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2020年のドラフト社会人投手の候補は、第二集団にも山本晃希、大江克哉、森田駿哉ら逸材が揃う

横尾弘一野球ジャーナリスト
183cm・92kgと体格にも恵まれた山本晃希(日本製鉄かずさマジック)。

 今年のドラフト候補のうち、トヨタ自動車の本格派右腕・栗林良吏、日本代表にも名を連ねるJX-ENEOSの左腕・藤井 聖がトップランナーと目されている社会人投手では、第二集団にも魅力的な逸材が揃っている。

 ストレートの球威なら山本晃希(日本製鉄かずさマジック)だ。山口県立の熊毛南高では、3年夏に四番エースで創部初の決勝に導き、岩国高に1対2と惜敗したものの力強い投球で注目される。九州国際大では、1年春からリーグ戦に登板。その後は、右肩痛もあって一気の飛躍とはいかなかったが、4年時にはフォームも固まり、14試合に登板している。

 昨年、日本製鉄かずさマジックの一員になると、千葉ロッテで通算87勝を挙げた渡辺俊介コーチ(現・監督)の下で投球術を身につけながら先発として頭角を現す。Hondaの補強で都市対抗のマウンドにも立ち、ストレートは150キロをマーク。スライダーやカットボールとのコンビネーションで安定感を高めていく。

 今季は、3月17日の北海道日本ハムとの交流戦で3回を無失点に抑えるなど、140キロ台中盤をコンスタントに計時するストレートを軸に好投しており、何事もなくシーズンが開幕していれば、目を見張る成長速度で秋にはトップに躍り出ていたかもしれない。

昨年の日本選手権では、優勝した大阪ガスを6回まで無安打に抑えた大江克哉(NTT西日本)。
昨年の日本選手権では、優勝した大阪ガスを6回まで無安打に抑えた大江克哉(NTT西日本)。

 ボールのキレ味なら、大江克哉(NTT西日本)の名前が挙がる。京都市立の塔南高3年春には府大会で8強入りするも、夏は初戦(二回戦)で敗退。それでも、花園大では1年春から10試合に登板し、2年春には初出場の大学選手権一回戦で、延長10回タイブレークで関西国際大に敗れたものの158球を投げ抜く。

 オープン戦で対戦したNTT西日本の大原周作監督に、打たれても真っ向勝負を挑み続ける「典型的なピッチャーの性格」を高く評価され、「2~3年かけてプロを目指そう」と声をかけられて入社。都市対抗近畿二次予選までにエース格に躍り出て、都市対抗、日本選手権とも一回戦の先発を任される。両大会ともベスト8進出の原動力となり、ルーキーとしての実績では栗林にも負けていない。

小気味のよさと強気のマウンドさばきが魅力の山上大輔(日本新薬)。
小気味のよさと強気のマウンドさばきが魅力の山上大輔(日本新薬)。

 ほかにも、大卒2年目の右腕では宮内春輝(日本製紙石巻)、釘宮光希(日本通運)、平川裕太(鷺宮製作所)、菅野秀哉(東京ガス)、伊藤優輔(三菱日立パワーシステムズ)、山上大輔(日本新薬)、山本隆広(日本生命)、川瀬航作(日本製鉄広畑)、馬場康一郎(シティライト岡山)らがどこまで力を伸ばすか。また、高卒3年目の右腕では小野大夏(Honda)、森井絃斗(セガサミー)、松本竜也(Honda鈴鹿)の成長が楽しみだ。

いつから実戦を行なえるかがカギになる

 どんなシーズンでも売り手市場のサウスポーでは、森田駿哉(Honda鈴鹿)が存在感を示している。富山商高3年夏の甲子園で2勝を挙げ、高校日本代表に選ばれて18Uアジア野球選手権大会に出場。当時からプロのスカウトにマークされ、法大でも1年春から登板したが、左ヒジを痛めて2年の冬に手術を受ける。4年時には何とか復活し、プロ志望届を提出するも指名はなかった。

左ヒジの手術から復活した森田駿哉(Honda鈴鹿)は、安定感をアピールしたい。
左ヒジの手術から復活した森田駿哉(Honda鈴鹿)は、安定感をアピールしたい。

 それでも、昨春に入社したHonda鈴鹿では春先からしっかりと戦力になる。瀧中瞭太(現・東北楽天)がフル回転したため、都市対抗、日本選手権とも登板はなかったが、アジア・ウインター・ベースボールでは7試合(先発3、リリーフ4)で社会人選抜最多タイの3勝、防御率2.31と目立つ数字を残す。

 さらなる飛躍が期待されていただけに、現状はもどかしいだろうが、昨シーズンに感じた課題の克服に取り組んでいるようだ。NTT東日本の佐々木 健、JR東日本の伊藤将司、坂巻 拳(三菱自動車岡崎)ら、スカウトが熱い視線を送る個性的なサウスポーの中でも、一番の輝きをアピールしたいところだ。

 ベテランのスカウトは、彼らの成長ぶりはもちろん、今年のドラフトはいつ、どんな形で野球のシーズンが開幕できるかによって大きく左右されると見ている。彼らが気持ちの入ったパフォーマンス披露し、目標に向かってステップアップするためにも、新型コロナウイルスの感染が一日も早く終息することを願いたい。

(写真/Paul Henry)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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