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プロから来た人、プロへ行く人、プロを目指す人――社会人ベストナインが決まる

横尾弘一野球ジャーナリスト
須田幸太(左)は最多勝利、中日へ入団する岡野祐一郎(右)は最優秀防御率に輝いた。

 2019年の社会人野球で顕著な活躍を見せた選手たちを讃える社会人ベストナインと社会人野球表彰の選手が、12月4日に日本野球連盟から発表された。一次選考にノミネートされた167名から、二次、三次選考を経て選ばれたベストイン(指名打者を含む10名)と投打各部門で最高の成績を収めた社会人野球表彰の選手は以下の通りだ。

【ベストナイン投手】【最多勝利投手賞】

須田幸太 [JFE東日本]

 早大から2009年にJFE東日本へ入社し、翌2010年の都市対抗ではHondaに補強されて優勝に貢献。2011年にドラフト1位で横浜DeNAへ入団すると、先発、リリーフで8年間プレーした。今春、古巣のJFE東日本に復帰。ベテランらしい安定した投球で、都市対抗ではリリーフで4勝をマークし、初優勝の原動力となった。表彰の対象大会で7勝を挙げ、最多勝利投手賞も獲得。

【ベストナイン捕手】

片葺翔太 [日本製鉄鹿島]

 八戸大(現・八戸学院大)から2009年に住友金属鹿島へ入社し、2010、11年の都市対抗でベスト4進出を経験。その後も投手陣の持ち味を存分に引き出すリードで実績を積み重ねてきた。苦しい時代もあったが、2016年からは都市対抗、日本選手権とも4年連続で出場。昨年の日本選手権で初勝利から一気に4強入りすると、今年も勝負強い打撃で4強入りに貢献した。

【ベストナイン一塁手】【最多本塁打賞】【最多打点賞】

沓掛祥和 [トヨタ自動車]

 2017年に慶大からトヨタ自動車へ入社すると、パワフルなフルスイングで打線の中軸を任されるようになり、昨年は四国大会で敢闘賞。四番に座った今季は、長野県知事旗大会で最高殊勲選手賞、北海道大会で首位打者賞に輝き、準優勝した都市対抗でも打撃賞を手にした。日本代表入りしてアジア選手権にも出場。最多本塁打賞(6本塁打)、最多打点賞(20打点)とトリプル受賞だ。

【ベストナイン二塁手】

峯本 匠 [JFE東日本]

 大阪桐蔭高3年夏の甲子園を制し、立大3年時には全日本大学選手権大会で優勝。今春にJFE東日本へ入社すると、都市対抗準決勝で延長10回に逆転サヨナラ安打を放つなど、無類の勝負強さを発揮して初優勝に貢献し、若獅子賞を手にした。打席で冷静に相手バッテリーの攻め方を分析するなど、常に日本一のチームでプレーしてきた野球観はピカイチ。今後の活躍も楽しみなルーキーだ。

【ベストナイン三塁手】

原田拓実 [日本生命]

 2014年に立正大から日本生命へ入社すると、2015年には都市対抗、日本選手権の連覇に貢献。16年ぶりに都市対抗予選で敗れた昨年も、三菱重工神戸・高砂の補強選手として準優勝し、二塁手でベストナインに選出された。今季は攻守にわたって安定感あるプレーを見せ、都市対抗ベスト8、日本選手権準優勝の原動力に。今回のベストナイン受賞者で唯一、昨年の二塁手に続いて2年連続の栄冠を手にした。

【ベストナイン遊撃手】

諸見里 匠 [日本通運]

 昨年、国学大から日本通運へ入社し、ダイナミックでありながら堅実なショートの守備は、対戦相手の視線も釘づけにすると評されている。今夏の都市対抗一回戦では、無安打に抑えられていた8回に左中間スタンドに一発を突き刺すなど、パンチ力を備えた打撃でもチームを牽引している。5月のベーブルース杯大会では、首位打者賞を手にした。

【ベストナイン外野手】

今川優馬 [JFE東日本]

 今春、8名の同期とともに東海大北海道からJFE東日本へ入社すると、思い切りのいいフルスイングで頭角を現し、都市対抗前に行なわれた日本代表候補とのテストマッチでは3本塁打を放って度肝を抜いた。そのパフォーマンスは東京ドームでも存分に発揮され、初優勝に貢献して若獅子賞に選出される。試合中にも見せる笑顔が印象的で、ニックネームは武井 壮と聞くと、思わずクスッと笑ってしまう。

【ベストナイン外野手】

古川昂樹 [大阪ガス]

 2016年に立命大から大阪ガスへ入社。レフト方向に流し打っても長打になるパワーと、コースに逆らわず打ち返せるバットコントロールを持ち味に成長し、今季は打線のポイントゲッターと期待されてきた。JFE東日本に都市対抗のリベンジを果たした日本選手権二回戦では、決勝本塁打を放つなど勝負強さを見せつけ、4度目の決勝進出で初優勝に貢献。来季は大会連覇を目指す。

【ベストナイン外野手】

茶谷良太 [鷺宮製作所]

 昨年は日本代表候補に選出されてアジア・ウインター・ベースボールに出場するなど、2017年に東洋大から鷺宮製作所へ入社した時から攻守にポテンシャルの高さを示してきた。日立市長杯大会で優勝した今季は、表彰の対象となる大会17試合で打率.390をマークするなど、コンスタントな活躍で打線の牽引役となった。さらなる飛躍が大いに期待されるスラッガーだ。

【ベストナイン指名打者】

内藤大樹 [JFE東日本]

 ミート技術やパンチ力に加えて非凡な打撃センスを備えており、2013年に青学大からJFE東日本へ入社すると、常に打線のキーマンとして実績を残してきた。若手が次々と台頭してきた今季は、スタメンから外れることもあるものの、シュアな打撃や選球眼のよさで得点源となっている。都市対抗準決勝では、同点本塁打にサヨナラ勝ちにつなげた好走塁など、王者となったチームには欠かせない存在だ。

【首位打者賞】

廣本拓也 [日本生命]=打率.434

 2011年に法大から主軸候補として日本生命へ入社。2015年には、東北大会で首位打者賞を手にすると、都市対抗と日本選手権の連覇に貢献し、日本選手権では打撃賞、一塁手で社会人ベストナインを受賞した。今季は廣本が下位にいることで、打線の厚みが増したという印象。熟練の技術と鋭い読みで2年ぶりの日本選手権決勝進出に貢献。惜しくも敗れたことが、10年目を迎える来季へのモチベーションになるだろう。

【最優秀防御率賞】

岡野祐一郎 [東芝]=0.87

 聖光学院高3年時に、大谷翔平(現・エンゼルス)らとともに18U世界選手権に出場。青学大を経て、2017年に東芝へ入社すると、すぐに主戦格となった。2017年に都市対抗4強、昨年は日本選手権4強、今季も都市対抗4強と、あと一歩で全国制覇には手が届かなかったが、昨年のアジア競技大会では銀メダル獲得に貢献するなど、圧倒的な実績を引っ提げて来季からは中日ドラゴンズの一員となる。

(写真提供/小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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