球の回転数など、トップの数字を残したのは栗林良吏(トヨタ自動車-広島)ですが、廣畑はそれに次ぐ2位」と、データの面でも廣畑のポテンシャルの高さは裏づけられている。

ドラフト上位候補の今季初マウンドは……

 玉野光南高時代から廣畑を知るスカウトは、「素材的には光るものがあった」と振り返る。実際、3年時には140キロ前後のキレのあるストレートを投げ込み、スラッガーの石井太尊(現・シティライト岡山)とともに注目される。だが、夏の岡山県大会は準決勝で岡山学芸館高に逆転サヨナラ負け。帝京大へ進学後もリーグ戦で好投を見せることはあったが、コントロールを含めて安定感が課題だったという。

 それが、三菱自動車倉敷オーシャンズへ加入するとフォーム修正のきっかけをつかみ、都市対抗予選でのブレイクにつながったというわけだ。前出のスカウトは、こんな見方もしている。

「コロナ禍で春からの公式戦が中止になり、多くの選手が見せ場を失った。でも、廣畑くんのような成長途上の投手は、実戦登板しながら力をつけていくよりも、じっくりと練習に取り組めたという点でプラスになったと思う。相手打線を抑える、失点を少なくするということを考えず、自分のスキルアップだけに集中できたはずですから」

 プロ入りするには、実力と同じくらい運や巡り合わせにも恵まれるか。それがポイントだという声も少なくないが、確かに都市対抗予選で負けていれば、出場チームに補強はされただろうが、東京ドームで先発できたかはわからない。そして、若獅子賞への選出が決勝開始前の会議で決まり、チームに通告されると、新幹線に飛び乗って上京し、表彰式にもユニフォーム姿で並ぶことができた。

 しかも、若獅子賞を手にした12月3日は、廣畑の23歳の誕生日である。自らの努力で、幸運を引き寄せる巡り合わせになったのだ。さて、そんなドラフトの星は、2年目にどんな投球を見せてくれるだろう。チームの初戦となる8日の大田スタジアムの第1試合は、リベンジに燃えるJFE東日本との対戦である。

(写真提供=小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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