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マツゲン箕島硬式野球部が圧倒的な強さで5回目の日本一に!!【第44回全日本クラブ野球選手権大会】

横尾弘一野球ジャーナリスト
マツゲン箕島硬式野球部の選手たちは、西川忠宏監督(中央)を胴上げする。

 クラブチームの日本一を決める第44回全日本クラブ野球選手権大会は、全国の地区予選を勝ち抜いた16チームによって8月26日から4日間、メットライフドームで開催された。1990年代まで、クラブ野球は東日本の野球文化だった。しかし、バブル崩壊後の長引く経済不況で企業チームの休・廃部が相次ぐと、高校や大学を卒業した選手たちの受け皿として西日本でもクラブチームが次々と誕生する。

 2000年の第25回大会まで、クラブ選手権の優勝チームは関東19、東海3、東北2、中国1。1988年に優勝した山口県の五大化学クラブは、企業登録を予定していたチームが腕試しに出場したものであり、静岡以西で日本一を目指して活動するチームは僅かだった。

 だが、2001年以降18年間の優勝チームは、近畿11、関東5、北海道1、九州1と、近畿地区の台頭が目覚ましい。中でも、近畿勢として初めて日本一になった大和高田クラブ(奈良県)と2013年から隔年で優勝しているマツゲン箕島硬式野球部(和歌山県)が近畿勢の牽引役を担い、近年のクラブ野球のレベルを急上昇させた功労者なのだ。特に、2017、2018年と続けて決勝で対戦して1勝1敗。今大会も、この2チームを軸に優勝争いが展開されると見られた。

史上初めて、2017年に続く2回目の最高殊勲選手賞に輝いた和田拓也投手。
史上初めて、2017年に続く2回目の最高殊勲選手賞に輝いた和田拓也投手。

 昨年優勝で、開幕戦に登場した大和高田クラブは準々決勝で、やはり優勝経験のある所沢グリーンベースボールクラブに大苦戦。6回まで0-2とリードされたが、7回に連続スクイズで同点にすると、タイブレーク方式の延長11回に勝ち越す。かつて近鉄を指揮した佐々木恭介監督による投打にスキのない野球は、今年も日本一に向けて仕上がっているという印象だった。

 また、覇権奪還を目論むマツゲン箕島硬式野球部は、昨年までの和歌山箕島球友会からチーム名称を変更。選手たちの勤務先である大阪・和歌山に展開されているスーパーマーケットチェーン『マツゲン(松源)』をチーム名に冠し、いよいよ企業登録を視野に入れたかという勢いを感じさせる。やはり攻守に安定しており、危なげなく連勝してベスト4に進出する。

3年連続7回目の近畿決勝となり……

 最終日は、準決勝と決勝のダブルヘッダー。大和高田クラブは、前年の優勝地区に与えられる枠で10年ぶりに出場してきた同じ東近畿のOBC高島と対戦。OBCとは、横浜DeNAの大家友和コーチがゼネラル・マネージャーを務める“大家ベースボールクラブ”の意味で、元・阪神の野原祐也監督が指揮を執る。

 肥田直斗の初回先頭打者本塁打で幕を開け、先発の松林勇志はOBC打線を7回まで1安打に抑える好投。4-0となった時点で、大和高田クラブの決勝進出を疑った人はいなかったはずだ。

 ところが、8回表のOBC高島は内野安打から打線がつながり、5安打で同点に追いつく。さらに、二死一、二塁から今大会初スタメンの橋本風哉が左前に弾き返し、一気の大逆転で王者を沈めてしまう。

4試合で14打数9安打、.643の高打率で首位打者賞を手にした夏見宏季外野手。
4試合で14打数9安打、.643の高打率で首位打者賞を手にした夏見宏季外野手。

 一方、マツゲン箕島硬式野球部は、2008年創部の新鋭ながら、2016年には優勝しているビッグ開発ベースボールクラブ(沖縄県)も磐石の試合運びで6-2と下し、今年の頂上決戦はOBC高島とマツゲン箕島硬式野球部になる。決勝での近畿対決は、3年連続7回目だ。

 マツゲン箕島硬式野球部の打線は初回から活発に機能し、5回までに5点を挙げると、先発したエースの和田拓也は、OBC高島の打線を1安打に抑える好投。7回には守りの乱れにもつけ込んで2点を追加し、7回コールドで2年ぶり5回目の優勝を果たした。クラブ選手権の最多優勝は全足利クラブ(栃木県)の10回だが、5回目はそれに次ぐ2位という偉業だ。

 西川忠宏監督は「準優勝だった去年の悔しい思いを取り返すことができた」と安堵の表情を浮かべ、「チームの最大の目標である日本選手権での1勝に向け、さらに精進したい」と結ぶ。クラブ選手権の優勝チームは第45回社会人野球日本選手権大会への出場権を与えられるが、企業チームを相手になかなか勝利を挙げられないのが現状だ。投打に圧倒的な力を発揮したマツゲン箕島硬式野球部が、京セラドーム大阪でどんな戦いを見せてくれるか注目したい。

【第44回全日本クラブ野球選手権大会表彰選手】

最高殊勲選手賞=和田拓也投手(マツゲン箕島硬式野球部)※2017年に続く2回目の受賞

敢闘賞=山下聖也投手(OBC高島)

首位打者賞=夏見宏季外野手(マツゲン箕島硬式野球部)/打率.643

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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