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ドライチが集大成のパフォーマンスを見せるか【第45回社会人野球日本選手権大会が開幕】

横尾弘一野球ジャーナリスト
都市対抗はJFE東日本とトヨタ自動車が決勝で対戦したが、日本選手権はどこが……。

 社会人野球の2019年シーズンを締め括る第45回社会人野球日本選手権大会が、10月25日に京セラドーム大阪で開幕する。都市対抗で初優勝を果たしたJFE東日本の夏秋連覇はなるか。出場32チーム中最多5回の優勝を誇るトヨタ自動車はどんな戦いを見せてくれるか。地元の近畿勢はどこまで勝ち進むか、ドラフト指名された選手たちの集大成のパフォーマンスは……。見どころ盛りだくさんの組み合わせは以下の通りだ。左端のカードから、2020年のドラフト候補と目される選手を紹介しながら展望していこう。

第45回社会人野球日本選手権大会組み合わせ
第45回社会人野球日本選手権大会組み合わせ

 3年連続出場で勝利を目指す沖縄電力と対戦するNTT西日本では、先発を任されている右腕の大江克哉が、勝負球のコントロールをどこまで磨き上げたか注目したい。都市対抗に続いて初出場するシティライト岡山の挑戦を受ける鷺宮製作所は、静岡大会で首位打者賞を手にした竹原祐太がリードオフを務める。打線に火を点けられるか楽しみだ。機動力を武器に優勝を狙う大阪ガスと昨年に続いて対戦するHonda鈴鹿は、大型左腕の森田駿哉、シュアな打撃の長野勇斗が実績を残している。どちらも都市対抗は初戦で敗れただけに、この大会では上位進出を果たしたい。JFE東日本では、都市対抗初優勝に貢献した岡田耕太峯本 匠平山 快今川優馬のルーキー・カルテットが元気。超攻撃野球で日本製鉄室蘭シャークスの投手陣を攻略できるか。

 8大会ぶり出場の伏木海陸運送を迎え撃つNTT東日本では、左腕の佐々木 健、堅守の遊撃手・上川畑大悟、勝負強さが光る向山基生が貴重な経験を積んでおり、一戦必勝で頂点を狙う。七十七銀行と対戦する日本通運は、イキのいい右腕・釘宮光希に登板機会があるか。三菱自動車岡崎には、左打ちのスピードスター・中野拓夢が入社。ショートの守備もフットワークがよく、マネージャーを含めて9名の新人が加入したパナソニックと激突する。佐藤直樹が福岡ソフトバンクから1位指名されたJR西日本と対戦するHondaは、吉田叡生が攻守のキーマン。アグレッシブなパフォーマンスを見せたい。

ルーキーの秋に活躍した逸材がプロへ進む

 積極的な新人の採用でチーム力を高めているJR四国では、右打ちのスラッガー・北尾勇人が早くも四番に座っている。ヤマハとロースコアの接戦に持ち込めるか。宮川 哲が埼玉西武1位、岡野祐一郎が中日3位と、二枚看板がプロ入りする東芝では、堅実な攻守で頭角を現してきた捕手の中村浩人が、日本代表の柴原健介にどこまで迫れるか。対する王子では、キレのあるボールを投げ込む右腕・中野貴仁、静岡大会で新人賞の長距離砲・秦 匠太朗が全国の舞台で結果を残せるか興味深い。東京ガスと日本生命は、ともに潜在能力の高い新人を採用した。東京ガスは左腕・寺沢星耶がクセ球、菅野秀哉が角度と重量感ある速球で存在感を示し、外野手の楠 研次郎は左打席から鋭い打球を左右に打ち分ける。日本生命も、四番を任された越智達矢、完成度の高い投球を見せる山本隆広、守備力に関してはすでにプロ級と評される船山貴大ら、実力派ルーキーが投打に戦力を底上げしている。1点を争う勝負になりそうだ。JR九州では、ショートの守りも軽快な萠拔哲哉がリードオフ、パンチ力を備えた山田遼平が四番を任されている。対戦相手の三菱重工神戸・高砂では、国立の広島大から入社した速球右腕・中田朋輝の成長に期待したい。

 名門・JX-ENEOSでは、日本代表入りした左腕・藤井 聖が着実に力をつけ、さらなる飛躍で1位も狙えると見られている。登板機会があれば、初勝利を目指す西部ガスの打線にどう挑むかチェックしたい。昨年の準決勝でも対戦したJFE西日本と日本製鉄鹿島は好勝負になるはず。JFE西日本は左の尾田恭平と右の吉川雄大の投球、日本製鉄鹿島は俊足が自慢の山田克志のバッティングがポイントになるか。クラブ王者・マツゲン箕島硬式野球部の挑戦を受けるトヨタ自動車は、リードオフに定着している逢澤峻介のシュアな打撃、都市対抗決勝で先発を任された栗林良吏の制球力をしっかり目に焼きつけたい。そして、左腕の浜屋将太を2位指名の埼玉西武へ送り出す三菱日立パワーシステムズでは、右腕の伊藤優輔が全国レベルでどんな投球を見せるか。対する日本新薬ではストレートに力がある右腕の山上大輔、パンチ力と勝負強さを見せている内野手・福永裕基が勝利に貢献できるか。ドラフト解禁の2年目にプロ入りする選手の多くは、ルーキーで出場した日本選手権で活躍している。そうした視点でダイヤモンド旗を目指す戦いを観るのも面白いだろう。

(写真提供/小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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