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【第88回都市対抗野球大会第4日】三菱日立PSとJR西日本は逆転勝ち、NTT東日本は逃げ切る

横尾弘一野球ジャーナリスト
JR西日本は、9回表二死一、二塁から小原礼史が起死回生の逆転3ランを放つ。

勝利を手にするまで、あと少し。だが、そんな終盤に大きく流れが変わってしまうのが野球の怖さであり、醍醐味と言えるだろう。第88回都市対抗野球大会第4日は、そんな勝負の厳しさを再認識させられる試合が続いた。

一回戦/横浜市・三菱日立パワーシステムズ 5×4 大阪市・日本生命

1回表一死三塁から暴投で先制した日本生命は、続く2回表二死満塁で、大阪ガスから補強した青柳 匠が中前に弾き返して2点を追加。東京ドーム初登板で先発を任された阿部翔太にとっても、心強い援護を見せる。対する三菱日立パワーシステムズは、2回裏にJX-ENEOSから補強した若林晃弘のソロ本塁打で1点を返し、前半は日本生命のリードで折り返す。

6回裏二死から、村山正誠の二塁打と対馬和樹の三塁打で1点差とした三菱日立PSは、8回裏にも二死一、二塁から対馬の左前安打で同点に。さらに、代打の加治前竜一がライトへライナーのヒットを放つと、二塁走者の村山が間一髪ホームに還って逆転。鶴田翔士も右前に運んでリードを2点に広げた。

2013年、昨年と三菱日立PSと一回戦で対戦して敗れ、何とか3度目の正直で勝利を挙げたい日本生命は、9回表に先頭の神里和毅がレフトオーバーの三塁打を放つと、青柳の内野安打で1点。なお攻め込みたいところだったが、代打・皆川 仁の一塁ライナーで一塁走者が飛び出し、併殺となって万事休した。

終盤のチャンスをものにした三菱日立PSの攻撃は見事。日本生命は、継投のリスクにつけ込まれてしまう結果となった。

一回戦/広島市・JR西日本 5×4 大阪市・NTT西日本

JR西日本の先発は、昨年の日本選手権でノーヒットノーランを達成した加賀美希昇。NTT西日本の先発・吉元和彦との投手戦も予想されたが、2回裏にNTT西日本の打線が鏡に襲いかかる。四番・高本泰裕の中越え二塁打を号砲に、5連打と犠飛で一気に4点を挙げる。

何とか追いつきたいJR西日本だったが、吉元の緩急を駆使した投球の前に、5回までは目立つ好機を築くことができなかった。ようやく6回表一死から、代打・亀井優輝の三塁打から3連打などで2点を返す。それでも、吉元に7、8回は3者凡退に斬って取られ、残す攻撃は9回のみとなってしまう。

だが、その9回表にドラマが待っていた。先頭の石嵜健人が内野安打で出塁し、一死後に四番の田村 強が左前安打でつなぐ。代打の蔵桝孝宏は一塁ライナーで二死となるが、伯和ビクトリーズから補強されて六番に入った小原礼史が、吉元が投じた114球目、アウトコースへのストレートを強振すると、打球は右中間スタンドに飛び込む逆転3ラン本塁打に。その裏を湧川雄貴が3人で抑え、JR西日本は2年連続で一回戦を突破した。

一回戦/東京都・NTT東日本 7×5 神戸市・高砂市・三菱重工神戸・高砂

NTT東日本打線の破壊力と、三菱重工神戸・高砂の守安玲緒の安定感。どちらが上回るかが勝敗の行方を決めると思われた試合は、1回表に新人・藤原隆蒔の2ラン本塁打で三菱重工神戸・高砂が先行する。だが、その裏のNTT東日本も、福田周平の安打と二盗、喜納淳弥のタイムリーで1点を返す。

2、3回は守安が持ち味を発揮したが、4回裏の先頭に四球を与える。これをNTT東日本は逃さず、二塁打と犠飛で同点に追いつく。さらに、5回裏に福田周の三塁打から二死満塁にすると、幸運にも敵失で2点を勝ち越した。

守安が6回で降板すると、NTT東日本は三菱重工神戸・高砂の3投手から3点を奪い、7×2と安全圏に入ったかと思われた。しかし、この日は終盤に大きく流れが変わるのだ。9回表の三菱重工神戸・高砂は、NTT東日本の四番手・西村天裕に4安打を浴びせて2点をもぎ取り、ベテランの末永彰吾を引っ張り出す。内野ゴロの間に1点を追加し、2点差として二死二塁。一打同点のチャンスを築いて打席には先制弾の藤原が入ったが、ここは末永が落ち着いて討ち取り、NTT東日本は辛くも逃げ切った。

一昨日は接戦、昨日はシャットアウト。3試合が似た展開になる今大会の4日目は、近畿勢にとって悔しい一日となった。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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