屋台から生まれた人気店『Shin Shin』

 豚骨ラーメン店が軒を連ねる福岡で、地元客はもちろん県外からの観光客や外国人観光客にも絶大なる支持を受けている人気ラーメン店『Shin Shin(しんしん)』(天神本店:福岡市中央区天神3-2-19)。現在では福岡市内に5店舗、北九州市に1店舗を構えている。

 店主の中牟田信一さんは、学生時代に中華料理店のアルバイトをしたのが飲食との出会い。卒業後、一度就職するもアルバイト時代の店長に誘われてラーメン屋台で働くことになった。屋台や店舗を任されていく中で飲食の魅力にどんどん惹かれ、2003年に独立して天神の裏路地で『Shin Shin』を創業。連日行列を作る人気店へと育て上げた。

 「もともとラーメンは好きだったんですが、まさか飲食をやるとは思いませんでした。しかし屋台やお店を任されていくようになって、自分でもやってみたいと思い独立しました」(Shin Shin 店主 中牟田信一さん)

理由1:圧倒的なメニューの豊富さ

昼夜を問わず人気の『Shin Shin 天神本店』(福岡市)。
昼夜を問わず人気の『Shin Shin 天神本店』(福岡市)。

 『Shin Shin』の人気の理由の一つとしてあげられるのがメニューの多さだ。一般的に福岡のラーメン店はラーメン、餃子、焼飯とメニューはシンプルだが、『Shin Shin』のメニューを眺めるとラーメンの他にちゃんぽん、焼きラーメン、串焼き、炒め物、おつまみなどが居酒屋並みに揃う。昼は一人でラーメンをサッと食べ、夜は友人と酒を酌み交わす。客は思い思いの楽しみ方が出来るのだ。

 『Shin Shin』は福岡ならではの「ラーメン屋台」のスタイルを踏襲している。いわゆるラーメン店はラーメンだけを食べて帰る客がほとんどだが、屋台ではお酒を飲んで一品料理をつまみ、締めにラーメンを食べるのがお約束。ラーメン店では仕込みや作業が煩雑になるため、ラーメン以外のメニューは絞りがちだが、屋台で長年腕を奮って来た中牟田さんにとって、このスタイルは当たり前のことなのだ。

 「ラーメンを作るだけじゃダメなんです。焼き物や炒め物も出来なきゃウチでは働けません。他のラーメン店から来た従業員は皆びっくりしますよ。なんでラーメン屋なのに、こんなに色々やらなければならないのかって。でも僕の中では屋台時代からこれが当たり前なんです」(中牟田さん)

理由2:豚骨に「鶏ガラ」も加えた濃厚なスープ

『Shin Shin』の二枚看板はラーメンとちゃんぽん。それぞれに根強いファンがいる。
『Shin Shin』の二枚看板はラーメンとちゃんぽん。それぞれに根強いファンがいる。

 『Shin Shin』と他のラーメン店との違いはメニューの多さだけではない。博多ラーメンは言うまでもなく豚骨ラーメン。だからスープは豚骨で取る。しかし『Shin Shin』では、スープに豚骨だけではなく鶏ガラも使っているのだ。それによって他の博多ラーメン店とは違う味わいを出すことが出来る。

 豚骨の主たる旨味成分が「イノシン酸」なのに対して、鶏ガラの主たる旨味成分は「グルタミン酸」。異なる旨味が合わせられることで旨味の相乗効果が働き、豚骨だけでは表現出来ない深い味わいが生み出せるだけでなく、この店ならではの理由も存在する。

 「中華の時に学んだスープがヒントになっているんですが、鶏ガラ入れた方がちゃんぽんが美味しくなるんですよ。ラーメンだけならば豚骨一本でも良いのですが、ちゃんぽんもウチでは大事なメニューなので、ちゃんぽんにも合うスープになるように鶏ガラも入れています。常連さんの中にはちゃんぽんしか食べない方もたくさんいらっしゃいますよ」(中牟田さん)

理由3:自分達の都合よりもお客様の要望が最優先

『Shin Shin』店主の中牟田信一さん。味はもちろん接客を何より大事にしていると語る。
『Shin Shin』店主の中牟田信一さん。味はもちろん接客を何より大事にしていると語る。

 中牟田さんの基本は常に屋台にある。屋台では客と店主が会話したり、客同士が仲良くなったりと、コミュニケーションの場でもある。無言でラーメンを食べて帰るような雰囲気ではなく、屋台の温もりを感じられるような接客が多くのリピーターを生んでいる。そして何よりもお客さん第一主義を貫いているのも人気の秘密だろう。

 「自分たちの都合やこだわりよりも、お客様が求めるものをお出しするのがこだわりです。だからウチでは売り切れも絶対ダメです。材料がなくなったのなら、急いで買いに行けばいいだけのこと。目の前にいるお客様のために、そのお客様が求めているものをお出しするのがShinShin。そればかりはどうしても譲れません」(中牟田さん)

 福岡のラーメン文化は戦後の屋台から始まった。飲んだ締めに食べるような存在だったラーメンは、いつしか立派な食事になった。中牟田さんの思い描くイメージは、屋台で締めに食べるような博多ラーメンの原風景そのものだ。

 「博多ラーメンって二軒目とか三軒目に食べるものだと思っているんですよ。食事をしてお酒を飲んだ後に『ラーメンでも食うか』と食べるような。昼に食べる時も休憩中にササッと食べられる。そういうラーメンが博多ラーメンだと思いますし、ウチのラーメンらしいのかなと思います」(中牟田さん)

※写真は筆者の撮影によるものです。

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