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2019年ドラフトの注目株【1】――三拍子揃った社会人外野手・佐藤直樹(JR西日本)

横尾弘一野球ジャーナリスト
高卒2年目で定位置をつかみ、今夏の都市対抗では打率.429をマークした佐藤直樹。

 第90回を記念して36チームが出場した都市対抗野球大会は、千葉市代表・JFE東日本の初優勝で幕を閉じた。横浜DeNAから復帰し、ストッパーとして全5試合に登板した須田幸太が橋戸賞に輝く一方、二番・今川優馬(東海大北海道出)、三番・峯本 匠(立教大出)、四番・平山 快(東海大出)、六番・岡田耕太(駒澤大出)と、イキのいいルーキーが並ぶ打線で3度のサヨナラ勝ちと、JFE東日本のミラクルな快進撃が印象に残る中、スカウトの熱視線を浴びたドラフト候補たちも躍動した。

 決勝で勝利投手になった本田健一郎(JFE東日本)をはじめ、トヨタ自動車に補強されて2試合に先発した立野和明(東海理化)、唸りを上げる速球でベスト4入りした宮川 哲(東芝)、本調子を欠くもベスト8入りに貢献した河野竜生(JFE西日本)ら、投手では何人もの名前が挙がる。

入社2年目で定位置を確保するなど、着実な成長を続けてドラフト指名を待つ。(写真提供/小学館グランドスラム)
入社2年目で定位置を確保するなど、着実な成長を続けてドラフト指名を待つ。(写真提供/小学館グランドスラム)

 反対に、捕手も含めた野手はやや景気が悪かったのだが、「彼は別格」と高評価が集中したのが、JFE西日本に補強され、三番を任された佐藤直樹(JR西日本)だ。

 報徳学園高では1年時からベンチ入りし、捕手から外野手に転向。自慢の強肩と俊足でレギュラーとなる。3年夏の兵庫県大会も、優勝した市立尼崎高に準々決勝で0-1と敗れ、甲子園の土を踏むことはできなかった。それでも、二回戦では須磨翔風高の才木浩人(現・阪神)から一発を放つなど、三拍子揃った逸材として注目されていた。ちなみに、小園海斗(現・広島)は2学年後輩である。

 2017年にJR西日本へ入社すると、センスのよさで出場機会を与えられ、2年目には定位置を確保。都市対抗には九番ライトで出場し、JR北海道硬式野球クラブとの一回戦ではタイムリー安打を放つも、二回戦、準々決勝では無安打と全国レベルの厳しさを思い知らされる。それでも、8月下旬の広島大会では広島東洋カープとの決勝で2本の三塁打を放つなど、優勝に貢献して最高殊勲選手賞に選ばれた。

都市対抗で得点圏打率.444の集中力が魅力

「気持ちの面でもムラをなくし、確実性を高めて出塁率をアップさせたい」

 そう誓ってドラフト指名が解禁となる今季に臨んだ佐藤は、3月7日の社会人オール広島の一員として、広島東洋のアドゥワ誠から右中間へタイムリー三塁打、9日の広島東洋との練習試合ではケーシー・ローレンスとエマイリン・モンティージャから計3安打と、絶好のアピールでスタートを切る。

 都市対抗は予選敗退を喫したものの、JFE西日本に補強されて三番に座り、日本製鉄広畑との一回戦、鷺宮製作所との二回戦とも5打数2安打1打点。敗れた東芝との準々決勝も、チーム唯一の得点を叩き出すなど4打数2安打1打点で、大会優秀選手に選出される。高校時代から追いかけているというスカウトは、「着実な成長もさることながら、得点圏打率.444が示すように、勝負どころで見せる集中力が大きな魅力」と絶賛する。

 今月23日からは、第58回JABA広島大会が開催される。26日には同じブロックに入った広島東洋との対戦もあるだけに、どんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみだ。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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