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台風や災害時でなくても美味しい 無駄にならない「非常食」とは?

山路力也フードジャーナリスト
味気ない非常食とはもうおさらば。(写真:イメージマート)

使わずに済むに越したことはないが…

 台風が迫り来る中、災害対策は万全に行っているだろうか。台風や震災などの災害時には、電気やガス、水道などのライフラインが止まる可能性があり、それに備えて普段から飲料水や保存の効く食料などを備蓄しておくことが必要だ。世の中には「非常用袋」「防災セット」などが売られており、その中には「非常食」も含まれている。

 一般的な「非常食」と言えば、「乾パン」「氷砂糖」「レトルト食品」「缶詰」など、長期常温保存が可能でかつ加熱調理などが原則不要なものになるが、「非常食」として売られているものは、美味しさよりも保存性や利便性が優先されているものが少なくない。

 災害時には美味しさなどと言っている場合ではないが、幸いにも非常食を使わずに済んだ場合、消費期限が迫っている食品を日常で食べることになる。その時に味気ないものを食べるよりも、せっかくならば美味しいものを食べたいと思うだろう。

 そして非常時であっても味気ないものよりは、美味しいものが食べたいだろう。「非常食」と捉えて準備するから、どうしても味気ないものが揃ってしまう。「美味しいもので非常時にも使える」と考えて食品選びをしておくと、いざという時にもそうでない時にも美味しく食べることが出来るのだ。

カレーライスがまるごとレトルトパックの中に?

ごはんが最初からカレーと一緒になっている『そのまんまOKカレー』。(画像:三徳屋)
ごはんが最初からカレーと一緒になっている『そのまんまOKカレー』。(画像:三徳屋)

 レトルト食品は常温で長期保存が出来るが、カレーライスを食べようと思った場合には、カレーの他にご飯が必要となる。さらに常温で食べようとするとなかなか難しいが、金沢カレーのレトルト商品で知られる『三徳屋』(石川県金沢市)の『そのまんまOKカレー』は、カレーとご飯が一緒に入っているので、そのままカレーライスとして食べることが出来る。

 常温でも美味しく食べられるように、低温だと凝固しやすい動物性油脂を使わずに植物性油脂で仕上げてあるのもポイント。ご飯は米粉やでんぷんを米粒状に加工してある。さらに5年間の長期保存が可能なので、非常食としても十分使うことが可能だ。

 また、大麦や小麦などの穀物を扱う『はくばく』(山梨県中央市)の『冷製もち麦のポタージュ粥』は、食物繊維が豊富なもち麦と野菜をふんだんに使用して、ポタージュスープ風のおかゆに仕上げたアイディア商品。最も優れた非常食・災害食に贈られる「災害食大賞2022」〈ローリングストック部門〉(主催:一般社団法人防災安全協会)でも最優秀賞を獲得している。

あのご当地B級グルメが缶詰に?

静岡県富士宮市のご当地グルメ「富士宮焼きそば」が缶詰に。(画像:ホテイフーズ)
静岡県富士宮市のご当地グルメ「富士宮焼きそば」が缶詰に。(画像:ホテイフーズ)

 長期保存も可能で美味しさもあり、非常時にも平時にも大活躍するのが缶詰。今やありとあらゆる食品が缶詰になる時代。缶詰メーカーは個性豊かな商品を次々と開発しているが、焼鳥の缶詰で知られる『ホテイフーズ』(静岡県静岡市)が2022年8月に発売したのが、静岡県富士宮市のご当地グルメを缶詰にした『富士宮焼きそば』だ。

 コシのある太麺はもちろん、キャベツや肉カス、だし粉など富士宮焼きそばには必須の具材も入れた。缶詰で麺といえば、コンニャクなどの代替麺を使うことが一般的だったが、この商品のために小麦粉の配合や加水率などを調整して缶詰専用の小麦粉麺を開発。温めてももちろん美味しいが、常温でも美味しく食べられるように仕上げた。

 また、建築資材メーカーの『杉田エース』(東京都墨田区)が展開する備蓄食ブランド『IZAMESHI』では、ユニークなアプローチの缶詰商品を数多く展開。「鶏五目ごはん」や「牛そぼろごはん」などのご飯物の他にも、お湯を入れるだけで本格的な手延べうどんを楽しめる缶詰などが人気を集めている。

「ローリングストック」の意識で食品ロスを無くす

日常の食生活で使えるものを回していく。
日常の食生活で使えるものを回していく。写真:イメージマート

 これまで、災害時などの備蓄は3日分あれば十分と言われていたが、甚大な被害が及ぶ可能性のある場合は、1週間以上の備蓄が望ましいとも言われている。とは言え、保存食だけで1週間以上の食料を常備しておくのはなかなか難しい。その上で大切なのは「ローリングストック」の意識だ。

 「ローリングストック」とは、日常で消費しながら備蓄していく方法のこと。普段から少し多めに缶詰やレトルト食品などの食材を買っておいて、それらを日常の食生活でも使い、使ったら使った分だけ買い足し、一定量の食料を常に備蓄しておく。こうすることで、非常時であっても日常と変わらぬ食生活をすることが可能になるのだ。

 「ローリングストック」では在庫管理が重要だ。消費期限を分かりやすくして、古いものから順に消費していき、その都度新しいものを買って補充していく。これによって無駄な買い足しやいざという時に不足することもなく、本来の意図である「非常食」として機能することが出来る。

 備えあれば憂いなし。賢く無駄なく食料を備蓄して、美味しい災害対策が出来るようにして欲しいと切に願う。

【参考資料:ローリングストックについて知りたい方へ(農林水産省)

【参考資料:ローリングストックとは(防災首都圏ネット)

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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