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【第88回都市対抗野球大会第7日】トヨタ自動車の連覇が消え、JR東日本の田嶋は2試合連続完封

横尾弘一野球ジャーナリスト
3安打1打点の打撃と攻守で、NTT東日本の8強入りに貢献した福田周平

 二回戦は、3試合すべてが関東勢と東海勢の対戦。トヨタ自動車は連覇に近づくのか、それともNTT東日本が昨年のリベンジを果たすのか。ベスト8を目指す戦いは白熱した。

二回戦/東京都・NTT東日本 6×3 豊田市・トヨタ自動車

 トヨタ自動車の先発は、絶対的エースの佐竹功年ではなく小出智彦。東京ドーム初登板の左腕を、打線も早々に援護する。2回裏には二死一塁から北村祥治が右中間を破る二塁打で1点を先制。失策から同点にされた直後の3回裏にも、一死一、三塁から内野ゴロの間に2点目を挙げた。

 3回表のピンチを二番手・竹内大助で凌ぎ、4回からは川尻一旗に交代。前半は2対1のまま折り返した。

 早く追いつきたいNTT東日本は6回表、越前一樹がレフトへ二塁打を放つと、ベテランの北道 貢がすかさず中前に打ち返して同点に。トヨタ自動車は、ここで佐竹を投入する。それでも、NTT東日本は7回表に先頭の伊藤亮太が技ありの右前安打を放ち、一死から二盗を決め、二死後に代打・高野 翔がライト線に弾き返して1点を勝ち越す。

 初めてリードを奪ったNTT東日本は、4回から登板した末永彰吾が6回裏一死一、三塁のピンチを併殺で凌ぐなど、トヨタ自動車の打線に決定打を許さない。そして、打線も8回表に二死から一、二塁にすると、伊藤がまたも巧みにライト線へ運び、2者が還ってリードを3点に広げる。

 トヨタ自動車もその裏に1点を返すが、9回表にもダメ押しの1点を加えたNTT東日本が佐竹を攻略し、昨年は都市対抗、日本選手権とも敗れたトヨタ自動車に借りを返した。

二回戦/東海市・新日鐵住金東海REX 3×0 狭山市・Honda

 22年ぶりの勝利を挙げた新日鐵住金東海REXは、昨年トヨタ自動車に補強されて優勝を経験した畠山翔平が先発。左右、高低に揺さぶる投球で、破壊力のあるHondaの打線に的を絞らせない。対するHondaの先発・幸良 諒は、1回裏一死から連打で一、二塁にされると、二死後に中嶋智仁に左前安打を許して1点を先制される。

 新日鐵住金東海REXは、3回裏一死から亀山一平(王子から補強)がレフトポール際にソロ本塁打を放って2点目を奪うと、畠山は先頭打者に二塁打を許しても後続を落ち着いて討ち取っていく。すると、6回裏にも福田晃規のタイムリーで1点を加え、7回からは二番手に鈴木博志(ヤマハから補強)を注ぎ込む。

 コントロールにはやや不安があるものの、150キロ超のストレートで押す鈴木博は、いきなり四球と安打で一死二、三塁とされたが、このピンチを無失点で切り抜けると波に乗る。8、9回とも四球を出しながら後続を抑え、ベスト8入りに貢献した。

 打線は水ものと言われるように、一回戦で14安打10得点をマークしたHondaは、この試合では終始、新日鐵住金東海REXの投手に翻弄されてしまった。

二回戦/東京都・JR東日本 3×0 名古屋市・三菱重工名古屋

 一回戦で1安打完封したJR東日本のエース・田嶋大樹が、チームを勝たせる投球を続けられるか。それとも、補強も加わってパワーアップした三菱重工名古屋の打線が火を噴くか。スタンドの期待に応えたのは2試合連続シャットアウトの田嶋だったが、ポイントとなる場面は2つあった。

 一つ目は2回表。三菱重工名古屋は一死から中田亮二(JR東海から補強)が死球で出塁し、二盗に成功する。二死から安田亮太が中前安打を放つも、拜崎 諒の好返球で中田はホーム手前でタッチアウトになる。

 二つ目は4回表。先頭の吉田承太が左前安打、佐藤二朗(ヤマハから補強)と中田が連続死球で無死満塁とする。しかし、小柳卓也は空振り三振、伊藤隆比古は二塁ゴロ併殺に倒れ、ここも無得点に終わってしまう。

 その間、3回表一死一、三塁から丸子達也の中前安打でJR東日本は1点を先制し、「自分が無失点なら絶対に負けない」と意気込む田嶋はモチベーションを高めた。

 二番手の西納敦史が4回から7回までJR東日本打線のタイミングを外していただけに、どちらかのチャンスで先制していれば、三菱重工名古屋の勝機はうんと広がったであろう。ただ、この日の田嶋は、無死満塁を無失点で切り抜けられるほど心技に充実していた。そこに8回裏一死一、二塁から、四番の松本 晃が左中間へ二塁打。2者が相次いで生還し、3対0となったところで勝負は決まったか。

 昨年準優勝の日立製作所を倒した三菱重工名古屋だったが、散発の4安打では自分たちのペースに持ち込むことができなかった。一方のJR東日本は、田嶋の大胆かつ繊細な投球と強固なディフェンスで、3年ぶりに準々決勝へ駒を進めた。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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