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2019年のドラフト候補・河野竜生が7回13奪三振の快投【アジア・ウインター・ベースボール2018】

横尾弘一野球ジャーナリスト
日本選手権で準優勝したJFE西日本の河野竜生は、2019年のドラフト注目株だ。

 台湾・台中市の洲際棒球場で行なわれているアジア・ウインター・ベースボール(AWB)の第6日で、2019年のドラフト候補が躍動した。11月に開催された第44回社会人野球日本選手権大会で、JFE西日本の準優勝に貢献した20歳の左腕・河野竜生だ。

 鳴門高では1年時から3年連続で夏の甲子園のマウンドに立ち、1、2年は初戦で敗れたものの、3年時は緩急自在の投球でベスト8進出の原動力となる。開幕戦だった佐久長聖高との一回戦で2失点完投勝利を挙げ、二回戦では選抜優勝の智辯学園高と対戦。最速145キロのストレートを軸に強力打線を5安打2点に抑え、見事な逆転勝ちにつなげる。これで注目度が上昇すると、次なる飛躍の場を社会人に求めた。

 河野が入社した時のJFE西日本は、経験豊富なベテランを中心に投手陣は駒が揃っていた。まずは174cm・75kgと、決して恵まれているとは言えない体に地力をつけるところから取り組むかと思われた。しかし、投手出身で新任だった山下敬之監督は「完成されている投手」と河野を評し、積極的に公式戦で起用。5月のベーブルース杯大会で先発を任されると、伏木海陸運送を相手に1失点完投勝利でデビューを飾った。

 都市対抗予選は敗れたが、三菱重工広島に補強され、思わぬ展開で全国デビューする。先発した絶対的エースの鮫島優樹が初回から日本通運に2点を奪われ、続く2回表も一死満塁で押し出し死球を与える。もう追加点をやれない局面で町田公二郎監督(元・広島コーチ)が二番手に送ったのが河野だった。内野ゴロと安打で2点を追加されるも、6回まで2安打無失点の投球には、東京ドーム初登板の18歳とは思えぬ勢いと安定感が見て取れた。

2試合連続完封で日本選手権準優勝に導く

 そうして、瞬く間にJFE西日本のエース格となった河野は、今季も都市対抗予選の壁には跳ね返されたが、今度はJR西日本に補強されて大舞台に立つ。一回戦は3点リードの9回表に登板し、同点3ランを被弾したが、その裏にサヨナラ勝ち。幸運な初勝利に笑顔はなかった。それでも、二回戦の先発を任されると、優勝候補の東芝を相手に6回1失点の好投。ベスト8進出に貢献した。

「一回戦ではチームに迷惑をかけたので、今度は勝利を引き寄せられるよう、行けるところまで行こうと飛ばした。東芝には打たれると思ったので、コーナーを狙わずに攻めました」

 そう、河野の成長を支えているのは、結果を恐れずに力を出し切ろうとする姿勢なのだ。日本選手権予選では、この経験を生かし、2年続けて都市対抗予選で敗れた悔しさを晴らすかのように、投手陣の軸として代表権の原動力に。満を持して乗り込んだ京セラドーム大阪では、一回戦で宮崎梅田学園を3安打13奪三振でシャットアウトする。他の投手も奮起して二回戦を勝ち上がると、準々決勝では名門の日本生命に8安打を許しながら、要所を抑えて2試合連続完封だ。そして、決勝でも三菱重工名古屋を9回まで1点に抑えた。惜しくも延長で敗れたが、敢闘賞に輝く活躍でAWBに出場する日本代表に選出される。

 11月12日に日本選手権を終え、1週間後には日本代表に合流。シーズン通した疲労もあるはずで、27日のウエスタン選抜戦では4点リードの8回裏に登板すると、四球から3安打で3点を失ってしまう。

 だが、29日のKBO(韓国野球委員会)選抜戦では、台湾のマウンドにも順応し、先発で7回を1失点。ストレート、変化球とも丁寧に低目に集め、13三振を奪う快投を披露した。最近の社会人からは、山岡泰輔、田嶋大樹(ともにオリックス)、鈴木博志(中日)ら高卒3年目でドラフト1位指名された投手が、プロでもまずまずの働きを見せている。河野のパフォーマンスは、彼らの3年間に優るとも劣らぬ安定感があり、来季のさらなる飛躍も楽しみだ。いや、その前に、AWBでまだまだ目を見張る投球を見せてくれるかもしれない。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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