Yahoo!ニュース

大谷翔平の実兄・龍太が初出場を決める【第89回都市対抗野球大会出場32チームが決定】

横尾弘一野球ジャーナリスト
都市対抗初出場を決め、盾を受け取るトヨタ自動車東日本の大谷龍太(撮影=松橋隆樹)

 6月12日に周南市野球場で行なわれた中国第二代表決定戦でJR西日本が勝ち、第89回都市対抗野球大会の出場32チームがすべて出揃った。いくつもの修羅場を潜り抜けてきた大人の選手たちが勝って泣き、負けて泣く戦いは今年も熾烈を極め、史上最多60回目の出場を目指した日本生命、大会史上初の通算100勝に王手をかけているJX-ENEOS、3回の優勝を誇るヤマハ、2016年に準優勝した日立製作所など名門が涙を呑む。

 その一方で、あと1勝の厚い壁に跳ね返されてきた鷺宮製作所が9年ぶり、創部7年目のトヨタ自動車東日本は嬉しい初出場を決めた。

 トヨタ自動車東日本の前身は関東自動車工業で、静岡県裾野市の工場では硬式野球部が活動していた。1992年には日本選手権に出場したものの、2002年限りで活動を休止する。この時代にプレーしていた三鬼賢常が岩手工場に転勤し、地元のクラブチームでプレーしていたが、2012年に監督として岩手工場で野球部を復活させる。7月に同社はセントラル自動車とトヨタ自動車東北を吸収合併し、トヨタ自動車の完全子会社としてトヨタ自動車東日本に社名を変更。野球部も現在のチーム名になった。

創部7年目のチームを牽引したのは“二刀流”の実兄

 そのチームを、コーチ兼外野手として三鬼とともに育ててきたのが大谷龍太である。顔を見てピンと来た人も多いだろう。そう、今季からメジャー・リーグでも投打の二刀流でプレーしている大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)の実兄だ。

 地元の前沢高を卒業後、古豪の水沢駒形野球倶楽部でプレーし、プロ入りを目指して2010年には四国・九州アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)の高知ファイティングドッグスへ入団。2年間プレーしたあと創部時にトヨタ自動車東日本へ入社する。

 この年、弟の翔平は大きな注目の中、ドラフト1位で北海道日本ハムへ入団。翌春から、プロの世界でも投打に着実な成長を見せていく。そんなサクセス・ストーリーを尻目に、全国の舞台とは無縁だった大谷は、トヨタ自動車東日本で都市対抗に出場しようと、必死のプレーでチームの牽引役を担ってきた。

 偉大な弟が活躍の舞台を野球の本場へ移したシーズン。強豪を相手に接戦を演じられるようになったトヨタ自動車東日本は、6月1日に地元で開幕した都市対抗東北二次予選で快進撃を見せる。

 一回戦で、JR秋田に大谷の2本の長打などで5-1と快勝すると、準決勝ではJR東日本東北と対戦。JR東日本東北の先発は、昨年の日本選手権で大会史上初の完全試合を達成した西村祐太だったが、1回裏に1点を先制すると、3回裏には一挙5点を挙げるなど打線が爆発。10-4の大差で第一代表決定戦に進出する。

 そして、第一代表決定戦では日本製紙石巻と1点を争う好ゲームを展開。5回表に勝ち越すと、8回表にはダメ押しし、見事に4-2で東京ドームへの切符を初めて手にした。

 野球人生初の晴れ舞台へ、大谷の胸は躍る。対戦するチームはどこか、組み合わせ抽選会は6月17日に東京都内で実施される。

【第89回都市対抗野球大会出場チーム】

推 薦/東京都=NTT東日本(3年連続42回目)

北海道/札幌市=JR北海道硬式野球クラブ(4年連続15回目)

東 北/金ケ崎町=トヨタ自動車東日本(初)

東 北/仙台市=七十七銀行(2年ぶり12回目)

北関東/太田市=SUBARU(3年ぶり27回目)

北関東/鹿嶋市=新日鐵住金鹿島(3年連続18回目)

南関東/狭山市=Honda(2年連続32回目)

南関東/さいたま市=日本通運(4年連続43回目)

南関東/君津市=新日鐵住金かずさマジック(2年ぶり12回目)

東 京/東京都=鷺宮製作所(9年ぶり13回目)

東 京/東京都=セガサミー(2年連続10回目)

東 京/東京都=東京ガス(6年連続21回目)

東 京/東京都=JR東日本(9年連続21回目)

西関東/川崎市=東芝(10年連続40回目)

西関東/横浜市=三菱日立パワーシステムズ(3年連続10回目)

東 海/豊田市=トヨタ自動車(4年連続20回目)

東 海/春日井市=王子(2年ぶり16回目)

東 海/名古屋市=東邦ガス(2年連続12回目)

東 海/大垣市=西濃運輸(5年連続37回目)

東 海/名古屋市=JR東海(3年ぶり28回目)

東 海/鈴鹿市=Honda鈴鹿(3年連続23回目)

北信越/長野市=信越硬式野球クラブ(2年ぶり23回目)

近 畿/神戸市・高砂市=三菱重工神戸・高砂(5年連続35回目)

近 畿/大阪市=大阪ガス(2年ぶり24回目)

近 畿/京都市=日本新薬(5年連続35回目)

近 畿/門真市=パナソニック(3年連続52回目)

近 畿/大阪市=NTT西日本(4年連続29回目)

中 国/東広島市=伯和ビクトリーズ(5年ぶり9回目)

中 国/広島市=JR西日本(3年連続4回目)

四 国/高松市=JR四国(2年連続11回目)

九 州/大津町・Honda熊本(3年連続12回目)

九 州/福岡市・西部ガス(4年連続4回目)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事