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【落合博満の視点vol.24】オープン戦への取り組み方と新人が留意すべきこと

横尾弘一野球ジャーナリスト
巨人時代の落合博満のようなベテランにとって、オープン戦は試合に体を慣らす場だ。

 春季キャンプがスタートする2月1日から、ペナントレースが開幕するまでの約2か月間を、落合博満は大きく3つのブロックに分けたという。

https://news.yahoo.co.jp/byline/yokoohirokazu/20210201-00220260/

 そして、それぞれに取り組むテーマを設定し、それを丁寧に消化していく中で、第3ブロックにあたるオープン戦にはどう取り組んできたのだろうか。

「プロの世界でレギュラーと呼ばれる選手は、ケガや故障をしないよう十二分に注意しながら、状態を整えていくことが求められる。万が一、オープン戦の段階で故障によって戦列を離れることになれば、チームのペナントレース序盤の戦いにも影響してしまうから。その中で、野球勘を取り戻して試合に慣れ、ボールに対する恐怖感も払拭していく」

 落合の現役時代は、ペナントレースが終われば翌年のオープン戦まで実戦から離れていたし、シーズンオフは本当の意味で休養に充てていた。ゆえに、春季キャンプ中はまだ、140キロのボールを投げ込まれると、すべて自分を目がけて飛んで来るような錯覚にとらわれたという。だからこそ、その恐怖感を十分に取り除かなければならず、次のステップでは試合時間に体を慣らしていった。

「しかし、レギュラーになっていない選手にとっては、オープン戦はサバイバルレースの最終段階。いかにして首脳陣の目に留まるかが、シーズン序盤のスタートラインを分けるのだから、状態が万全ではないなどとは口にできない。場合によっては、軽度の故障やケガなら隠してチャンスを得ていく期間だろう」

期待を集める新人が気をつけるべきこととは

 一方、新人は自分のセールスポイントを強く示すことができれば、まずまずの出足と言っていい。ただ、一気に一軍定着からレギュラーを視野に入れるのなら、サバイバルレースに飛び込んでいくべきで、オープン戦は試練の場と位置づけられる。では、そんな新人は実戦の中で何を考えればいいのか。

「即戦力という前評判でも、新人はプロの経験がゼロ。これは、高校から大学、大学から社会人に進んだ新人も同じだろう。ある程度の基礎体力や技術は備えていても、上のレベルの試合を戦い抜く体力はまだ身についていない。だから、春季キャンプを無事に完走しても、オープン戦で躓く可能性はある。また、オープン戦まで順調でも、その間に対戦相手も対策を練ってくるから、開幕後もスムーズにいくとは限らない。つまり、どこかで壁にはぶつかるわけで、その壁は慣れることで突破できるものもある。だからこそ、結果を出せなくても、思い通りにプレーできなくても、心を病まないように気をつけなければいけない」

 実際、中日で監督を務めていた時の落合は、2010年に入団した大島洋平を開幕からスタメン起用した。その際は「何があっても使い続ける覚悟をした」と振り返り、出場選手登録を抹消したことはあったが、その理由を大島本人にもコーチにも説明したという。

「疲れでフォームが崩れるなどバランスが悪くなっていたので、再登録できるまでの10日間、リフレッシュの意味も込めて走ってこいと。ファームのコーチにも、10日で戻すからゲームに出場させる必要はないと伝えた」

 そうやって、どのチームでも首脳陣は期待の新人に配慮はする。それでも、「やるのは、考えるのは自分自身だ」と落合は言い、「新人が直面する課題の中には、環境に慣れれば解決するものが少なくない。だからこそ、思い通りの結果がでなくても考え過ぎず、『悪いのは使っている監督なんだ』というくらいの気持ちで、ただがむしゃらにプレーしていればいい面もある」と結ぶ。

 今年も、12球団の春季キャンプの様子は生中継されている。レギュラー組の練習や新人の取り組みを見る際、落合が指摘する部分を意識すると違った見方ができるかもしれない。

(写真=K.D. Archive)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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